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TASさんは異世界にて自由に生きたいようです。  作者: 粗茶漬け
TASさんが流浪の旅を始めるようです
24/53

TASさん、盗賊を狩る。

 (くるぶし)の辺りほどの、背の低い草が、見渡す限り一面に広がっている。


 空に目を向ける。眩しい光が目に入った。私は手で目の辺りに影を作り、少しぼやけた視界のピントを合わせる。


 ハッキリした視界に映る、雲一つ無い、青空。

 五日ぶりの太陽。五日ぶりの大空。


 五日前と違うのは、地に足をつけているという事。


 ああ、ようやく旅の大一歩を、踏み終えたのだと、そんな気がした。


 しかし。ここからは未知の場所。

 巨木の頂上から見える場所の、その先。


 警戒を解くのは早計だ。気を引き締めないと。


 下手すれば、森にいた蛇以上の化け物が出てくるかもしれない。見通しは良いが、この草原が、あの森以上に危険な人外魔境のような地帯である、という可能性もあるのだから。


 私は、周りを警戒しながら、草原を進む。


 昼は歩みを止める事なく進み、日が暮れた直後に、地面に穴を掘って寝た。



 ◆◆◆◆◆


 "探知機もどき(ソナー)"に反応。


 六百七十四メートル先に、複数の影。


 形は六つ。


 大きな影が一つ。小さな人形の影が六つ。そのうち二つの影は、地面に倒れている。


 立っている四つの影。そのうち三つが何かを持っている。流石に距離がある。反射してくる音波にノイズが掛かっていて、よく分からない。


 が。想像はつく。恐らく、戦っているのだろう。


 どうしようか。逃げた方がいいか?


 …いや、あの人形の影が、人間だったとしたら。


 もしかすると、街などの場所を知っているかもしれない。もしかすると、食料とか、分けてくれるかも。


 そう。私は今、お腹が空いているのだ。狂気的なモノではないが、物凄くお腹が空いている。


 それは何故か。この草原、何も居ないのだ。探知機もどき(エコー)に引っかかる生物の影が、一つもない。


 このままでは、またあの狂気に私を蝕まれてしまう可能性がある。早く腹を満たさねば。


 そうと決まれば善は急げ、だ。

 私は思い切り地面を踏み、影に向かって、走り始める。


 ーーーのちに気付いたのだが、私は恐らく、この時にはもう、狂気に蝕まれ始めていた。


 私は、腹を満たすという事ばかり、考えていたのだったーーー


 標的まで、残り四百メートル。


 何やら雑音が入り始める。


 次第に雑音は大きくなる。どうやら、これは人の会話のようだ。


 三百メートル近付いた辺りで、少しづつ鮮明に会話が聞こえるようになる。


「…へ、お前ら…う…終いなんだよォ」


 標的まで、残り二百メートル。会話が鮮明に聞こえるようになる。


 大きな影が何なのか、見えてきた。それは、馬車だった。


「さっさと、そこの女を寄越しなァ!そーすりゃ、あんたの命だけは助けてやるぜェ?」


 …どうやら、あの馬車の乗員が、盗賊に襲われている、という、構図のようだ。


 まぁ、見るからに、悪役は盗賊だな。よし。盗賊をぶっ殺そう。そして、馬車の乗員から食事をせしめるのだ。あんな大きな馬車なんだ、食料だって積み込んでいるに違いない。


 距離、百メートル。盗賊に折られたらしい剣をもった人が、驚いた顔をする。


 それを不審に思ったらしい盗賊(小柄)が、こちらを向いた。


 そしてこう叫ぶ。


「親分!あそこ!あそこを見てくだせぇ!」


「うぉぉっ!?何だ、ケビン!?モンスターか!?」


「いや、どうやら人のようでやんす!ボロボロの灰色マントを着てるでやんす!あれは…子供?!」


 チッ。気付かれた。何をやっているんだ、被害者A。


 まぁいい。私は兎に角、奴らをぶっ殺して、馬車の中の食糧を被害者AとBから貰うのだ。


 私は腰に付けたナイフを抜き取り、投げる。


 ひゅおん、と、風切り音を立て、真っ直ぐに飛んでいくナイフ。


 その先には。盗賊(小柄)の頭。


 ばちょん!と、音を立て、盗賊(小柄)の頭が破裂する。盗賊(小柄)は真正面から飛んで来るナイフだと言うのに、反応すらしなかった。間抜けだったのだろうか。まあいい。


 もう一つの標的(盗賊(大柄))まで、残り二十五メートル、十メートル、五メートル。


 私は勢いに乗ったまま、盗賊の目の前に飛び出し、胸に飛び蹴りを喰らわせる。


 盗賊(大柄)は吹っ飛び、馬車に激突。


「ぐぁ、かひゅ、げ、はっ」


 口からは血。胸には、飛び出していた馬車の柱が生えていた。


 飛び蹴りで勢いを殺した私は、また、足を思い切り踏み込み、盗賊(大柄)に向かって突っ込む。


 そして、二本の指を、左右の眼球に一本づつ、ぶち込む。


「ぇあ…あ?、あ…ぇ?…あ…」


 弾ける眼球。私は突き刺さった二本の指を動かし、盗賊(大柄)の脳をかき混ぜる。


「ぁ!ぁぇぁ…ぁァ…」


 盗賊(大柄)は何度か身体を痙攣させた後、心臓を止めた。


 私は二本の指を、盗賊(大柄)だったモノから、指を引き抜く。


 下を向いた、盗賊(大柄)の死体の頭。二つの眼窩からは、かき混ぜられた前頭葉と脳漿が、べしゃべしゃ、と、音を立てて零れ落ちた。


 私は腕を思い切り振って、指先についた汚物(盗賊の脳)を、馬車の壁に飛ばす。ああ。爪の中に少し入ってる。汚い。手を洗いたい。


 私は被害者AとBの方を向く。


 被害者Aは折れた剣を持ち、高価そうな純白の装備に身を包んだ、若い男の騎士(?)。


 被害者Bは綺麗なドレスに身を包んだ、美人さんな女性。


 被害者CとDは、大きな怪我を負って蹲っている。死んではいないようだ。別にどうでもいいが。


「どーも、れす」


 私は頭をポリポリと書きながら腰を曲げて挨拶をする。


 被害者Aは、私のことを恐れているようで、


「……ば、バケモノ……」


 と言って、私に折れた剣を向ける。


 親近感が湧くように、謙った姿勢をしてみたのだが…意味が無かったか。


 そう思っていると、被害者Bが騎士の前に、手を出して、


「剣を下げて」


 と、一言。


「しかし!」


「いいから」


「ぐっ……」


 騎士は、折れた剣を、腰につけた鞘に戻す。


「この度は、助けて頂いて有難うございます。何かお礼として、私たちに出来る事があれば「たべものをくらさい」


「貴様!姫様のお言葉を遮るとは何事だ!」


 うるさいな。


「いいからはやく、たべものをくらさい」


 早く。食べ物を。早く。


「ひっ!」


 被害者Aが恐怖に染まった表情を浮かべる。


 何かあったのだろうか。どうでもいいから食べ物を。早く。


「分かりました。すぐに食事を作りますので、どうか、怒りをお収めください」


 …私は怒ってなんかいないが、まあ、食事が出来るならそれでいいか。


 私はこうして、安定した食糧調達経路の入手に成功した。

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