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星撃ちの魔術師  作者: 星宮 しずく
番外編
79/83

休暇なんて夢のまた夢

 フィラは今日もお皿洗いをしていた。家事が終わると何もする事が無くなるので無駄に庭にいるが今日はお皿を洗っている。


「ふっふふん。今日も平和だなぁ…」

「フィラ様ご機嫌そうですね」

「ひゃぁ!」


 フィラは、跳ね上がる。慌ててお皿を抱えなおす。割ったら幾らするか分からないお皿だ。持ち主は多分何も言わないし、なんなら買い換えるかとか言い出す人だ。だが、平民出身のフィラからしてみればお皿一枚で恐ろしいくらいの金額が飛んでいきそうで怖いのだ。

 まだ、金銭感覚は普通でいたい。


「め、メラル…驚かさないで…お皿、割るところだった…」

「それは失礼しました」


 メラルと呼ばれたのはフィラの膝くらいの高さに頭がある狛犬。この犬はマリノに謎になついた魔物。ただ、メラル本人は「神の使いなのです」と言いっている。どこかに追い返そうとしていたが、マリノは諦めもうほっといている。ちなみに、メラルとはフィラがつけてあげた名前だ。

  メラルは基本的に家の庭にいる。それか屋根だ。


 フィラは、濡れた手を拭いてメラルに触る。モフモフだ。

 そうして癒されているとベルの音無しにダァン!と扉が開いた。慌ててメラルとフィラか向かうとそこにはルナがいた。後ろにはライカがいる。


「あ、お義姉ちゃん!お兄ちゃんいない?」

「…べ、ベル鳴らして欲しいな…心臓に悪いよ…」

「え、あ、ごめんつい癖で…メラル!!モフらせて!」


 ルナは相変わらず元気そうだ。メラルの元に行きモフモフを触っている。その間にライカがフィラに寄ってきた。


「申し訳ございませんフィラ様…お嬢様が若様に会いたいと言い出しまして…」

「べ、別にいいんですけど…会いたいんだ。珍しいな…」


 フィラはルナを見る。モフモフで癒されている。


「あ、ライカさんも座ってください。カフェオレ…いや、コーヒーがいいですか?」

「お気になさらず。私はお嬢様の従者なので」


 ライカとフィラは上手く会話が噛み合っていないようだ。


「ルナちゃんは何か飲む?」

「うーん。アイスココアとかある?」

「うん。あるよ」

「じゃあそれで!お義姉ちゃんありがとう!!」


 ルナは、メラルから離れソファに座る。ライカはソファに座ったルナの後ろに立つ。従者だからなのか、それともライカだからなのかはフィラには分からない。


「どうぞ。アイスココアです」

「ありがとう!」


 ルナはニコニコでココアを飲み始める。そして、いつの間にか持ってきていたのか本を片手に読み出す。


「…魔術の勉強ですか?」

「はい。お嬢様は来週魔術戦を控えておりまして…」

「魔術戦…トラウマしかないよ…」

「……フィラ様は中々…見ないような方法をとっておられましたね…」


 フィラにとって魔術戦とは二度とやりたくない競技だ。学生時代、魔力はある癖に魔術を使えないという事で散々弄られてきた。ちょっと頑張ったら簡単な魔術は使えるようになったが火力調節が出来なかった。

 まぁ、後はご想像の通りと言っていいだろう。魔力のせいで学生時代は色々と波乱万丈な生活を送っていた。


「治癒術は…傷を癒す…やっぱりこれだよね…」


 ルナはブツブツと呟いている。真剣そのものだ。


(…似ているな。やっぱり兄妹、なんだ)


 フィラは何となく横顔を見てみる。容姿こそ違うがどこか通ずる部分がある。それに、何より真剣になっている表情が似ているのだ。何となく仕草も似ている気がする。


「…ちゃんと兄妹なんだ」

「フィラ様…それは少々…」

「ご、ごめんなさい…」


 そうしていると二度目の前触れ無しの扉が開いた。今日はそういう日なのかもしれない。


「つ、次はだれぇ…」


 フィラはチョコチョコと扉へ向かう。先に着いていたメラルが扉を開けた人物に話しかけていた。


「?マリノ?早いね…」


 扉を開けて帰ってきたのはマリノだ。とにかくクマが凄い。ここ数日は帰らずに本部に泊まりこんでいたがここまでとは思っていなかった様子のフィラ。


「目の隈…寝て。寝よ?」


 フィラは、マリノの手を引くが中々マリノは歩かない。相当な体力等を削られているようだった。むむむ、とフィラが困っていると突然抱き止められた。突然過ぎてフィラは状況を飲み込めていない。


「えぇ……ひ、ひと…ルナちゃんいるよ?」

「…そうですか」

「ら、ライカさんもいるよ?」

「…はい」

「……ダメだこりゃ」


 フィラは諦めて少し脱走を試みるがダメだった。男女の力の差がありすぎた。


「うわ、お兄ちゃんだ…何?死にかけてる感じ?」

「お嬢様…言い方というものが…」

「お兄ちゃんだからセーフ」


 ルナはライカにウィンクし親指をたてる。グッジョブ!とやっていそうだ。ライカはいやいや、と顔を振っている。


「…貴方は何しに来てたのですか」


 マリノはフィラを抱きとめながらルナに聞く。ルナは全く別邸に来ないし、相当な事がないとマリノにも会いにこない。


「魔術教えてよ。来週魔術戦あるから」

「貴方のご友人に教えて貰いなさい」

「そのご友人からお兄ちゃんに教わった方がいいと言われたんですぅ!」


 ビシッと指を指すルナ。ライカに後ろから指を上に上げさせられる。


「お嬢様…人を指差ししてはいけないと私は教えたはずですが…」

「…お兄ちゃんだからセーフ!」 

「育ちが悪いと思われますよ」

「それは困る!」


 ルナは指で指していたのを拳に変えて前に突き出す。指差しの代わりだろう。


「ねぇ教えて!お願い!」

「…私の専門は精神感応です。学園の魔術戦には使わないと思うのですが」

「いいから!もしらしたら護衛に使えるかもじゃん!」

「お、お嬢様…私をクビにするのですか…⁉」

「ち、違うから!ライカには仕事してもらうから!」


 ルナとライカが慌て出す。仕事をクビになると思ったのかライカは珍しく、相当動揺している。ルナも誤解を生んでしまい動揺。マリノはそんな様子をただ眺めていた。


 フィラは相変わらず抱き止められているままだ。


(…か、変わったご家族だな…)


 平民出身のフィラ。貴族の家族についてはまだ知らない。いつか知る日は来るのだろうか。


 一つ言えるのは、結局ルナが庭に出てメラルから魔術を教えてもらうという不思議な光景が見られたと言うことだけだ。

ルナ・プラターヌ

男爵令嬢。使えるものは使う主義。


ライカ・アンレラ

男爵末娘。教育係でもある。


マリノ・プラターヌ

男爵令息。多忙。


フィラ・プラターヌ

男爵夫人。ほわほわの塊。

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