TASさん、旅を始める。
グロ注意。グロ場面は飛ばしても構いませんよ。
あと、創造時の説明が投げやり過ぎたかなと思いましたので、修正しておきました(追記しました)。
私は先程、巨木の外に出た。
視界に入るのは、空。太陽が、さんさん、と、私に向かって光を照りつけていた。
ああ、いい天気だな。雲一つない、晴天だ。
まるで世界が私の旅立ちを祝っているようではないかーーー
なんて、現実逃避をしてみたが、何を妄想しようが、私が今置かれているこの状況は、一つも変わらない。
感のいい人ならお気付きだろう。
巨木の外は、深い森林が広大に広がっている。
巨木には遠く及ばないものの、それでも、物凄い高さの木々が、隙間なく立ち並んでいたということは、巨木の頂上で確認している。
だが。
私の視界には曇り一つない空が、余すところなく、写っている。
耳には何やら、ごごごご、といった風な爆音が響いている。この音には、聞き覚えがあった。風切り音である。
手や足、後頭部に受ける感覚。これも知っている感覚だ。
以上の事を纏めよう。
結論。
私は今、落ちているーーー
◆◆◆◆◆
二度目の自由落下。
その始まりは、ラシーヌ宅の出口である扉のドアノブを捻った時から始まった。
ドアノブを捻った私は、真っ白い光に包まれた。
そのまま私は意識を一度途絶えさせーーー後は、冒頭に述べた通りだ。
そして、今。
がさがさ、と、森林の木々の頑丈な枝が、私の身体にぶつかる。
私が身に纏ったボロボロの布切れを引き裂き、枝の荒い凹凸が鑢のように、私の全身の皮膚を捥ぎ取る。
序でに、と言わんばかりに、指やら腕やら足やらを、引き千切って、持って行く。
私は地面に衝突し、ばぁん!、と地面に大きな音を立てた後、破片が木に飛び散ってぶつかり、ぐちゃ、ぐちゃり、といった音を立てる。
最後は、他の四肢同様に吹っ飛んだ頭が、尖った木の枝に、右の眼窩にグサリ。眼球はばらばらに飛び散る。
奇しくも、私が殺した狼と似た様な死に方だ。
こうして、私は一年にも、半年にも満たない一生を、悲惨な死に方で終えるのだった。
ごめんなさい、ラシーヌさん。
もう二度と、貴女と逢える事は無さそうです…
ごめんなさい。ごめんなさい…
木の枝に突き刺さった私の頭部。
残った左眼からは、一筋の涙が流れていたーーー
◆◆◆◆◆
といった、B級映画でよくありそうな(いや、ない)映像が、私の頭の中で構築された。
監督、私。
製作者、私。
提供、私。
AND YOU。って、最後のやつは違うな。
というか、何をどうでもいいことを妄想しているんだ、私。おまけに妙にリアルに脳内処理したせいで、脳天が木の枝に貫かれた感覚が数パーセント現実の私に再現されてしまった。脳内処理後、数秒間、視界がぐらぐらして、吐き気がした。まぁ、瞬きをする間に収まったので、それはよしとする。
…しかし、これから何もせず、このまま自由落下を続ければ、先程の脳内での映像のように、私は地面に赤いシミを作り、人生を終える事となる。
何もしなければ、の話だが。
私は進歩出来るのだ。してみせるッ。というか、してみせたッ。
ちゃちゃっとこの絶体絶命にも見えるような状況をなんとかしてしまおうではないか。
さて、解決編です。…いや、これも使い方違うなぁ。
兎に角、私は行動を開始した。
使うのは【闇属性魔法】と、ほんの少しの発想のみ。
所要時間?五秒で充分だ。というか、三秒も要らない。
スタート。
まず、私は掌と背中の周りに闇魔法を使う。
そして、数瞬の構築期間を終えた私の腰部分にはベルトが巻かれ、ベルトには紐が繋がっている。
次に、先程ベルトとともに構築したその紐を私は、ぐしゃり、と掴み、魔力を伝達、創造可能範囲を拡大し、その紐を繋げるように、何枚かの布状のソレを構築する。
一言で言うと、【パラシュート】を作ったという、それだけの非常に単純な話だった。
紐と布状のソレを癒着させ、完成。
風になびいて作れないかとも思ったが、案外イケるものだ。風の予測処理を強めに行なったせいか、空中に何滴かの鼻血を流す羽目になったが。
がさがさがさ。ばさっ。
即興のパラシュートは、問題を起こす事なく、しっかりと開いた。
ハイ、落下問題解決。
ここまでの所要時間、2秒62。
こうして、私はふわふわと、眼下に広がる大森林に向かって、降下して行くのだった。
めでたしめでたし。
未完。
◆◆◆◆◆
その後、優雅な空の旅を存分に楽しんだ私は、丁度いい着陸場所を探し出した。
がさ、がさがさ、がさ。
パラシュートが木の枝に引っかかり、私のふわふわとした降下は止まる。地上まで二十八メートル。着陸というか、着木?
ここまで来れれば十分だ。私は闇魔法で何本か紐を作り、それらを捻ってから、両端を癒着させ、ロープを作る。その次に、フックを作る。ロープを通す穴もしっかり作る。二つを組み合わせて、フック付きロープの完成である。
私はロープを、枝に当たらない様に振り回す。カウボーイ?いや、ロープの先は、輪ではなく、フックだった。牛が死んでしまう。レンジャーの方が近いな。いや、どうでもいいのだが。
私は、ひゅんひゅん、と足の下で回していたフック付きロープのフックを、適当な枝に引っ掛け、ぐい、ぐい、と、引っ張り、枝の強度を確認する。
私は枝が十分に頑丈なものだと分かると、ロープをしっかり掴んでから、パラシュートを消す。
アー、アアー。
気分だけはターザンだ。
げしっ、と、足を、枝を引っ掛けた木の幹に、着地させる。
ふぅ。私は汗を拭った。
気温はそこまで暑くはなかったが、何故か汗が出たのだ。
その時。
ぽたり、と。
私の手の甲に、液体が掛かった。
雨が降ってきたのだろうか。そう思ったが。
違う。空は晴天だった。雲一つなかったのだ。雨なんて、降ってくる訳がない。辺りも湿気っていない。感覚で分かる。
なら、一体。
私は上を見上げーーー目を見開く。
…私の真上。五十八センチ先に。
———大きく口を開けた、巨大な蛇が、いた。




