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星撃ちの魔術師  作者: 星宮 しずく
7章.雨の日の灯り
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4.怒らせてはいけない人No.1

前回の三秒あらすじ

主人公、同僚をディスっていた。


 セレナはソファの後ろで丸くなっている。


(そそ、そうだよ…マリノさん結界苦手だったじゃん…書き換えられそうとか考えちゃったよ…ば、バレたら本当に…こ、殺される…)


 マリノは比較的温厚だ。しかし、稀に恐ろしくもある。


 この間はヴォルガーノに喧嘩を売られたのか知らないがセレナが本部に行ったらぶっ倒れているヴォルガーノとそばにいるマリノを見たことがある。

 何かあったのかな、と思ってスルーしようとしたがヴォルガーノのうぅという何とも言えないうめき声を聞いた。その時にマリノは平然とした顔で『おや。まだ元気なのですね』と言い放っていた。

 絶対に怒らせないようにしようと決めたのは内緒だ。


「…フィラ、あの机に何故料理が?」

「あれはねぇ……あれ、セレナちゃんがいない」

「…は?」


 フィラはセレナがいない事に気が付いたようだ。


「むむっ、事件だ。セレナちゃんがいない…」

「…その名、どこで聞いたのですか」

「え?川に流されてた女の子の名前…だよ?」


 セレナは後ろで縮こまり続ける。足音が聞こえる気がするが気のせいだと思う事にしたようだ。しかし、それは直ぐに終わる。


「おや、本当にいましたね」

「ひっっ」

「そんな亡霊のような反応をしてどうしましたか?」

「あ、ああ、あ、あ……」


 セレナの目の前にはマリノがいた。和かに微笑んでいるが絶対にロクな事にならないとセレナの頭で警報がなっている。

 パニック状態に陥ったセレナは「あ…あぁ…」と言葉にならない声を上げている。


「…セレナちゃんいた。良かった…でも、どうしてそこにいるの?」

「い、いい、いえ…そ、そそ、そ、その…」


 セレナは何も返せていないが急遽、ソファの後ろからフィラの後ろに隠れる事にする。ギュッとしがみつき、身を小さくして隠れている。


 フィラは状況は分かっていないが何となくそのままにしている。

 はぁ、と大きめのため息が聞こえてセレナはビクリと更に縮こまる。


「…セレナさん。私の妻を盾にしないで頂いても?」

「ひっっ、すす、すみません!」


 セレナはバッとフィラから離れ、しゃがみこむ。 


 そこでセレナはとある事に気づいた。


(私の妻…?マリノさんの奥様…?フィラさんが……、フィラさんがマリノさんの奥様⁉)


 セレナはバッと顔を上げる。


 どこか抜けている所があって、セレナから見てもふわふわしているフィラが、マリノの妻だと言う。


 てっきり、マリノの妻はお堅い典型的なご令嬢だと思っていたのだ。正直、こんなのほほん、ふわふわ女性があんな堅苦しい人の妻なんて微塵も思っていなかった。


「せ、世間って狭い…ですね」

「何をふざけた事を言っているのですか?」

「ひっ、すすす、すいません」


 本音が出てしまったがマリノにピシャリと怒られるセレナ。マリノは和かにセレナに近づいてくる。セレナはドンドン後ろに下がるも壁に当たる。


「さて、ここまでの経緯。洗いざらい吐いてもらいましょうか?セレナさん」

「かかか、勘弁してください…」


 一般女性なら微笑みに虜になっている。しかし、セレナは恐ろしすぎて半泣き状態になっている。


「ストップ!」


 セレナが視線を横に向けるとフィラがバツマークを腕で作っていた。


「マリノ!セレナちゃん泣かせちゃダメ!女の子は泣かせちゃダメって言われなかったの?」

「……今ですか」

「今だから!」


 いつもならマリノが相手を言いくるめているがどうやら会話の様子を見るにフィラには強く言い出せない様子。


(…奥様に甘いのか、弱いのか…分からないな…)


 セレナは二人の様子を見ている。正反対に見えるが意外とお似合いかもしれないと考え始めたセレナだった。


「…フィラ」

「むぅ、なぁに?」


 マリノはセレナがいるのを知ってるのか、知らないふりをしているのか分からないが、突如フィラの頬をなぞり始めた。

 これにはフィラも混乱しているようだ。


「えっと…?ご機嫌とり?」

「別の方法で貴女の機嫌は取りますよ」

「えぇ……」


 フィラはとても呆れているようだ。突然言われた事を呑み込めていないとも取れる表情をしている。


「…客人に、紅茶を出して頂けますか」

「セレナちゃんに?」

「はい」

「…分かった。いじめちゃダメだよ」

「分かりました」


 フィラは「絶対、ぜーったい泣かせちゃダメ!」と何度も根を押して何処かに行った。おおかた、キッチンだろう。セレナはそれを見ていたが現在の状況に気づき、逃げようとする。


 しかし、逃げられるはずも無かった。


「さて、フィラが戻ってくる前に、全てを吐き出しなさい」

「ひっ」

「貴方のお陰でこちらは仕事が増えたのですが?」

「すすす、すみません」

「川に落ちたと聞いて誰が動いたと思いますか?」

「ゔ、ヴォルガーノさん…?」

「あの人は貴方の使い魔と喧嘩してただけですよ。動いたのはチェーザレさんです」

「チェーザレさん…?」


 チェーザレと言えば、数時間前に模試の結果を見せて呆れさせた覚えがある。そろそろ見捨てられるかなと思っていたのでセレナは少し驚く。


 それを察したのかマリノはため息をつく。セレナの前ではため息をついていることが多そうだ。


「チェーザレさんは慈悲深い方です。貴方を娘のように接している方ですよ?川に落ちたと聞いた時飛び出しましたからね」

「そ、それは申し訳、ないです…」


 セレナは落ち込み指同士を絡ませる。だが、思った事がありマリノに聞く。


「…ユリ…喧嘩したんですか」

「えぇ、私が既に向かった時には風を巻き起こしてましたね。ついに台風とやらでも到来したのかと思いましたよ」

「ユリィ……」


 沢山迷惑を掛けたことだけは分かったセレナだった。

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