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星撃ちの魔術師  作者: 星宮 しずく
8章.晴れやかな夏
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4.初めての…

前回の三秒あらすじ

 ヒロイン(友人)が新たな魔術を習得しました。

「絶好の魔術戦日和だね」

「どど、どこが…むしろ台風…豪雨くらいになってそのまま中止に…」

「ダメだよ!これは結構皆にとっては大事なの」

「す、すみません…」


 ルナとセレナは魔術戦控え室にいる。立派すぎて萎縮してしまいたい部屋だ。


 魔術学園はほぼ全てが貴族の生徒だ。その人達に合わせているため、豪華になっているのだろう。


(うぅ…苦い思い出が…)


 セレナは、一度だけこの会場に来たことがある。遡ること三年前、天八座の試験の時だ。あの時の出来事はセレナにとっては非常に苦すぎる思い出となっている。


「にしても大きいね…。チェリー会場…だっけ。名前がなんかいい」

「そ、そこ…?」


 二学年の総勢百五十人が、この会場にいる。そして、外はその両親や王国の関係者一同がいるだろう。

 軽く見積ってもチェリー会場には五百人以上がいるという事になる。


(うぅ…胃が、痛い)


 人前が無理なセレナ。自身で軽く見積って、自身でダメージを受ける。


「…ねぇ、セレナ。手出して」

「…なんで?」

「いいから」


 セレナが大人しく手を差し出すと、ルナはセレナの手首に何かを巻く。

 何か、キラキラしたものだ。


「…なにこれ」

「シードビーズっていうここよりも、もう少し東にある王国の輸入品で作ったブレスレットです!」

「ぶれす…なんて?」

「ブレスレット!今、貴族の間で凄く流行っているの!」

「…まって、今輸入品って言った…?それ、凄く高くない?」

「え?」

「幾らか分からないけど…お金払わないと…」

「別に高い訳じゃなさそうだよ…お父さんが勝手に輸入して勝手に売ってるだけだから。あ、お金はいらない!」


 セレナが魔術でどこからが、袋を持ってきた。見た目の割に結構入ってそうだ。


「…そ、そう?」

「うん、プレゼント!放課後、付き合ってくれてありがとう!」

「い、いえーわ、わたしは何も…」

「うーん。謙遜もいい所だな」


 ルナはちょっと唸っている。どうやらセレナが本気でそう思っていることを感じ取ったようだ。とても複雑そうにしている。

 一方、セレナはルナにはめてもらったブレスレットを見ている。


「…ほら、見て!私もお揃い」

「…お揃い?」

「うん。セレナに魔術のお守りって言うのも変だけど…。お守り」

「そっか」

「…頑張ろ」

「…程々に」

「もう!」


 ルナは、手を中に出しハイタッチを求める。セレナは、少し迷った後手を伸ばしハイタッチする。


 終えたあとはお互いに視線が合った。妙に照れてしまいお互いに笑ってしまう。


「王立魔術学園の生徒はグラウンドに集まってください。十分後、競技を始めます」


 淡々としたアナウンスが聞こえてくる。空間術と結界術を組み合わせて声を反響させているのだろう。


「よしっ!一回戦突破頑張るぞー!えいえいおー!!!」

「……?」

「セレナも、えいえいおー!」

「え、えいえいおー」


 掛け声を終えた後ルナが扉を開けて先に出る。セレナは、あとからついて行く。


(…ちょっとだけ、頑張ろうかな)


 そう考えたセレナであった。


 

✿✿✿


 

「ひっ、ひ、人、人が…」

「多いね…予想以上…」


 セレナとルナはグラウンドに出ていた。足元は土だ。そして、少し視線を上げてしまえば見渡す限り人。


 見た所、貴族しかいなさそうだ。男性達は自身の息子に良い相手を探す為だろうか、魔術を使い、女子生徒のいる方を見ている。

 女性達は、魔術戦にあまり興味が無さそうだ。口元に扇子を持って行っている。


 そして、この競技会場で一番高い所にある席には国王陛下と第一、第二、第三王子がいる。その少し奥にはこの王国の妃と姫君が。


 国王陛下のそばにいるのはローブを着た四名。天八座だ。


(無理無理…な、なんで四人もいるの…も、もっといなくて…いや、来なくていい!!)


 ルーチェの手紙に書いてあった事は本当だった事に絶望するセレナ。ルナは、天八座を見るなり少し嫌な顔をする。


「うげ、お兄ちゃんいる」

「そ、それよりなんでこんなにお貴族様いるの…帰っていいのに…」

「それは…いつかも言ったけど魔術が使える生徒を自分達の仕事場に引き込むためらしいよ」


 セレナは、さらに視線を巡らせる。すると、視界に入ったのは空飛ぶ馬に乗っている騎士団。


「き、騎士団長に、全部隊の隊長…?」

「え、あれ全員隊長なの?」

「か、顔…見た事ある…」

「うわ…本格的じゃん…」


 流石にルナも怖気付いたのか少し身を小さくする。そうしていると、よく見知った顔が目に飛び込んできた。


「あら、ルナに平民の娘じゃない」


 シャーレイだ。今日はいつも通りの制服にコサージュをつけている。家のものだろうか。


「シャーレイ…何か御用かしら」

「用事なんてないわ。ただ、お顔を見に来たのよ。平民とパートナーになった哀れな成り上がりをね」


 相変わらず、ルナを成り上がり呼ばわりしている。ルナから聞いたが、どうやら貴族は貴族になってから二世紀程経たないと成り上がり呼ばわりされるらしい。

 難しすぎる…とセレナが頭を抱えたのは最近だ。


「では、ごきげんよう。次会う時は叩きのめすわ」


 シャーレイは、優雅に自身のパートナーの方へ向かう。セレナはそのパートナーと目が合った。以前会った時はビクビクしていたが、今は凛々しい。何かあったのだろう。


「シャーレイ!」


 ルナは、突如大きな声を出す。セレナはビクリとし、シャーレイも足を止める。


「何かしら」


 冷たい声にルナは動じず声を張り上げる。


「私が、私達が一位とるから!」

「な、何言ってるの!」


 突如のルナの宣言にセレナは、慌てて止める。しかし、ルナは言葉を続けた。


「その余裕そうな雰囲気、見てるだけでいっつも腹立つ。そういう雰囲気醸し出す人なんか知らないけどムカつくの!」

「る、ルナ…」

「その余裕、絶対に崩してやるから!」


 ふん、と言いそうな勢いでルナはシャーレイとは反対方向へ進む。セレナは、シャーレイとルナを見た後、ルナを追いかけた。


(き、貴族…怖い…)


 魔術戦は、大人が生徒を取り合うものだと思ったが、女と女の戦いなのかもしれないと認識を改めたセレナだった。

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