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TASさんは異世界にて自由に生きたいようです。  作者: 粗茶漬け
TASさんが流浪の旅を始めるようです
27/53

TASさん、馬車に揺られて。

前回でTASさんが言っていた質問責めの回は、後々やります


時間軸的な説明をすると、この回の少し前に、質問責めはもう終わっています


あと、PV数が10000を超えました

感謝(´・ω・`)感謝です

 がったん、がた、がたん、と、揺れる馬車の客席に座っているのは、私と、被害者A、B、D。


「うぅ……。寒い、ですねぇ…」


 と、綺麗なドレスを身に纏ったお姫様が、口を零す。


 うっ、と、少し情けない表情になる、青年。高価そうな鎧を身に着けているが、あまり似合っていない。鎧が可哀想だ。


 はぁ、と、ため息を吐き、私は呟いた。


「らから、いったんれすよ」


 と。


 ううっ、と、青年はさらに情けない表情を、顔に浮かべる。


 それを無言で眺める、ガタイの良い、壮年の男性。こちらも青年と同じく、高そうな鎧を身に着けているが、青年とは違い、まさに、騎士といった佇まいである。


 何故、青年はこんなにも冷たい目で、見つめられているのか。


 ……事の発端、それは———馬車の風除け用の、一枚の布だった。


 私は近くの街まで一緒に同行する事を、それまでの護衛を務める、という条件で許可して貰えた。


 だが、いざ、馬車を出そう、となった時、被害者A(青年)が、口を挟んできた。


 ———風除け用の布。馬車の周り、そして、天井を合わせ、合計五つの布が張ってある。


 その内の一面。


 そこには、私が残酷なやり方で殺した、盗賊二人の血やら、脳やら、脳漿やらが、大量にこびりついていた。


「あんな汚い物がこびりついた馬車に、王族である姫様を乗せることは出来ない!」


 と、被害者A(青年)、改め、カイルは言った。


 ……汚れてしまったのは、仕方ないだろう?あの時はああしないと、気が済まなかったのだ。とりあえず、”命よりは安いだろう”、と、言い返したのだが、カイルは全く話を聞く様子が無く、あくまで自分の意見を突き通す姿勢だった。


 こんな下らないことで、時間を無駄にしたくない、と、私はそう思い、仕方なく、汚れてしまった面の分だけ、風除け用の布を破り捨てる事で、馬車を出す合意を得た。


 ……正直、そんな事言っている場合では無いと、私は思った。日はすでに傾き始めている。


 このままでは、あと一時間も経たないうちに日が暮れるだろう。


 私はこの身、この肌で実感したから、分かる。この辺りの夜は寒い。体裁に拘り、風に吹きさらされる方より、自分達の体力の温存を考えるべきだ。


 被害者B(お姫様)、改め、ペルシカさんも、私の意見に賛成派だったのだが、”なりません!なりません、姫様!”と、非常にしつこく、カイル氏、自分の意見を主張してくる。言い争う事は時間の無駄にしかならないと判断し、私は渋々その意見に合意した。一発殴ってやろうか、とも思ったが、我慢した。

 で、案の定。

 現在ベルシカさんは、馬車の積荷にあった毛布(高級そう)を身に(くる)んで、ぷるぷる、と、震えている。


「お前はある程度剣術ができる。が、ただ、剣を振れるだけだ。経験が足りなさ過ぎる」


 と、被害者D(壮年の男)、改め、バイロウさんは、そう言った。


 私が暴れ始めた時には、すでに倒れていた人だ。


 見た所、かなり鍛えているだろうに、何であんな盗賊にやられたのか、と、気になって聞いて見たのだが、どうやら、彼は、盗賊に隙を突かれてしまったカイルを庇ったらしい。咄嗟の事で、防御しきれず、身体を盾にしたため、幸い致命傷では無かったが、深い怪我を負ってしまったというのだ。本当なら、あの程度は雑魚にしか過ぎないのだそう。


 ……カイル、ただの足手纏いである。


 こんな情けない人に"さん"を付けるのはアレなので、私は彼の事を、心の中で呼び捨てにしている。まぁ、喋るときは、流石に”さん”を付けるが。


 ああ、そういえば。


 怪我人に“回復魔法”を掛ける事を忘れていた。


 私はバイロウさんに、怪我を見せるように言う。


「何故だ?」


「かいふくまほーをかけます」


「カイフク、魔法?何だそれは?”傷を見せろ”と言う事は……”聖法”の類いか?」


 “聖法”については知らないが、とりあえず、”回復魔法”が傷を治す魔法である事を教える。


「うん?お前は”神官”なのか?にしては、杖などは持っていないようだが……。まぁ、いい。傷を治せるのなら、是非頼みたい」


 そういって、バイロウさんは、身に着けた鎧を外し、どすん、と、床に置く。


 そして、内側に着ているインナーの様な物を脱ぐ。


「わぁお」


 鍛え抜かれた肉体が、そこに表れる。


 かなりの数の傷跡が付いている。相当な数の戦闘を潜り抜けてきた事が目に取れる。


 まさに、猛者の肉体だ。


 そして、その肉体に巻かれた包帯を、バイロウさんは、するする、と、外す。少し痛そうな顔をした。やはり、言っていた通り、相当深い傷なのだろう。


 そして、包帯が外れたそこには、一筋の太い線。


 右の肩口から、左の脇腹まで、突き抜けるように、傷口が走っていた。


「うわぁ、これはいたそうれすね…」


「はっはっ。こんな物、我が肉体の前では屁でもないわ……、と、言いたいところだが。ああ、実の所、かなり痛む。まともに戦えはしないほどには、な」


 包帯を外したからだろう、少しずつ、血が滲んできている。


 私はバイロウさんに近寄って、傷口の前に、掌を当てる。


 ぐぅ、と、バイロウさんが唸る。だが、これくらいは、我慢してもらおう。


 ”回復魔法”を他人の身体に実行するのは、今までやった事がない。出来るだけ慎重にやったほうがいいだろうな。傷口のデータとかも、詳しく読み込もう。


 そう考え、私は”思考加速”を実行する。


 ……。


 バイロウさんの身体データを測定中。


 測定終了。


 傷口のデータ、収集中。


 測定終了。


 傷口のデータ、読み込み。


 読み込み終了。


 ”回復魔法”、実行。


 成功(サクセス)


「おお……。傷が、治って行く……。だが、痛くない。何だ、これは……?」


「かいふくまほう、れす」


「これが、か……おお、傷が完全に治った。身体も自由に動くぞ。気分も何だか爽快だ。はっはっは……」


 と、そこまで言って、バイロウさんは口を一度止め、


「お前……大丈夫か?」


 と、聞いてきた。


 うん?私に特に問題は……あぁ、少し鼻血が垂れているな。他人の身体の読み込みというのは、中々なデータを処理しないといけなかったからな……。まぁ、軽い頭痛がしてきたが、軽度なので、問題はあまりない。


 大丈夫です、と、伝え、私は布の服の袖で、鼻血を拭いた。


「そうか。傷を治して貰った事を、感謝する。借り一つだ」


 と、バイロウさんは、そう言った。


 そして、その横を見てみると。


 ペルシカさんが、ぷるぷると、身体を震わせていた。寒さとは、別の意味で。


「いまの、なんですか……。あんな”聖法”、見た事がありませんよ……?こんなに直ぐに傷が治って、痛みも無いなんて……。なのに、戦闘もあり得ないほどに強くて……。……。」


 ……私について、考察しているようだ。そこまで気にすることでもなかった。


 ペルシカさんの嘘が判別できる"技能(スキル)も、何故か、私には効果を成していなかったし、私について、バレる事は無いだろう。……というか、正直、別に私は、素性が割れようが、割れなかろうが、どっちでもいいのだが。


 がた、がたん、がた、がた、と、揺れる馬車。


 街までは、まだ時間が掛かりそうだ。

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