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TASさんは異世界にて自由に生きたいようです。  作者: 粗茶漬け
TASさんが異世界召喚されたようです
15/53

TASさん、眠くなる。

2017/2/24 改稿


理論が矛盾し、破綻しかけている箇所が数箇所ありましたので、追記を施して修正しました。

 ラシーヌさんの手を握ってから、暫くすると、何やら掌に違和感を感じた。

 じわじわと暖かい感覚。その感覚は、手から腕に伝わり、そこから胴体へ、というように、ゆっくりと、全身に広がって行く。


 ラシーヌさんを見ると、真剣な表情で私の掌をじぃっ、と見つめ、少し汗を流していた。集中力を私の掌に集中させているようだ。


 すると、


 その感覚が全身に馴染んだ頃、私の身体が何度か、淡く光る。

 それを確認するように見たラシーヌさんは、私の掌を放し、ふぅ、と、安心した様に息を()いた。


「ふぅ。成功よぉ、タスさん。どう感じているかは人によって違うらしいから、私には分からないけれど、これであなたはある程度、魔力という概念を見る事が出来るようになったわ」


 私の視界に、何やら靄のようなものが掛かり始めていた。

 この靄が魔力なのだろうか。非常に曖昧な、そこにある、という事くらいしか分からない、そんな存在だ。…見ていて少し苛々する。


 私は視界に見える”曖昧な靄”を如何にして”ハッキリした存在”として認識するか、考え始めた。感覚を研ぎ澄ませてみたり、体内でゆっくりと循環している魔力らしきそれの速度を上げれるだけ上げてみたり、眼球にそれを集中させたりした。


 他にも色々高速で脳内演算と実行を繰り返しているうちに、私は正解を踏んだ。視界に見える靄が、丸く光る球体やら、ぐにゃぐにゃとした形の波やら、色々なモノに収束し始める。よし。スッキリした…と、思っているうちに、何やら物凄い眠気が私を襲う。


「ラシーヌさん…なんらか…ねむいれす…」


「あらあらぁ。もう”魔力欠乏”しちゃった?んー。普通の魔力量だと、最初はこんなものなのかしら。じゃ、今日の訓練はこれくらいにしましょうかぁ。おぶってってあげるわぁ。うふふぅ」


 私は本日二回目のナニかの危機を感じながら、しかし、眠気に耐える事が出来ず、意識を閉ざしていった。


 暗転(フェードアウト)



 ◆◆◆◆◆



 私は、頭の中に響く小鳥の囀り(音量大)を聴いて、ばちり、と、眼が覚めた。

 私は即座に上体を起き上がらせる。何かあったのだろうか。焦って辺りを見回す。


 辺りには何も、音の発生源と思われる物は無い。と、そこまで考えた辺りで、私は思い出す。自分に目覚まし時計の機能を掛けていた事を。毎日規則正しく起きれるように、と、起きるべき時間になったらランダムで私の知っている音が脳内で大音量再生されるように設定していたのだ。


 何故そんな仕組みを作ったかって?演算能力向上の訓練の一環だ。

 自分に幻覚を見せたり、感覚を掌握しやすくするために、色々な自己掌握の定形(テンプレート)を作ってみて、その時にこの目覚まし時計のような何かが出来た。放置するのも勿体無いので使ってみようと思って、セットしたのだ。名付けて、”セルフ目覚まし時計”。別にコレが無くても私は普段、きっちりとした時間に起きられるのだが、これも感覚制御の訓練の一環だ。続けていけば、"痛覚遮断"や、"肉体制御"の効率を高める事が出来る。多分。


 定形(テンプレート)としていつ使うかを設定しておけば、"セルフ目覚まし時計"のように、意識が混濁していたりしても、脳内に行動パターンを刻んでおけるため、なかなか便利だ。私が普通に物忘れをする事は恐らく無いだろうが、しかし、物理的、又は精神的なショックで意識が混濁したり、記憶が飛ぶ事は、ある。今朝もそうだ。自分で"セルフ目覚まし時計"を設定(セット)した筈なのに、それを忘れていた。この程度の物忘れだったからいいが、もし、記憶の大半が混乱していたとしたら。そして、それが化け物等と戦闘している最中に起こったら。命が危ない。そんな時の危機回避にも応用出来る。


 私は自分の頭頂部をぺちり、と平手で叩く。すると、小鳥の囀り(爆音)は嘘のように消えてなくなった。頭を叩くという行動により、アラーム音が解除されるという設定だ。ただ、一回頭を押しただけでは、スヌーズモードに移行するだけで、五分後にまた幻聴が聞こえてしまう。私は頬を両手でぱちん、と叩いて、スヌーズモードを解除した。


 私は眠る前、何があったのか、記憶を探る。

 確か、魔法の訓練の最中に眠気が襲ってきて、眠ってしまったのだったか。”魔力欠乏”と、ラシーヌさんが言っていたが、推測するにMPが切れる事を指しているのだろう。自分のステータスを視れる訳じゃないので本当にそうなのか確証は取れないが。というか、目覚めた時点で恐らくMPは回復しているだろう。結局、ラシーヌさんに聞くしかなさそうだ。


 つまり、MP切れで私は倒れて、ラシーヌさんにおぶられてここまで来た、ということか。後でお礼を言っておかないと。


 私は、ダブルサイズのベッドから身体を下ろす。

 そういえば、ラシーヌさんはどこへ行ったのだろうか。周りを見渡すが、見当たらない。


 と、そんな事を考えていると、カラカラカラ、という音が、地面のすぐ上を浮遊している、枠組みと本体だけのドアの中から聞こえる。


 確か、あのドアはトイレだったはずだ。

 私の記憶は正しかったようで、中から水の流れる音が聞こえ、ドアが、がちゃり、と開かれる。


「あらぁ、タスさん!もう体調は大丈夫なのぉ?眠気とかしない?」


「もんらいないれす」


 体調は別に問題ないし、眠気は”セルフ目覚まし時計”で吹っ飛んだ。


「じゃ、朝ご飯作るわねぇ。ちょっと待っててねぇ」


 私ははい、と返事をした。


 ラシーヌさんは食事を摂らなくても、巨木から得られるエネルギーだけでも生きていけるのだそうだが、私がここに来てからは、私と一緒にご飯を食べている。


 ラシーヌさんの作る料理は美味しいので、私の密かな楽しみになっていたりする。昼食を食べ終わったら、私達はまた訓練に行く。しっかり食べて、英気を養わねば。

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