TASさん、気絶する。
巨大蛇に遭遇してから三時間五十七分後。
私はようやくヤツから逃げ果せた。
私は最初、簡単に逃げ切れるだろうと思っていた。障害物の多い森林では、巨体なヤツより、小回りの利く私の方が、素早く移動できると踏んでいた。
だが。あんな巨体でも、この森の住人なのだ。解決策を持っているかもしれない、と思い、油断せず、全力で逃げ始める。
まぁ、やはり、というか。あの蛇は、私の予想にしっかり答えてくれた。答えてくれなくていいのに。
私が二十八歩目の逃げ足を踏み出そうとした時。背後から、べちゃぁん!、と、いう、爆音の様な破裂音が聞こえた。
私は驚いて背後を振り返る。
そこには。無数の蛇がいた。
なんと、巨大な蛇は”分裂”したらしいのだ。それも、数え切れない程の数に。
いや、分裂した瞬間を直接目で見たわけではないが、私の脳内に残っている音の反射や強弱の記録読み取り、探知機の真似事をしてみたところ。
巨大な蛇が木っ端微塵に爆発したかと思いきや、飛び散った肉片一つ一つが、うねうね、と、変形し、蛇の形を象る、という、モザイクが必須なグロ映像が私の脳内に写し出された。
映像に色は付いておらず、所々ノイズが掛かっているのだが、音の反響を正確に抽出するため、肉片が木にぶつかる音や、巨大蛇の肉片が小さな蛇に変わる際に発せられた形容し難い、それでいて高レベルな不快感を齎す音は、鮮明に私の脳内に響いた。吐きそうになった。
それは兎も角、映像を解析するに、どうやらあの巨大蛇が小さな蛇(と言っても普通の蛇のサイズくらいはある)に分裂した、ということで間違いなさそうだった。
そんなこんなで、私と蛇(無数)の鬼ごっこが展開された、と言うワケだ。四時間近くぶっ通しで走り続けた私の脚は、もうボロボロである。
それはもう、あちこちの筋肉が断裂している。
"回復魔法"による治癒が追いついていないのだ。”痛覚遮断”をしていなければ、私はあまりの痛みに蹲て全く動けなくなってしまうだろう。というか、多分気絶している。
暫く休みたい。今だって、”回復魔法”で主要な筋肉だけを借り止めして、”身体強化”と”肉体操作”の重ね掛けで、それを無理やり動かしているだけだ。それも、もう持たない。
私は闇魔法で簡素なスコップを作り、木の根元の近くの柔らかそうな土を探し、そこに私一人が入れるくらいの穴を掘る。穴を掘ると言うのは、中々の重労働だったりする。
それも、人一人入るくらいのの穴を作るとなると、かなりキツイ。
だが私は、疲れに耐えられなくなる前に、穴を完成させる事が出来た。私は穴の中に入り、適当に落ちていた枝を交互に重ね、その上に、穴から身を乗り出して毟り取った、草を被せ、カモフラージュ用の蓋を作り、穴の中で丸まる様な姿勢を取ってから、全身の力を抜いた。
“痛覚遮断”を解いたせいで、走る激痛。その痛みには、私は成すすべもない。
まぁ、”回復魔法”を掛け続ける定型を起動しているので、目覚めた頃には筋肉の断裂も少しは良くなっているだろう。
私はそこまで考えた後、ころっ、と、何かが切れる様に意識を途絶えさせた。
暗転。
文章量少なめですが、キリがいいと思いましたので投稿しました。




