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TASさんは異世界にて自由に生きたいようです。  作者: 粗茶漬け
TASさんが異世界召喚されたようです
18/53

TASさん、一時の別れを告げる。

いつも前書きが改稿の報告で凄くもっさりしていますので、今回から報告しない事にしますた(´・ω・`)

 狼との戦いの翌日の早朝。


 私は、ラシーヌ宅の出口の扉の前に立っていた。


 後ろを振り返り、ラシーヌさんの方を向く。


 ラシーヌさんは、どこか寂しそうな表情をしている。


「行ってしまうのね、タスさん…」


 ラシーヌさん。


 私は、この人が居なければ、きっと今頃死んでいただろう。


 どこかの人が中途半端に召喚を失敗させた所為で、私はこの巨木の頂上へと呼び出された。


 その時の状況も、ここに呼ばれた訳も、幸いに女神様の説明を受けられたお陰で知っていた。


 自分の経歴も、自分の正体も、召喚後、直ぐに思い出す事が出来た。


 だが。この人が居なければ、私は決定的な死を迎えていた。


 オークの追っ手からは、ステータスのAGI(すばやさ)の値がたまたま最初から高かったから、あそこまで逃げ続けられたが、ラシーヌさんの助けがなければ、私は疲労で足を止めてしまい、オークに殺されていただろう。


 …いや、もっと酷い事になっていたかもしれない。オークの住処に連れて行かれ、一生子を産み続けるだけのために生かされる、そんな奴隷の様な生活をさせられていたのかもしれない。まぁ、そんな生活は、死んでいる事と同義だと私は思う。


 私がそんな事を考えていると、想像そのままのシーンが頭の中に構築される。高解像度で、ほぼリアルに近い3D映像である。おまけに音声付きだった。私は直ぐに映像にモザイクを掛け、音声をピー音に切り替える。おぇ、吐き気がする。


 私は両手の平でほっぺを、ぺち、と軽く叩いて、脳内の思考をリセットした。


 …話が変わるが、先程のように、機械的な脳の処理速度が、私という人格を無視するかのように、勝手に働く事が偶にある。


 まるで、私が(ヒト)でないかのような、そんな感覚を感じる事がたまにあるのだ。


 機械的な意識に、人間的な意識(ワタシ)が引き摺られるような、感覚。


 もしかすると、私は多重人格なのかもしれない。旅に出たら、一度病院に行った方がいいな。この世界にそんな施設が有るのかは知らないが。


 話を戻す。


 …旅に———出る。


 そう。私は旅に出る。

 その行動は、命の恩人であるラシーヌさんに寂しさを与えてしまうだろう。だが、それでも、私は世界を見て回りたい。


 ラシーヌさんには幾ら感謝してもし切れない程に、恩を受けた。恩を返すのも忘れない。ラシーヌさんの身に何かあったなら、私は直ぐに巨木(この場所)へと戻って来るだろう。ラシーヌさんの盾になって死ぬのなら、私は喜んでそうするだろう。いや、流石に喜びはしないか。だが、嫌だとは全く思わない。


 それでも。それでも、私はーーー


「…やっぱりタスさんは、なんだか、不思議な子ね。あんまり表情を見せないから、感情の起伏が小さいのかなぁ、って、一緒に暮らし初めて最初の頃は、そう思ってた。でも、笑う時は笑うし、怒った時は、むすっとする。さっきも、何故か急に青褪めた顔をしたりしたし、ほら、今も…」


 私は気付けば、涙を流していた。


 それに釣られるかのように。

 先程まで我慢していたものが溢れ出るかの様に。

 ラシーヌさんもぼろぼろ、と、涙を流し始めた。


「私はね…タスさんがここに来てくれて、本当に良かった、と思ってるわぁ…ここ二百年、誰とも会って居なくて、…何だか、心が空っぽになっていくみたいで…それを、怖いって、そんな事すら、思えなくて…タスさんが、オークに追われてた時、私はあなたの事を、その時は知らなかったけど、それでも、とっても焦って…」


 ラシーヌさんは、ぐず、ぐず、と泣きながら、そんな事を語った。


 その姿は、どこか幼い子供の様で。普段のお姉さんなラシーヌさんからは、想像出来ないほどに、弱々しかった。


「うぅ、だ、からぁ。また、ここに来てくれる、よね…ぐずっ、だまには、帰って、きてくれる、よねぇ…わたしたぢ、ともだち、だよね…」


 私は、泣きながら、即答した。断言した。

 ただ一言、勿論です、と。


 そう答えると、ラシーヌさんは私に飛び掛かってきた。


 いつもなら避ける所を、私は、避けずに、ラシーヌさんに抱き着かれた。


 私は倒れ込んで、尻餅をついた。


 そのまま、ラシーヌさんは、私の胸の辺りで、泣き噦った。


 私は、ラシーヌさんの頭を、ぽんぽん、としながら、自分でも、涙を流し続けた。


 どれだけの時間泣いていたのか、思い出せない。

 ラシーヌさんは、童心に還ったように泣き続け。

 私は人生で初めて号泣した。

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