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星撃ちの魔術師  作者: 星宮 しずく
6章.豪雨の中の雨
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3.誰ですか…こんな面倒なことした人は…

前回のあらすじ

人生初馬車、事件発生

 セレナがヴォルガーノの元に向かうと既に詠唱を唱えているようだった。

 内容は治癒術だ。

 地面に横たわっているのは帽子を被っている男性。多分、御者だろう。

 詠唱中に話しかけると精度が落ちるのでセレナはその間に状況確認をする。

 馬は生きているようだ。二体とも今は大人しくしている。雨に打たれても大人しくしているのは教育をしているからだろうか。

 御者には首元に謎の跡が残っていた。

 血が滲んでいる。

「動脈…」

 セレナの視線は御者の首元に固定されている。

 ヴォルガーノの詠唱によって傷が塞がった御者は安心した様な様子で眠りについている。

 セレナがホッとしているとヴォルガーノは肩に御者を担ぎセレナの方を向く。

「こいつ、馬車に戻すからお前街に行ってろ」

「え、いや、でも…」

「さっさと聞きやがれ。ちっ、リーナがいれば面倒な事しなくて良かったのに」

 ヴォルガーノのイラついた声にセレナは慌てて街の方向へ向かう。きっとヴォルガーノは直ぐに追いつくだろう。

 運動が苦手なセレナに追いつくのはきっと容易い。

 

 しばらく、セレナが走っていると街に出た。

 雨が強くなっているからか、人はほとんどいない。

「主、人いないな」

「うん…そもそも、なんでわたしここに連れて来られたんだろう」

「主、聞いておけよ」

「ぐうの音も出ない…」

 フードで雨宿りをしているユリは、セレナに正論を投げてくる。

「セレナお前…足おせぇな」

「ヴォルガーノさん…」

「竜は居ないな。早く丘に行くぞ」

「りゅ、竜?丘?な、なんの事ですか」

「早くしろノロマ」

「す、すみません…」

 ヴォルガーノは走って丘に向かう。セレナは慌ててついて行く。

 そして、冒頭に戻るのだ。

 

 ✿✿✿

 

「し、信じられない…なんでそんなに大事な事言わないんですか…」

「逆にお前知らないのかよ。本当に天八座か?」

「た、たまたまご、合格しただけなので降ろしてください!」

「あれでたまたま?俺らに喧嘩売ってんのかよ」

「売ってません…!」

 セレナは杖を持ち小さくなっている。

 数日前、一つの街が崩壊した。

 原因はアーシュダイスと言う種族の竜だ。別名、白水竜。

 そこまで強い訳では無いので国王は上級魔術師二人を送り込んだ。

 しかし、敗退。

 そこで急遽天八座が送られてきた…というのがセレナにされたヴォルガーノの説明だ。

「な、なんでそんな所にわた、わたしは…」

 セレナは顔を青くし丘から街を見ている。ヴォルガーノは丘から周辺を見渡している。

「その、上級魔術師の方、負けちゃったんですよね…?」

「そーだな」

「その、容態とかって…」

「一人は頭打って意識不明。もう一人は右足骨折。二人とも病院送りらしいぞ」

「ひぇ……」

 自身から聞いた事なのだがセレナは更に顔を青くする。仮に何も知らない一般人がセレナを見たら雨に濡れて寒いのか分からない。そのくらいセレナは弱気になっていた。

 しかし、ヴォルガーノの説明にセレナは違和感を覚えた。

「…街、崩壊したんですよね…?」

「それがどうした」

「じゃあ、ここに居るの、何故ですか」

「さすがだな。褒めてやってもいい」

「なんで上から目線…」

「俺が偉いからな!」

 ヴォルガーノは自身の胸にドンッと思いっきり手を当てる。セレナは杖を固く持ったまま呆れた様子で見ている。

 ユリはセレナがフードを被っているのでそこに避難している。本能的にだろうか。

「予告状だよ」

「…はぁ」

「嘘かもって思うだろ?本当に本部に来たんだよ。ご丁寧に全員の名前書いてな」

「全員…?」

「そうだ──お前の名前も書いてあった」

「⁉」

 セレナは、驚いた様子だ。

 それもそうだ。天八座の攻撃術筆頭の名は世間に公開していない。公爵家にも公開をしていない。極秘情報なのだ。

 セレナが筆頭と言うことは天八座の同僚と国王、セレナが自ら話したルナくらいしかいない。しかし、予告状とやらにはセレナの名がある。

「な、ななな、なんで…た、確かに書面に……」

「今はどうでもいいだろ。で、竜が来るってことを予告された」

「は、はい…」

「てことは、魔術師が飼ってんのか、作ったのか知らんが竜と手を組んでるって事だろ」

 ヴォルガーノは、今日の天気は土砂降りとでも言うようなトーンで話す。セレナはそれどころではない。

「てことで、ルーチェに任された。だが、面倒い。リーナに頼むと思ったら仕事。マリノに押し付けようとしたらあいつも書類。てことでお前な」

「そそそ、そんな事で…」

「あとは本職だろ?頑張れよ」

「た、他人事すぎます…」

 セレナが小さくなり、雨を感じているとユリがヴォルガーノにも聞こえない声の大きさでセレナに話しかける。

「主。百メートル先に大きい丸一。中くらいの丸五だ」

「…分かった」

 セレナは、覚悟を決めたようだ。

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