新たな卵、発見
「お、おっそいぞー遅刻少年」
「う、うるさいですね!!大学から走ってきたんですよ⁉」
「転移魔術使えばいいじゃん」
「ローブ来てないから捕まるんです!!」
アルルは全力疾走で大学からチェリー会場に来ていた。重そうな鞄を肩にかけたままだ。そんなアルルを茶化しているのはリーナ。今日も元気そうだ。
「ふふ、アルルちゃんいらっしゃい。まだ始まって無いわよ」
「ほ、ほんとですか!よっし!」
アルルは機嫌がとても良い。アルルの母校でもある魔術学園。その中でも魔術戦は結構好きなのだ。アルルの得意なのは幻創術なので直ぐにやられていたが上から見る魔術はいつも綺麗だった。
「おや、間に合ったのですね」
「はい!!無事に!!」
アルルは、会場で一番高いところに居た。国王陛下の護衛をしながらの観戦だ。とても楽しみで仕方が無い様子。
アルルは国王の後ろから魔術でどうにか見ようと奮闘している。リーナも同様だ。ルーチェは国王の楽しそうに話をし、マリノは一番奥の方にいる。
「これさぁ、いっつも思うけど制服ガラッと変わったよね」
リーナは遠視魔術をかけて生徒を見る。女子生徒は紺色のベストにスカート。男子生徒も紺色のベストにネクタイ、紺色のズボンを履いている。
「それは思いますね…」
マリノも見ているようだ。
「あー、二人は制服変わる前の服ですっけ…?」
アルルはふと思い出す。自身が二学年に上がる頃に新たな制服に変わった事を。制服が変わった当初、リーナは既に社会人。マリノも高等学校を卒業していた。
「てか今考えると前の制服古くない?」
「そうかなぁ…結構俺は好きなんですけど」
「だってどこの国だよって感じのだったし」
リーナは不平不満をずっと言っている。リーナが来ていたのは紺色のワンピースだ。腰にベルトをして、胸元にリボンがついていた。
そして、男子生徒も紺色の無駄に長いジャケットにネクタイをしていた。
それがとても気に食わなかったようだ。
「ふふ、まぁまぁ落ち着いて。始まるわよ」
アルルとリーナは国王陛下の後ろに下がる。リーナは不服そうに、アルルはジトっとした目でリーナを見ている。
「王立魔術学園の魔術戦の試合は最後の一組になるまで続きます。ルール違反者や失格者は上空の騎士団が白旗を上げます。上げられた時点でその組は終了です」
アナウンスが聞こえてくる。ルール説明だ。生徒達はほぼ全員真面目に聞いている。ただし、一人を除いて。
「うわ、セレナちゃん顔真っ青じゃんウケる」
「ふふ、あの顔は死にそうと思ってる顔ね」
ルーチェ、リーナの天八座女性組がニコニコとしてセレナを観察している。アルルもセレナの方を見てみる。
確かに死にそうな顔をしている。
「…ああ見えて会場で一番強いって卑怯…」
アルルは虫を噛み殺したような顔をしている。
アルルはセレナをライバル視している。天八座に入った当初、アルルは十四歳だった。最小年齢として少し有名になったがその一年後、セレナと言う天才が現れた。
本人は謙遜しているが、天八座の試験の中でもトップクラスで名を残すだろうとアルルは思っている。
「では、王立魔術学園の魔術戦開始です!」
アナウンスが言い終わると直ぐに東の二名、北の一名、北北西の三名が一斉に魔術を行使し始めた。
「雷…ですかね」
「あー、多分?」
アルルとマリノは何となく西側を見ている。派手な雷を落とした男がいる。
反対にリーナとルーチェは東側を見ている。
「あの人…知ってる。確か問題児で有名」
「そんな事私に言われても…」
アルルが指を指しているのはエリック・キャンパス。アルルが在学していた時にもかなり噂が回っていた問題児だ。
魔術の腕は確からしい。
「へぇ…あ、誰かに突っかかった」
「…誰でしょうか」
「さぁ、気弱そうな子だな」
エリックが突っかかったのはトール・ナンシェ。残念ながら彼の事はアルルもマリノも知らない。
「やっぱり魔術戦って楽しいわ!!」
「そこだけ聞くと戦闘狂だわ」
「うるさい!」
聞いていたのかリーナが反応した。アルルは少し怒りながらも魔術戦を見続けた。
✿✿✿
「残りは…四組かぁ早いな」
「その四組の中に名前が上がってた優勝候補はいないねぇ…あ、でもセレナちゃんもいるし、マリノの妹さんもいる。今年あの二人とっちゃうかもね」
残るは四組となっていた。優勝候補は魔力切れで失格。たかが魔力切れと思う人もいるがされど魔力切れだ。本当の戦地に立たされた時、魔力が切れて殺される事も視野に入れなければならないのだ。
そのため、魔力切れは審判もよく見ている。
「お、ルーチェさん!女同士の戦い始まりそう!!見よ見よ!」
「ふふ、いいわねぇ。面白そう」
ルーチェとリーナは女同士の戦いとやらを見ている。では、とアルルとマリノは反対側にいる男同士の争いを見ることにした。
「お、エリック残ってる」
「その方は一体誰なのですか…」
「うーん。エリックはエリック」
「…後で聞きましょう」
アルルの説明が絶望的に下手なのを思い出したマリノは説明を聞くことを辞める。最悪、自身の妹から聞けば良いと考えたのだろうか。
「お、気弱な子が魔術使いそう。なんだと思います?」
「…風でしょうか。先程も風魔術を使っていましたから」
「うーん。じゃあオレは土。使ってそう」
アルルとマリノが予想を立て、気弱な子と言われているトールを見ている。トールは結界を編み上げた。
「結界?なんで?」
「何をするのでしょうか」
その後、トールはエリックとそのパートナーに向かって指を突きつけた。その後、結界の中で大きなつむじ風が巻き起こった。
「うげ⁉えげつな…」
「…中々ですね」
そしてトールのパートナー、ルークスがちまちまと岩石をつむじ風の中に入れていく。
エリックは外に出ようとするが結界に拒まれ外に出られない。
後は持久戦だろう。
「…あれやっば…」
「…受けたくはないですね」
お互に意見が一致している。仮にあれを目の前から受ければタダではすまないだろう。つむじ風の中で冷静に魔術を使えるのか、と聞かれたらアルルはすかさずにいいえ、と答えるだろう。
トールは、つむじ風から台風の目に変えた。真ん中に一体エリックは重力沿って地べたに落ちた。騎士団が白旗をあげている。
「…こっわ…」
アルルが抱いた感想はそれだった。
「あれ?二人とも顔どうした」
「ふふ、何か面白いものでも見れたのかしら」
リーナとルーチェは既に見終わっていたのかアルルとマリノの方へやってきた。
「な、なんにもありません!!」
「えぇ?怪しい」
「だーかーら!ありませんから!!」
アルルは必死に否定をした。
(…あれ、下手したらセレナも使うって事だよな…怒らせないでおこう…)
心に命じたアルルであった。
アルル・バンビーノ
男爵令息。お転婆でツッコミ気質。
マリノ・プラターヌ
男爵令息。妹の事は少し気にしていた。
リーナアグレリア
子爵令嬢。魔術切れ?そんなの魔力伸ばせばいい!精神の持ち主。
ルーチェ・セグレタ
侯爵令嬢。魅惑と秘密多き女性。




