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星撃ちの魔術師  作者: 星宮 しずく
6章.豪雨の中の雨
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4.星を撃ち抜く魔術師、現る

「お、来たぞ。さぁ、思うようにやれ」

 ヴォルガーノはいつまで経っても他人事だ。しかし、杖を構えている。多分、竜をセレナに任せて魔術師はヴォルガーノ自身がどうにかするつもりなのだろう。

 白水竜が来た。

 中くらいの大きさで高いところを飛ぶので直ぐに街の崩壊が始まることは無い。しかし、名前の通り水を扱うのでほっとけば普通に街が落ちる。

「展開」

 セレナはいつもの術式陣を編み上げる。何時もならその後魔術詠唱。しかし、そうはいかなかった。

「ひぁ⁉」

 術式陣を編み上げたセレナの前に炎の弾が飛んでくる。驚いた為術式陣は解除された。

「な、な、な……」

「ちっ、先に魔術師だな」

 ヴォルガーノは、杖を構え出す。無駄にクルクルとやっているのは知らないふりをしておこう。

「セレナ。魔術師の位置把握しろ。こっちは詠唱に時間かかっから」

「な、なんでわたしが…」

「詠唱できねぇお前が出来るのなんて無詠唱使っての誘導だろ」

「うぅ……」

 ヴォルガーノはそれを言うとブツブツと詠唱を唱え始める。

 魂術は、魔術師にとっての生命と言える魔力を吸い取れる。魔力を無くせば魔術師はただの人間になる。

 しかし、魂術の欠点は詠唱に時間が掛かることだ。ヴォルガーノでさえ三分は時間が必要だ。セレナがやっても五分、下級魔術師がやれば二十分と言うところだろう。

「ゆ、ユリ…」

 セレナは極力小さな声でユリを呼ぶ。そうすればフードの中にいるユリがなんだ、と言ってくれる。

「魔術師の位置分かる?」

「主から見て左に人間。北北東に二人間。あとはユリには届かない」

「分かった」

 ユリは風の魔術が使える使い魔だ。しかし、もう一つ可能な事がある。それは、魔力検知だ。半径五十メートルいないなら魔力の大きさがわかる。すなわち、魔術師かどこにいるのか直ぐに理解できるという訳だ。

「無詠唱でいく。ユリ、何処かだけ言って」

「わかったぞ!」

 セレナは杖を左に向ける。

 そうすれば杖の先から光の矢が飛び出す。

(次は北北東。真ん中に集めるから左の人も同じ方向へ)

 セレナは光の矢をドンドン出現させ、放っていく。術式陣が無いのに、正確で美しい。

 魔術師の実力が一目で分かってしまう。

「主、今は真ん中だ」

「…あと三十秒」

 セレナは、三人の魔術師を囲い込むように水の檻を作り出す。水圧を高く組み込んだ為外には簡単に出られない。物理的な結界を編み上げた。

「ユリ、風」

「任せろ!」

 セレナは、魔術師を遠視魔術で見ていた。大慌ての様子。だが、セレナの感情はそれでは動かない。

 今代の攻撃術筆頭は、謎に包まれている。

 一つ言えるのは攻撃術筆頭、セレナ・リブロに敵と認識されたら終わりだという事だ。容赦なく叩きのめし、魔術を使われる。

 セレナの別名流星の魔術師。そして最近はまた別のものになってきた。

 今の彼女の別名は『星撃ちの魔術師』だ。

 リーナと共に仕事をした時が引き金だろう。星を撃ち抜いた魔術師として噂は独り歩きしている。

 現在、魔術師を集める彼女は虚空を見つめている。人間なんて視界に入っていない。

 逃げ回っている魔術師達はセレナにとってはただのチェスの駒だ。

「…後十秒」

 ユリの起こした竜巻とセレナの編み上げた水流の結界で魔術師達は足止めを食らっている。魔術を使って出ようとしているが竜巻に魔術が呑まれ、結界に弾き返されている。

「ふ、助かったぜセレナ」

 戦闘状態に入ったセレナはヴォルガーノをサラッと見る。ヴォルガーノは杖を魔術師三名に向けた。

「天八座魂術筆頭ヴォルガーノ・メディウムが告げる。生命の要『魔力』を鬼宿の元へ返せ」

 最後の詠唱を唱えれば魔術師達が使っていた魔術は一瞬にして消え失せる。魔術が使えなくなったことに動揺する者や、魔力が急激に消えた事でふらついているものもいる。

「あと二人はどこだ」

「把握不能です」

「くっそ、竜どうにかしろ。俺は……探しておく」

「分かりました」

 ヴォルガーノは丘の上に空間術を張っている。どうやら本格的に探すようだ。セレナは、杖を白水竜に向ける。

「主、こいつ強い」

「簡単だよ」

 セレナは、ローブの裾をはためかせながら雨に少し打たれつつも表情を崩さない。簡単、と言ったのは本心のようだ。

「展開」

 残りは魔術師二名と白水竜。邪魔が入らないと言うことは先程魔力を抜いた三人の中にセレナを邪魔していた人がいるのだろう。

「簡単なのか?」

「うん。だって、こうすればいい」

 セレナは術式陣を自身の目の前ではなく白水竜の頭の上に来るように編み上げる。複数個用意しているという事は、動かれてもいいようにということだろう。

「界雷」

 詠唱を唱えれば術式陣からは大きな雷の音が響き渡る。事前に民家の周辺には外部の音が遮断出来る結界を張っていた。

 民家に影響はさほど無いはずだ。

 白水竜は脳天に命中したのかゆっくりと落下する。

「夏嵐」

 白水竜が民家に落ちる前にセレナは、風を起こし白水竜を持ち上げる。そして、セレナが居る丘の上に置く。

 この竜は騎士団に送られるだろう。そして魔術師達もだ。

 雨の中、白水竜はただ気絶をしているだけだった。

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