3.魔術は…すごいんです!
前回の三秒あらすじ
脅迫状(ただの手紙)が届きました。
セレナは今日も校舎裏にいた。先程放課後になったばかり。きっと、ルナはまだ教室にいるのだろう。
「…えっと、ここをこうして…」
セレナは、万年筆を持ちノートに色々書いているようだ。
「お待たせ!セレナ!」
ルナは鞄を肩にかけて慌てて来た様子だ。しかし、息は上がっていない。流石、学園有数の運動神経の持ち主だ。
「…セレナ?どうしたの?」
「あ、ルナ…いらっしゃい。す、少しだけ待って…」
セレナはもう一度視線をノートに落とす。ルナも後ろからセレナの書いているノートを覗き込む。
「…セレナ、なにこれ」
「え、あ、術式陣の…改良?」
「なんで疑問符なの…」
セレナが書いていたのは術式陣。いつもセレナが使うものではない。
「…セレナの?」
「えっと…違うの、今度の論文に、使おうかなと思って」
「え…?論文…?セレナ、論文とか書くの?」
「か、書くよ…一応ふた月に一回」
「は?あ、でもそっか…。天八座、なんか順番に毎週論文公表してるね」
天八座は毎週順番に論文を発表している。魔術はまだまだ未解明のものも多い。そのため、魔術に精通しているであろうというただの憶測だけで天八座は論文の公表を義務付けられている。
天八座の論文は教本を書き換えられるくらいには高度な魔術が書かれている。いつも、魔術師協会が頭を抱えている。抱えるくらいなら、論文なんて書かなくていいのにとセレナは思っている。
ただ、自身の文字で魔術を解明していくのは本を読むことの次に楽しいので趣味としてならいくらでもかける自信はある。
「…えっと、ありがとう。書けた。じゃあ、始める?」
「うん!」
ルナは鞄を置いて肩を回す。やる気十分という所だろう。
「あの!セレナ!」
肩を回し終えたルナはちょっと真剣そうに、でもどこか困ったようにしている。セレナはわからず疑問符が頭に思い浮かぶ。
「そ、その…せっかくなら攻撃術も、教えて欲しいんだけど…いいかな?」
「えっと…いいけど…た、倒れないでね…?」
「わかった!!」
セレナの返答を聞くとルナは喜んだ。
(わたしに教えてもらわなくてもいいだろうに…)
セレナはそう考えるが一般魔術師にとって攻撃術筆頭のセレナに魔術を教わるのはとても良い事なのだ。本格的に魔術行使が可能になるとまで噂は回っている。
「セレナ、治癒術って調べたけどやっぱり治癒するだけって書いてたよ?」
「えっと…なんの本で調べたの?」
「お兄ちゃんの家にあった本。治癒術専門じゃなくて魔術全体の事が書かれてあった」
「それだと書いてないな…。その、ルーチェさん……治癒術筆頭さんの論文が一番いいと思う」
セレナは、ノートと万年筆を鞄に仕舞い、校舎に置く。そして、ちょっと草が生えている場所に足を踏み入れる。
桃色と白色の薔薇が綺麗に咲いている場所だ。
「い、今から使うから…見てて」
「?わかった」
セレナはルナの返事を聞いた後、一息をつく。
「…展開」
いつも通り術式陣を編み上げる。術式陣はセレナの目の前ではなく地面に編み上げられた。
「薔薇の拘束」
そうすれば学園で育てている薔薇がセレナの方へ急速に伸びだし手首に茎を巻き始める。
どこから見ても、治癒術の使い方では無いのは明白だ。
しかし、これが正しい使い方でもある。
「なんで?どうして…え?幻?幻創術?」
ルナは状況を飲み込めていないようだ。それもそうだろう。一般的に普及している治癒術は怪我を治す魔術だ。
「えっと、今のはちゃんと治癒術です……。治癒術は、魔力を注ぎ込んで傷を癒してます。お、同じ原理…です」
セレナはそういうと落ちていた向日葵の種を手の上に起き、ギュッと握りしめる。
「こうやって、魔力を注げば回復…では無いけど植物は成長します。大地に魔力を注げば、それは沢山の魔力を送ってくれた主に、力をくれます。……治癒術の始祖の、話知ってる?」
「え、えっと…あ、思い出した。星の巫女が…なんちゃらみたいな」
「えっと、正解…。治癒術の始祖、星の巫女が大地の女神として天に上がっています…。治癒術を使えるのは、その女神に愛された人…と言われています」
「あ、だから使えない人もいるのか…」
「そういうこと」
ルナは、セレナの手にある薔薇に視線を向ける。とても活き活きとして、魔力が注がれたから成長したとは思えない。
「…これ、制限とかあるの?」
「一応……。わたしは、その、別に愛されてないからこれくらいしか…でも、使える人はもっと凄いの使えるよ」
「十分すぎるでしょ……」
「あ、あとは…生まれた季節とかも、関係してます」
「季節?なんで…あ、女神様だから見てる…とか?」
「その辺はわたしにも、分からない…だけど、生まれた季節が夏なら、夏の植物全て操れます。夏以外のは半分以外…くらいだと」
「じゃあ、セレナは夏生まれなの?私は夏生まれなんだけど…」
「え、あ…秋…です」
「へぇ…じゃあ私は夏の植物操れるの?」
「練習すればきっと…!」
「そっか…頑張るね!!!」
えいえいおーとルナは一人で拳を天に突き上げる。
✿✿✿
しばらくして、ルナは地べたに座り込んだ。息が珍しく乱れている。運動ごときでルナの息切れは起こらないが、魔術関連だと起きやすいようだ。
「ま、魔力…そそぐの難しくない…?」
「えっと…難しいと感じたことない…」
「うぅ…」
ルナは中々大地に魔力を注ぐことに苦戦していた。
「…えっと、魔力を水みたいに思うといいかもよ…」
「み、みず?」
「えっと、そう。昨日とかまで水の攻撃術、やったよね」
「うん。やってた」
「どうやってた?」
「イメージ?せせらぎの雨天は雨みたいなのをイメージしたし、あ、砲弾水は鉄砲をイメージした」
「えっと…多分、そんな感じで魔力を水みたいにイメージすれば、きっと…出来ると思う」
「ほんと…?やってみる」
ルナは地べたに座ったまま、イメージを繰り返し、繰り返し、繰り返した。すると、手を着いていた先から小さな花がチョコンと顔を出した。
「で⁉」
「…できたね」
「す、すごいよセレナ!!!」
わーい、とルナは年相応にクルクル回っていた。その姿は、キチンと迎えに来ていたライカに見られた。
ライカは、とても、不思議そうにして見ていた。




