2.アンサー
前回の三秒あらすじ
同僚たちから沢山の荷物が送られてきました。
「お、おはようございます…」
セレナはビクビクして天八座の本部の執務室に足を踏み入れる。そこにはいつも通りの天八座がいた。
朝早い時間、いるのはチェーザレ、マリノ、ルーチェ、ペルットの四人のみだ。
アルルに夏季の長期休暇は無いらしい。そのため今日も大学に行っているのだろう。
ヴォルガーノとリーナは昼間過ぎにしか来ない。むしろ、午後になる前に来たら「早いね」と言われるくらいだ。
そして、セレナ。セレナも一応学生。基本的には来ない。だが、夏季の長期休暇。そして、ルーチェの真意を探るためだけに来たのだ。
「あら?セレナちゃんじゃない。おはよう」
ルーチェはニコニコとした様子で近づいてくる。セレナは思わず後退りをする。しかし、負けてられないと思ったのか、意を決してルーチェに聞く。
「あ、あの、その…あ、あの荷物…は何ですか…?」
「ふふ、メイド服の事かしら?」
呆気なく言ったルーチェにセレナはひぇ、となる。そして、それを聞いていた天八座も動揺したようだ。
「ふむ。ルーチェ君はセレナ君にメイド服を…セレナ君を君の家の使用人にするのかい?」
ペルットが首を突っ込んできた。ただの疑問に聞こえるがその目は好奇心だ。
魔術師が使用人になるなど前例が無い。もしかしたらその場面に出会えるかも、とペルットは思っていそうだ。
「ふふ、そんな事しないわ。わたしのメイドちゃん達は優秀だもの。もう増やさなくていいわ」
ルーチェは相変わらず笑みを浮かべて否定する。だが、ルーチェの感情は全く読めない。更に、尚更セレナにメイド服を送ってきた理由がわからなくなった。
「えっと…じゃあなんで…?」
「ふふ、そうねぇ。これを見て欲しいわ」
ルーチェが差し出してきたのは王国の魔術に特化した大学校。
それの見学会のようだ。
「えっとこれは…?」
「アルルちゃんが通っている大学のリーフレットよ」
「は、はぁ」
リーフレットには明日の日付と校内案内図、色々な出し物の時間が書かれている。
「ふふ、この大学に第三王子様が在学中なのは知ってるかしら?」
「え、あ、はい…」
この王国には三人の王子様と一人のお姫様がいる。
その中の第三王子。エリアス・シュリン・アステリア。白銀髪の正統美形王子としてかなり支持層が高い印象だ。
彼はアルルと同い年の同じ大学に通っている。
アルルは王子の護衛として大学生活を送っているようだ。
「そ、それがどうしましたか?」
「ふふ、明日は外部から人が沢山来るのよ。アルルちゃんや第三王子を見るため、大学を見るため…とかね」
「は、はぁ…」
「でもねぇ。アルルちゃん一人じゃ大変でしょう?アルルちゃんの専門は幻創術。幻創術が風に弱いのは色々な人が知ってるわ」
「そ、そうですね…」
セレナはだんだんと嫌な予感がしていく。背中に冷たい汗が流れているように感じた。
しかし、ルーチェはふふふ、と笑ったままだ。
「わたしは明日、大学の休養室に行って色々な人を治療しないといけないのよ」
「そ、それで…」
「ふふ、本当はわたしがアルルちゃんのお手伝いをしたかったのだけど…難しいのよ」
「……」
「それに、アルルちゃんも出し物とかに出ないといけないらしいの。その間第三王子は一人」
「む、無理です!」
セレナは扉を開けて逃げようとしたが、鍵がいつの間にかかかっていた。
「ふふ、逃げないでちょうだい」
ルーチェはセレナの肩に手を置く。そして、強制的にセレナと目を合わせる。セレナの顔は真っ青だ。どうにか他のメンバーに助けを求める。
チェーザレは諦めなさい、と首を振り、マリノは頑張ってください、と視線で訴え、ペルットは好奇心を隠していない。
味方はいなかった。
「ふふ、と言う事で、アルルちゃんの護衛のお手伝いしてちょうだい」
「な、ななんでわたしが!」
「長期休みでしょう?いい機会じゃない」
ルーチェはふふふ、と笑っているままだ。セレナはブンブンと首を振る。
だが、気になる点が出てきた。
「め、メイド服と何が関係しているんですか!」
「ふふ、わたしの隣にセレナちゃんがいるとするじゃない。そしたら貴方は誰だって疑われるわよ」
「うぐっ…」
「わたしのメイドちゃんとして一緒に入れば問題ならないじゃない。それに、わたしの頼みだと言って大学内を歩き回れるわ」
「つ、つつ、つまり…」
「ふふ、明日は来て頂戴」
セレナは、膝から崩れ落ちた。
✿✿✿
「あら~似合うじゃない」
「ど、どこがですか…」
セレナはルーチェの屋敷にいた。正確には屋敷のすぐ出たところだ。セレナはメイド服に腕を通していた。
とても不服そうにしている。
「ふふ、素敵よ」
「そうですわセレナ様。良くお似合いです」
ルーチェと共にセレナを褒めているのはルーチェの使い魔ベガだ。クリオネなのだが、空中に浮いている。こういう時、使い魔はなんでもありだなと感じる。
「さて、セレナちゃん。これあげるわ」
セレナの腰に付けられたのは物が入れられそうな小さい鞄だ。
「これに布と消毒瓶が入っているわ」
「は、はぁ…」
「ふふ、怪我している子がいたら治療して頂戴ね」
「……わ、わたしが?」
「貴方以外誰がいるのかしら?」
ただの護衛だけだと思っていたが、どうやら治療も仕事らしい。
(か、帰りたい!)
心の中で全力で叫んだセレナだ。
誤字脱字報告ありがとうございます。




