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TASさんは異世界にて自由に生きたいようです。  作者: 粗茶漬け
TASさんが流浪の旅を始めるようです
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TASさん、土下座する。

「も、もう、やめて下さい。あなたは何も悪い事をしていません、それどころか、私達はあなたに助けて頂いた側なのです。何を謝る必要があるのですか……」


 すみませんでした、すみませんでした、と、何度も何度も、叫ぶように謝罪をしながら、頭を何度も地面に打ち付け、日本流の謝罪(DOGEZA)を実行する私を止めたのは、被害者B(姫様と呼ばれていた人)さんだった。


 私は、頭を打ち続けたせいで少しひび割れた地面から、ゆっくりと顔を上げ、つま先で地面を蹴って、その勢いで飛び上がり、後ろに一回、くるん、と、回転し、すたり、と、地面に着地した。


 それを見て、被害者さん達は、ぎょっ、とした顔をする。


 普通に立つよりこっちの方が楽で速いので、こう起き上がっただけなのだが、少し非常識な行動をしてしまった。まぁ、昨日の私程ではないが。


 そして、私は思い出した。そういえば、私は謝罪の言葉を叫んで、地面に頭を打ち付けまくっていただけで、この人達に対して昨日の私が置かれていた状況の説明をしていないではないか。


 昨日、自分達に襲い掛かってきた盗賊(仮)を非常に猟奇的なやり方で血祭りに上げた後、異常なまでの執念で食事を強請(ねだ)り、食事(それ)を獣の様に食い漁った、謎の狂人。


 それが、被害者さん達の私に対する認識だ。


 そんな人物がいきなり、”すみませんでした”と何度も叫びながら地面に頭をひたすら打ち付け続ける……


 どんなホラーだ。恐怖しかない。


 ちびってしまってもおかしくない。


 ……よく見てみると、被害者たちの表情にはどこか、恐怖の感情が現れている。……私についての誤解を解くには、かなり時間が掛かりそうだ。


 と、思っていたのだが、被害者B(お姫様)さんは本気で私の事を心配しているだけの様だ。表情に恐怖の色が見えない。


 この人なら、ある程度話は通用するか。


 そう思い、私は被害者B(お姫様)さんに、今に至るまでの私の大冒険を、語った……。


 ———まぁ、殆ど嘘の作り話だが。



 ◆◆◆◆◆



「成る程、あなたの名前はタスさんと言うのですね」


「うん」


「あなたは此処から遠く離れた場所の村で育ったけれど、村の人達はみんな疫病にかかって、死んでしまった」


「……うん」


「生まれつき病気に強くて、疫病から生き残る事が出来たあなたは、世界を見て回る、という夢を叶える為、放浪の旅をしている、と」


「そ、そうそう」


「いつもはモンスターの肉を狩って食べていたけれど、一週間もの間、モンスターに遭う事が無くて、お腹を空かせていた」


「そう、れす」


「お腹を空かせ過ぎておかしくなっていたタスさんは、偶然、私達を見つけて、食べ物を分けてもらおうとした」


「はい」


「けれど、私達は悪者に襲われていた。もうすぐご飯が食べられると思っていたのに、悪者が私達を襲っているせいで、ご飯が食べられない。その事に怒ったタスさんは、悪者を叩きのめした」


「……そうれす」


「だけど、怒りが抜けきれなくて、私達に強く当たってしまった。それを謝罪したくて、地面に頭を打ち付けていた……」


「うん」


 被害者B(お姫様)さんはそこまで言うと、俯いて、ぷるぷる、と、身体を震わせだした。


何か、おかしい事を言ってしまっただろうか。まさか、この話が嘘である事がバレてしまったのか?


 被害者B(お姫様)さんが、顔を上げる。


 ……その顔は、涙でぐしゃぐしゃになっていた。


 ……。


 予想外の反応だった。


「……ぅ、うっ、いばばで、づらがっだのでずね……。じりあいゃ、おとぅざんや、おがぁざんも、みんなしんじゃっで……ぞれでも、がんばっでいぎで、じぶんのゆべを、がなえようとしで……うぅ、らいじょぉぶよ、もぉ、らいじょうぶですがら……」


 被害者B(お姫様)さんは、こちらに、ふらふら、と、歩み寄って、私の身体を抱き締める。


 デジャヴ。ラシーヌさんと一緒に泣きじゃくったあの日を、思い出した。


 が、今の私は冷静だ。感情が静まっている時に、これをやられるのは、なかなか、キツイ。


 私は背が低い。なので、抱き締められるとなると、頭が抱き締める側の胸の辺りに行く。目の前のこの少女は、恐らく十五歳ほどの年齢さろう。が、その年にしては、かなり大きめな乳房を持っている。


 もし私が、一般男性、または、女にして、男性的な心を持っているとしたならば、この状況は悪くない、と、言えるものなのだろうが、私は女である。身も、心も。いや、私には性への関心が無い。心は無性、と言った方が正しいか。


 つまり。何の得でも無い。ただひたすらに、苦しい。窒息してしまいそうだ。死ぬぅ。


 さらに、被害者B(お姫様)さんの鼻から溢れ出る鼻水が、私の頭頂部にドバドバと垂れている。


 ……これは、男であろうと、興奮する者はいないだろう。いや、もしかすると、いるかもしれないが、それは一部の例外(変態)だけだ。ましてや、私の心は健全な無性である。つまり、ただ、他人の鼻水を頭頂に垂らされている、としか、この状況を認識できない。これは、かなり……キツイものがある。


 そんな下らない事を考えているうちに、被害者B(お姫様)は、被害者A(青年)に、私から引き剥がされる。胸からの解放。ぷはぁ。死ぬかと思った。


「何をやっているのですか、姫様!こんな得体の知れない危険人物の言う事を、確証もなく信じるなど!下手すれば殺されてもおかしくない!」


 ド正論である。全くその通りだ。反論のしようがない。私は被害者さん達が苦戦して、負けそうになっていた盗賊(仮)達を、この身一つで、簡単に、グロ画像にして見せたのだ。彼ら、彼女らを、助けた事は事実だが、しかし、それでも、彼ら、彼女らから見て、私は危険人物以外の何者でもない。


「私には分かります!この子は嘘なんてついていません!私の技能(スキル)にも、反応がありませんでした!この子は本当の事しか言ってないんです!」


 え。私、嘘、つきまくったのだが。


「……成る程……姫は、”天秤”をお使いになられていたのですか……」


 そこで、被害者D(壮年の騎士)が口を開く。


「いやはや、流石姫様です。その者が嘘をつけば、即座に”喰らった”、と……。……やはり、変な所でしっかりしておられるお方だ」


 私はその言葉を聞き、足を蹴り出し、後ろに下がる。


 ……この少女が、私に何かをしようとしていた?


「”変な所で”って何ですか!失敬ですよ!あ、えっと、タス、さん!そんなに警戒しないで下さい!話が”本当”なのか、”嘘”なのか、測っただけですから!別に、嘘をついていても、危険な事はありませんでしたから……」


 私は少女の顔の筋肉の微細な動きを掌握。声色のデータの読み取りや、目の動き、発汗なども読み取り、心理データを抽出。


 人間というのは、どうしても、嘘をついたりする時、何かしらのサインを出してしまう。訓練した人ならば、それらを読み取って、その人が言っている事が、嘘か本当か、ある程度見分ける事が出来る。


 私が今やっているのは、それの精密版だ。


 結果。嘘は言っていなかった。本当の事のようだ。


 人としての精神が壊れてしまっていたり、言った事を、嘘だと思っていない場合には、この技術は通用しないのだが、狂っているのか、いないのかも、この技術で判別は出来る。この少女の精神は、正常だ。


 私は、ふぅ、と、息をつき、その場に座り込んだ。


 ———私は、やはり、どこか抜けている所がある。


 何故かは解らないが、嘘を判別する”技能(スキル)”は、私には効かなかった。幸運にも。


 だが。もし、私の話が嘘だ、と、判別されていたら。


 下手すれば、殺されていたかもしれない。


 警戒は、しっかりしないと。


 私は、被害者さん達から一定以上の距離を取りながら、彼、彼女らに、話しかける。


 私はまだ完全には状況を把握していない。


 この人達には、色々聞きたい事がある。


 疑問は出来るだけ解消したい。


 私は、被害者さん達に質問責めを開始した。


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