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星撃ちの魔術師  作者: 星宮 しずく
7章.雨の日の灯り
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3.ある意味職業病

前回の三秒あらすじ

言葉に乗せられた主人公

 セレナが食事をしている間、フィラは少し忙しそうにしていた。籠を抱えてウロウロしていた。

 少しだけ、セレナは申し訳なく思ったがお腹がすいている事と、食事が美味しいので甘えさせてもらっている。


(……パン、なんて言うんだろ。月みたいな形…)


 セレナが食べているのはクロワッサンと言うパンなのだがセレナがそれに気付くことは無い。


「雨止んだな…」


 セレナは窓を見て少し呟く。


 大きな窓からは濡れた葉や花が見えている。自然の恵みを感じられる庭だ。隅にはやはり、犬がいる。


(ユリ、何処だろう…家帰れたかな、それかヴォルガーノさんのお家で待っていて欲しい……ヴォルガーノさん、ユリを家から追い出さないでください…)


 ヴォルガーノとユリが共にいる所を想像すると、何故かヴォルガーノがユリに喧嘩をふっかけてそれを買っている姿が思い浮かんでしまう。ヴォルガーノが一時的に保護してくれていてもユリが自ら出て行ってそうで怖い。


 セレナは少し沈んだ気持ちになりながらパンを食べる。


「お、雨やんでる!」


 フィラは窓を見るなり窓を開ける。


 その様子はどこかキラキラしているようだ。

 少しぬるい雨上がりの風がセレナを吹き付ける。


「…帰ってくるかなぁ」


 フィラは外を見ながら小さく呟く。セレナはその様子をパンをモグモグしながら見ている。


(…一人では無いんだ…当たり前か、ご夫人…が一人暮らし聞いた事ない…)


 セレナがそう思っているとフィラはセレナの方を向いた。


「ここ、開けててもいいかな?」

「は、はい…大丈夫です」

「ありがとう」


 フィラは大きな窓を一人で開けている。錆びているのか、開けにくそうだ。

 それをセレナが眺めていると少し、魔力を感じた。


(…結界?この家…からかな。なんの結界だろう……)


 いつもなら直ぐに感じてあるだろう魔力。今まで気付けなかったのはセレナ自身に魔力が無かったからだらう。


(…素人…では無いな。でも少し苦手なのかな…書き換えられそう…)


 結界は数式と文字で出来ている。

 数式が主の場合セレナは書き換えられない。しかし、語学や文学に強いセレナは文字に重点を置いた術式なら編み変えられる。

 それが、セレナの強みとも言える。


(なんの結界だろう…)


 普段なら直ぐに分かりそうだが、今は分からない。


 とりあえず害は無さそうで、フィラも何も言わない事から安全だろうと考えて、セレナはスープを飲む。 


 美味しい、とセレナは思わず呟いた。


「太陽が出てきたね。これから晴れるかな?」


 フィラは独り言なのかセレナに話しかけているのか微妙なラインで話している。セレナは少し考えてフィラの言葉に答えることにした。仮に独り言だったらセレナの自意識過剰で終わらせられるが、セレナに話しかけているとなると無視をしたと思われかねない。


 それだけは避けたかったのだ。


「えっと…た、多分晴れるかと…。今日の新聞は、その、元々雨予報では無かった…ですし」

「新聞読んでるの!すごい…!わたしは読まないな。読んだ方いいのかな」


 フィラは、むむむと少し悩んでいるようだ。


「えっと…新聞はお手軽…ですよ。新聞特有の文字体があるし……そ、それに!新聞はスペースが限られているのでその中で沢山の情報を入れる為に創られた文字体なんです!それに、新聞を読んでいて疲れないようにするための工夫や、文字が多くても読みやすい工夫が沢山されているんです!例えばですね───」


 セレナは机の隅にあった多分フィラの家の新聞をフィラの前に見せながら新聞の文字体について熱く語っている。


 フィラはうんうん、と熱心に聞いている。誰も止めない為セレナの熱はドンドンヒートアップしていく。

 ひとしきり話し終えた後、セレナはハッとした様子になった。


(どどど、どうしよう…はな、話しすぎた…)


 恐る恐ると言った様子でセレナはフィラを見る。フィラはセレナが目の前に出していた新聞を見ているようだ。


「意識した事ないけど…確かに読みやすいかもね」


 新発見、とでも言ってそうな雰囲気にセレナは少し気が抜ける。


(…や、やっぱり変な人…)


 セレナはとりあえずフィラに引かれていないようで安心したようだ。椅子に戻って冷めかけてきたスープを飲む。

 フィラも新聞を置いてまた、パタパタと忙しそうにし始めた。


 

 セレナが、クロワッサンをモグモグとしていると人の足音が聞こえてきた。ここはどうやら貴族街なので人はほぼ通らないようだ。通るのは馬車くらい。


 だが、足音がしてきた。


 貴族街では、瞬時に暗殺されそうなことを察することが出来るようにペルットが貴族街すべてに音が強く反響するようになっている。寝れなさそう、とは思うが貴族は慣れたのだろう。


 セレナは疑問に思いながらもクロワッサンを食べ続ける。随分と気に入ったようだ。


「!帰ってきたかな」


 フィラは持っていたランタンを抱えたまま玄関と言えるであろう場所に向かう。壁と言う壁は無いのでセレナからも見える。


(…?誰だろう)


 察しが悪いのか、クロワッサンに夢中だったのかフィラの独り言が聞こえていなかった様なセレナ。


「おかえりなさいっ!」


 フィラがとても嬉しそうに出迎えたのは男性。

 セレナはその人を見るなり慌てて隠れる場所を探す。


(しら、え、しら、知らない!え、え…かく、隠れないと…)


 セレナがアワアワして、ソファの後ろに隠れる。


「今日は早いね。雨、濡れなかった?」

「いえ…申し訳ありませんがこれからまた出ます」

「あ、そうなんだ。お仕事?」

「えぇ。同僚が丘から川に落ちた…らしいです。それの調査を任されましてね…」

「へぇ…大変だね」


 セレナは声でやはり確信した。


 フィラが今、会話をしている人物はセレナの同僚マリノだということを。


 そして、会話の内容的にここに居るのがバレたら大変な事になると言うことも確信した。

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