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TASさんは異世界にて自由に生きたいようです。  作者: 粗茶漬け
TASさんが異世界召喚されたようです
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TASさん、狩りを眺める。

 色々雑談ながら歩いているうちに、私とラシーヌさんは目的の”狩場”に到着した。


 この巨木の中は、”擬似神域”という空間になっており、あちこちに点在する”転移ゲート”なる物を使用すれば、すぐにでも”狩場”に行くことが出来るのだが、ラシーヌさんは、何かしら急ぎの用事がない限り、目的地へは歩いて行くらしい。健康志向なのだとか。


 で、狩場についてから2分16秒。

 視界に緑色の毛皮を身に纏った、狼が一匹。

 ただし、大きさは狼のそれではなかった。

 目算で高さ6メートル82センチ。

 私が前に遭ったオークなどとは比べ物にならない程の威圧感を、そいつは放っていた。


「んー。アレくらいが丁度いいかしらねぇ……。じゃあ、私が今からアレを倒すから、狩りのお手本として、しっかりと見ておくのよー……」


 ラシーヌさんは、腰に付けていた小さなポーチから、ナイフを取り出す。

 変わった特徴は何も無い、簡素なナイフ。少し長めだが、常識の範疇内。特殊な素材が使われているのかも知れないが、見たところ、ただの鉄製のナイフにしか見えない。


 それを逆手に持って彼女は前に進む。一歩、二歩、三歩目を踏み出した———その、0.29秒後。

 彼女は、狼の”眼”の前に到達していた。


 ……0.17秒後。狼の眼に、深々と、ナイフが突き刺さる。


 彼女はそのまま、ナイフを、腕ごと眼球に押し込む。


 狼は、一度()()()と震えた後、断末魔を上げる間も無く、()()()と倒れ、そのまま屍と化した。


「……んー。ちょっと張り切り過ぎちゃったわねぇ……ごめんなさいねー。今の無し!参考にならなかったでしょ?」


「あんなはやいうごき、まねれきるわけないれすよ……」


「え゛、み、見えたの?!今の動き?!えぇ?!」


「いや、みえましたれすけど……」


 正直、身体は全く反応させられなかった。

 ただ、見ている事しか出来なかった。それほどの速さ。

 ……この人、ステータス見る限り、魔法が本職だと思うのだが……?

 確かに、短剣術やら体術やらがLv.MAXにはなっていたが……STR(ちから)AGI(すばやさ)は他に比べると低めだったと思うのだが……それとも、あのステータスだと、これくらいは普通に出来るのだろうか。


「ああ……これがINT(かしこさ)の高さって訳ね……ナルホド、ナルホド。納得したわ。納得した事にするわ、ええ」


 ラシーヌさんは狼だったモノにナイフを突き立て、何かを探る様にしながら、何処か虚ろな目で遠くを見始めた。


 が、私は構う事なく、先程生じた疑問を彼女に投げかけた。


 ラシーヌさんはすぐに正気に戻り、私の方を向き、質問に答える。


「そのコトね。無属性魔法っていう統合技能(ユニティスキル)の中に、”身体強化”ってあったでしょ?あれってMATK(魔法攻撃力)が高ければ高いほど、効果が上がるらしいのよ。それを使えば、今みたいに物凄く素早く移動したりできて、なかなか使い勝手がいいのよぉ。……私のMATK(魔法攻撃力)って世界で五本の指に入るくらい高いのよぉ?普通、目で追える様なモノじゃないはずなのだけれどねぇ……」


 統合技能(ユニティスキル)とは、一定以上の数の類似したスキル、又は、条件内に入っているスキルが、一定以上のレベルになる事で、纏まった一つの技能(スキル)となった物の事を指すらしい。統合技能(ユニティスキル)内の技能(スキル)同士の連携が強化されたり、技能単体での能力も向上したりするので、出来るだけ習得を目指したい物なのだとか。


「そんなつよかったんれすか、らしーぬさん」


「ええ、とっても強いのよー?……まぁ、世界で五本の指に入る、なんて言っても、今もそうなのかは分からないわ。なにせ、六百年くらい前の話だから」


 神木の精霊ドライアドというのは長命種で、その中でも一二を争う寿命の長さだとラシーヌさんは言っていた。それにしても、この人の年は一体いくつなんだ?ステータスも、年齢だけは秘匿された。というか、さっきの発言で六百歳以上は確定してしまっているのだが、言ってしまって大丈夫だったのだろうか?失礼になるだろうし、聞きはしないが。


 そんな事を考えているうちに、ラシーヌさんが狼の屍から、掌に乗る程の大きさの宝石の様な物を取り出す。


「あー、あったわ。コレコレ。これが欲しかったのよぉ」


「なんれすか、それ」


「これは魔石って言ってねー。魔力を使った道具とかを動かす燃料として使うのよぉ。”魔道具”って言うのよぉ。私の家はいろんな場所で使ってるからねぇー。お料理とか作るのにも火が必要だし、家の中でお風呂に入ったりする時も、水と火が必要。私は固有技能(ユニークスキル)のせいで、風属性と無属性の魔法しか扱えないから、魔道具の燃料が切れるのは死活問題……って、あ!」


 ラシーヌさんが、何かに気付いたような顔をする。


「どうしたんれすか」


「タスさん!あなたが魔法を使えばいいのよ!そうすればいちいち魔石が切れるたびに取りに来なくてもいいじゃない!狩りってあんまり好きじゃないのよねぇー。毎回血塗れになって、ベタベタするし。でも、タスさんが魔法を覚えれば私は嫌な思いをしないで済むわ!……あ。タスさんはご飯食べないといけないんだったわね……結局狩りはしないといけないかぁ……」


 ベタベタになりたくないなら、弓を使って遠距離から攻撃したり、槍で中距離から突いて倒したりすれば良いんじゃないだろうか、と提案しようと思ったが、剥ぎ取りをすれば結局血が跳ねたりして変わらない事にすぐ気づいた。


 ううむ。なら。


「ちいさいどーぶつとかなら、どう?」


 さっきの狼のような巨躯を持つ動物に刃物を入れれば、血が溢れ出る様に流れたり、切る場所によっては血が吹き出たりするので、必然的に血塗れになってしまうが、小さい動物は、予め解体する前に血抜きをしておけば血が出る事はない。汚れるとしても、手の周辺だけで済む。


「んー、それだと魔石が取れないのよね……って、タスさんが魔法を使えれるようになれば、魔石なんて要らないんだった!やったわ!これでこれからはあんな気持ち悪い思いをしなくて済むのねぇ!よぉし、じゃあ、家に帰って早速魔法の特訓よぉ!お姉さん、気合い入れてビシバシ教えちゃうからねぇ!」


 そう言うと、ラシーヌさんは私をひょいっと背負い、家の方まで走り出す。


 ……この人、私の夕飯の事を忘れてないだろうか?

 まあ、いいや。

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