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星撃ちの魔術師  作者: 星宮 しずく
9章.宝箱はグリーンフラッシュ
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1.夏の感謝祭

前回の三秒あらすじ

 魔術戦を乗り切りました。

 現在、学園は夏の長期休みだ。貴族達の社交界シーズンらしい。


 社交界に全く関係ないと言わんばかりのセレナ。彼女は自宅で本を読んでいた。ユリは暑さでバテて食器棚の食器と食器の間に避難している。いわゆる避暑地というものだ。


 そして、本を読んでいるセレナの前には十個無いくらいの包装紙で包まっている何かがある。それを開ける気配はない。


「主…それ、あけないのか?」

「えぇ…面倒くさい…」 

「やっぱり主は『めんどーくさがりや』だな」

「合理的な人間です」


 ムスッとしながらセレナは本のページをめくる。長期休みに入って早一週間。セレナは全く外に出ずにずっと本を読んでいたり、論文を読んだりしていた。インドアを極め過ぎている。


「主…それ、毎年きてるよな。なんだ?」

「…夏の感謝祭のもの」

「なつのかんしゃさい?なんだ祭りか!」

「そ、そんな感じ?」


 感謝祭は普段お世話になっている人に感謝を伝える日だ。明けの男神ローラ・ルジャータと宵の女神セーラ・ゴッチャが共に手を取り合い生きる事を決め、贈り物をし合った日…らしい。この感謝祭は夏と冬にある。


 明けの象徴が夏。宵の象徴が冬…だかららしい。


(…なんでこんなにあるんだろう…)


 セレナは憂鬱になる。セレナ自身祭りがそこまで好きでは無いし、贈り物をする事がまず出来ない。


 そして、本当は送られて欲しくない。むしろ、目の前にある箱全てを返却したい。


 しかし、積み重なっている箱の贈り主たちは同僚、天八座だ。


 天八座はセレナ以外、貴族で構成されている。貴族から平民へ物を贈るのは簡単だが、平民から貴族へ贈るのは色々面倒な手続きが必要なのだ。そのため、返却は不可能。


 だったら本人に直接返せと思われるかもしれないがそれも出来ない。


 贈った本人に返します、はシャレにならないのだ。


「あるじー。あけないか。涼しいものあるかもしれないぞ!」


 ユリはパタパタと箱の上に乗った。

 セレナははぁ、とため息をつき、箱に手を伸ばす。適当にとったものを雑に開ける。丁寧なんてセレナの辞書にはなさそうだ。


「…手ぬぐい…?」

「お、知ってるぞ!主が頭に乗っけるやつ!」

「そ、それは…雨に濡れたくなくて…」


 一箱目には高そうな手ぬぐいが入ってあった。とてもシンプルだが、一つだけ星の柄だ。宛名を見てみる。天八座の父親的存在、チェーザレからだった。


(星は…ユキナ、さんが選んだのかな)


 何故星をチョイスしたのかは不明だがセレナにはあっているだろう。ユリは手ぬぐいの上に止まる。


 その間に二箱目、三箱目…とドンドンと開けていく。


 リーナからは、高そうなワイン。あと三年したらいい感じに熟成するらしい。十九歳からお酒は飲めるのでその時に飲め、と言うことだろうか。

 アルルからは、瓶インク。セレナが一番センスあると喜んだ品だ。

 マリノからは、紅茶の茶葉。何処かの国のだろうか。セレナは見た事ない品物だ。

 ヴォルガーノからは、調味料。料理をしろと言う遠回しでの命令だろうか。

 ペルットからは、火薬と塩化ナトリウム。これで一体何をしたら良いのだろう。


(…な、何を返せばいいの…?)


 いつもセレナは貰ってばかりだ。そのため、全くお金を使わない割に高価な物が幾つかセレナの家にはある。


 セレナは最後の一つ、ルーチェからの物を開ける。これが一番大きな箱だった。


「…め、め、め…」


 セレナは開けてすぐに動揺した。同じ言葉しか繰り返していない。ユリはパタパタとセレナの肩に止まる。セレナは全く動かない。


「主。それ、服か?」

「め…めめ、め…」


 ユリは疑問符を頭に巡らせる。ユリの主、セレナが手に持っているのは白と黒を基調としたふわりとしたワンピース。いわゆる、メイド服というものだ。


「る、るルーチェ、さん、ななな、なんでわたしに…?服少ないから、これ着ろってこと…?」


 セレナは動揺を繰り返し、動けない状態でいる。


「…お、主!水だ!」


 ユリはセレナを気にせずに窓の方へ向かう。どうやら子供達が水遊びをしているようだ。ユリが水遊びを鑑賞している間にセレナは動き出し、片付けを始める。


 本を読むスペースが無いからだ。


 しかし、やはり頭の中はメイド服で混乱している。


「ど、どういうこと…?」


 独り言として口に出してしまうほど深い動揺に陥っている。抜け出すことは難しいだろう。


 セレナはメイド服をタンスに追いやる。シワが付かないようにはしておく。預かり品の場合もある、と自分を納得させるのだ。


(…あ、明日ルーチェさんに聞いてみよう…)


 それを心に決めたセレナ。そうすると扉からノック音が聞こえた。


「は、はい」


 セレナが出ると目の前にいたのは配達の人だ。


「セレナさんですね。どうぞ」

「あ、はい…ありがとう、ございます」


 セレナが受け取ったのは一通の手紙。扉を閉めて手紙を開ける。そこには見覚えのある文字が書かれてあった。


『セレナへ

 今日も暑いですね。お元気ですか。夏の暑さにやられて倒れていない事を願います。

 夏の感謝祭だから、セレナに何か送ろうと思ったけど何送ればいいかさっぱり分からないのでとりあえず、家の店で使える半券をプレゼントします!本が欲しいなら少し遠いけど西の店舗がオススメ。あそこは海外の本も仕入れているからもしかしたら気にいる本もあるかも!

 私は社交界に出たり、ルーチェ様の元でお勉強中です。頑張るね!

 また、学園で会いましょう。   ルナ』


 とても上質な便箋とインクを使っていそうだ。セレナは文字に指をなぞらせる。


「主。何してるんだ?」

「…なんでもない」


 セレナは何処か嬉しそうだった。

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