↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星撃ちの魔術師  作者: 星宮 しずく
7章.雨の日の灯り
62/83

5.懐かしき人のようだ

前回の三秒あらすじ

同僚に凄い詰められました。

 セレナは未だに小さくなった状態でクロワッサンを食べている。目の前ではマリノがフィラの入れてきた珈琲を飲んでいる。


 傍から見れば変な状態だ。その変な状態を見ているのがフィラだった。


「…何この状態…。やっぱり泣かせたの?」

「泣かせておりませんから」

「むむ、怪しい」


 妻から疑いを掛けられているマリノを見るのはセレナにとっては新鮮だ。何時もはどちらかと言えばマリノが疑いを掛けているイメージがある。


「…そもそも、マリノ、セレナちゃんと知り合いなの?」

「…知り合いと言えば知り合いですが」


 セレナとマリノの関係を疑うのも納得の事だ。どこからどう見ても未成年のセレナが関わる大人といえば両親に教師くらいだと思っているフィラ。証拠はセレナが着ていた制服。フィラ自身も着ていた制服だ。現在は太陽が出てきた元でゆらゆらと干されている。

 フィラは、考えに考え抜いた末、とあることを思いついたようだ。


 ピコン、といい音が聞こえそうな表情をしている。


「新しい奥さん!」

「違います」


 その発言にセレナは凍りつき、マリノは即座に否定する。

 平民が貴族に嫁入りとか絶対に考えたくない事だ。それに、セレナ自身恋愛にも結婚にも興味は無い。


(なんでそんな考えなの…フィラさん…)


 セレナはフィラが入れてくれたココアを飲む。結局、紅茶は切らしていたようだ。「今から買ってくる!」と言っていたフィラを落ち着かせて出してもらったココアだ。まだ、暖かい。


「えぇ?お義父さんから言われているんでしょ?」

「あれは無視してください」

「むぅ」


 フィラは納得していない様子だ。


 王国は貴族に限り、一人の男性に複数の奥方を許している。いわゆる、一夫多妻制を採用しているのだ。

 奥方がいても愛人をつくる人も多い。好きでもない相手と結婚させられた貴族なら尚更だ。


「…じゃあ、どんな関係?愛人?…未成年を…?」

「誤解ですよ」


 フィラはドンドンと怪しい方向へ思考を巡らせているようだ。

 マリノがセレナに視線を向ける。どうにかしてこの誤解を解消しろ、と言われているような気がした。


(むむむ、むり、むりです…)


 ブンブン顔を振るもマリノは和かに微笑んでいるだけ。

 セレナは顔を青くする。


(どど、どうすればいいの…同僚、言った方いいの、でも、それだと…)


 セレナは自身の立場が曖昧な事を改めて認識する。学生であり、天八座の攻撃術筆頭。


 隠したくて隠しているが、ルナにはバレてしまっている。


(い、言うべき?言わないとしても、か、関係が分からなくなる…)


 フィラをセレナは見てみる。多分、口は固そうだ。多分。


「…そ、その……わたし、は」


 セレナはなるべく出来る綺麗な礼をする。一応同僚の奥様だ。今考えるととんでもない事をしていたが許して欲しい。


「わたしは、えっと、天八、座の、攻撃術筆頭、セレナ・リブロ…です」


 自ら名乗るのは二度目。一度目は全てを捨てる気で言ったため、こんなに片言にならなかった。

 今回、身分を明かした相手は同僚の配偶者。簡単に切り捨ているは不可能な、そんな関係だ。


(…どうしよう。見捨てられたら)


 セレナは捨てたくても捨てられない記憶を掠める。


 長時間とも言える時間をセレナは感じた。すると頭を撫でられる感覚になる。

 少し顔をあげるとフィラがセレナを撫でていた。


「そっか、そっかぁ。こんなに可愛い子に守って貰ってるのか…。もっと年相応に遊んでもいいんだよ?」


 セレナの予想とは180度違う反応をされ少し驚く。


『すごいじゃない!』

『さっすが俺の娘!』

『貴方、語学苦手でしょ?』

『……さすがセレナ!!!』



『えへへ、だってお父さんたちの娘だもん…えへへ』



 遠い、遠くて二度と見られない記憶。深い、深い場所にしまい込んでいた記憶に少し掠めたのか、思い出してしまった。

 セレナは、色々な感情が滲み、ポロポロと涙が溢れてきた。ゆっくりと頬を濡らしていく。


「…え、あ、な、泣かせちゃった⁉ど、どうしよう…。あ、ほら!虹!虹が見えるよ!」

「それで泣き止むのは幼い子供だけかと」

「いっつもは小さい子相手だもん。そういうなら泣き止ませて!」

「無理ですね。どちらかと言えば泣かせる側ですので」

「成長しなよ!」


 フィラは色々と文句らしきものを言いながらタオルでセレナの顔をふく。アワアワとしながら優しく拭いているがセレナは中々泣き止まない。


(…お母さん…お父さん…ごめんなさい。ごめんなさい…)

 

 少しするとセレナは泣き止んだ。しかし、泣き疲れたのかぼーっとしている。


「セレナちゃん…大丈夫?その、気に触ったかなごめんね」


 フィラは心底申し訳なさそうにしている。


「い、いえ。そっその、わたしが…悪いので……」


 まだ落ち着いていないのか、セレナはグスグスとした状態で答える。タオルを受け取り自分で顔をふく。


「その、ご、ご迷惑掛けて、すみません…」

「大丈夫!」

「で、でも…マリノさんの、お仕事増やして、すす、すみません」

「大丈夫!わたし、寂しくないもん!」


 フィラはドヤっとして手を胸元に持って行きドンとしている。一瞬、マリノが分かりやすく動揺していたように見えたが気のせいだろう。


「で、でも…」

「学生は沢山泣いて、勉強して、遊ぶのが仕事!だから心配しないで」


 セレナは一瞬それは違うのでは、と思ったが言わない事にした。マリノもそう思ったのだろう、頭を少し抱えているようだ。


「あ、ありがとう、ございます…」

「お礼をされる事は何もしてないよ」


 フィラはあいからわずホワッとしている。どこか安心感がある人だ。


(…なんとなく、マリノさんが惹かれた理由わかる気が…するような、しないような…)


 セレナがフィラを見ているとフィラは、パッとした表情でセレナの方を見る。


「まだ、お腹すいてる?欲しいなら作るよ」

「えっと……お願いします」


 少し恥ずかしそうにお願いするセレナに、涙はもう無かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。