1.ヒ・ミ・ツの訓練
前回の三秒あらすじ
思い出が蘇り泣きました
「シャフト!!せせらぎの雨天!」
ルナが術式陣を編み上げ詠唱をすれば空から雨のような魔術が降り注ぐ。攻撃術の一つだ。
「えっと……それでいいと思うよ」
セレナはルナの魔術を見ていた。
現在は夕暮れの放課後。夏がいよいよ本格化し、夕暮れでも倒れそうな暑さが続いている。そんな中、セレナとルナは校舎裏で魔術の練習をしていた。
「うーん。なんかしょぼいな…」
「そんな事ないよ……。水魔術は相手の、意識を一瞬奪ったり、反らせるから……便利だよ」
「うーん…いくらセレナでも納得できないような…出来るような…」
ルナはうんうんと唸っている。
来週、遂に魔術戦がやって来てしまう。
セレナは深く知らなかったがどうやらこの魔術学園の魔術戦は凄いらしい。国内で五つ指に入るくらいの大規模なお祭りらしい。
そのため、わざわざ競技会場を借りて実演。
噂によれば天八座が来るとか…来ないとか。確実に来るのは国王とその三人の息子。そして、騎士団長と言った王国の顔となる人達。
良い魔術戦を見せた人には偉い人からの推薦状が貰えるらしい。
現に天八座にいるセレナにとっては関係の無い話だ。本来ならこんなに魔術戦に力を入れるはずが無い。
理由は至って単純。目立つからだ。
しかし、意外にもセレナはちゃんと珍しく真面目に魔術をいかに目立たずに、ルナの助けになるかを考えている。
「…ごめん、セレナ。頭…いたい」
「あ……ご、ごめん。気づかなかった……その、休んで……」
「うん…」
ルナは校舎に寄りかかりズルズルと座り込む。どうやら魔力をギリギリまで消費させてしまったようだ。
(……もしかして、あんまり魔力無いのかな)
セレナは、少しウトウトしているルナを見て考える。仮に魔力が少ないのなら攻撃術はあまりやらない方がいい。
攻撃術は火力は高いが魔力の消費が八つの魔術で一番高いのだ。
そのため、天八座では比較的魔力が少ないマリノやルーチェは派手に攻撃術を使う事は無い。
「…えっと、少しだけ待ってて」
「え?あ、うん」
セレナはルナに言うとユリを呼び出す。ユリは放課後基本的に勝手に学園をブラブラしているのでセレナが念じれば来るのだ。
使い魔とその主人にしか出来ないことである。
「主なんだ」
「ルナを守って」
「るな?……あれか?」
「ルナ…あの子」
何度かユリはルナと会ったことがあるが残念ながらユリは全く人の顔と名前を覚えていない。その代わり、無駄な知識ばかりをつけていく。
ルナも初めてユリを見た時は「蝶が話した⁉」ととても驚いていたがセレナの使い魔だと話すと納得してくれた。
「わかったぞ!」
「うん、すぐ戻る」
セレナは一度ユリとルナから離れる。
セレナが向かう先は校舎だ。校舎の中には持ち出し可能な魔力測定器がある。小型なので重くない。
この学園はお金はあるようなのでなんでも揃っている。
「えっと……あ、これか」
廊下に「ご自由にどうぞ」と貼ってある紙の下に置いてあるのは魔力測定器。懐中時計のような形をしている。
「…お借りします」
セレナはご丁寧に挨拶を言い、測定器を持つ。すると、後ろのクラスから声が聞こえてきた。
「シャーレイ!どうするのよ!」
「言ったでしょう?こうやるのよアルバ」
「それが分からないの!」
「そもそも何故あたくしが教えないとなのよ。貴方のもう一人のパートナーに教えてもらえば良いじゃない?」
「こっちは三組がパートナーなの!!マジで教論最悪」
春先に絡んできたアルバと、最近目が合えば睨んでくるシャーレイがクラスで魔術特訓をしているようだ。
二人とも一組所属。魔術には強いと思っていたがそこまででも無いようだ。
(…苦戦してるのは……攻撃術の…水、かな。アルバさんって人は多分属性は炎。相性良くないんだけどな…)
魔術師には適性と属性がある。
適正は、八つの魔術でどれが自分に合っているかというものがわかる。セレナの場合は攻撃術だ。あくまで適正が扱い易いと言うだけで適正以外使えないという訳では無い。
属性は、攻撃術の中で何が向いているかと言うものだ。八つの魔術の中で一番簡単に使えるのが攻撃術。そのため、属性というものが作られた…らしい。属性は、水、炎、風、土、の四つだ。セレナの場合属性は風になる。
属性にも相性と言うものがある。水と炎は対立し合うというのが常識である。
アルバは、どうしても自身の属性外の水を使いたいようだ。頑張れば使えるが、これは生まれつきのものだどうしようもない。
セレナは、苦戦しているアルバと困っているシャーレイを見てため息をつく。そして、自身のクラスに寄って紙に何かを書く。
そして、魔術で風を起こしアルバとシャーレイの元へ。
(……出来ますように)
セレナは二人の反応を見ずに校舎を出た。




