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星撃ちの魔術師  作者: 星宮 しずく
6章.豪雨の中の雨
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2.死にそうな空気

前回のあらすじ

怖くガラの悪い同僚に巻き込まれました。

「なんでこんな事に……」

「主のせいだろ」

「だってぇ…」

 セレナは現在馬車に乗っている。ヴォルガーノの家の物のようだ。人生初めて乗る馬車は恐ろしい体験となっている。

 ユリをカウントしなければセレナはヴォルガーノと二人きりなのだ。密室で、距離が近く状態が既に三十分続いている。

「おい」

「ひゃ…はい……」

「お前、ローブと杖あるか」

「い、一応…」

 そう言いながらセレナは鞄から小さくしているローブと杖を取り出す。前回から学びセレナはちゃんと鞄に入れるということを学んだ。

(…リーナさん怖かったな…)

 以前はリーナに大変な迷惑をかけたセレナ。

『小さくして常に持っときなよ?面倒とか言い訳いらないから。分かった?分かったよね?理解、してくれたよね?』

 リーナにしては珍しく怒っていたのだ。ただ、自身の使い魔をローブ探しに当てられたイライラしていただけかもしれないが。

「これ、見ておけ」

「…?これは?」

「街の地図だ。それ、頭に入れておけ」

「……スーマリ街?」

「ズベコべ言わずに入れておけ?」

「は、はい…」

 セレナは大人しく地図に視線を落とす。

 どうやらスーマリ街は川に囲まれている街の様だ。

(小島みたい…川と滝で隣町と区切られてる。あ、本屋)

 セレナは本屋を見つけてキラキラしている。ユリもセレナの頭から地図を見ているようだ。

「主、川」

「川だね」

 地図を指でなぞりながら地形を覚えていくセレナ。ヴォルガーノはそれを見ていた。

「…お前、地形は覚えられるくせに世界史と科学ダメなのかよ」

「ひぇ⁉な、なんでそれ…」

「聞こえてたからな!」

「うぅ…」

 セレナは恥ずかしさのあまり身を小さくする。椅子の上で丸まっている。

「で?評価はなんだよ」

「……二です」

「は?いいじゃんか」

「…え?」

 その言葉にセレナは顔をあげる。

 ヴォルガーノは椅子に寄りかかって外を見ているようだ。

「俺なんて一だ一。チェーザレには怒られたし、ルーチェにも怒られたな!」

「…そ、そんなに堂々と…」

「チェーザレには語学見てもらったし、ルーチェには歴史、マリノには数学、リーナには法学、ペルットには科学診てもらったな!」

「ま、巻き込みすぎでは…」

 しかし、どこか堂々としているヴォルガーノを見て少しセレナは安心した。

(…そういえば、皆さんの学生時代の話聞いた事ないかも…)

 ユリが、ヴォルガーノにちょっと喧嘩を売っている様子を見ながらセレナはふとそう感じた。

 しばらくしていると雨音が聞こえてきた。

「…雨か」

「そうですね…」

 元々曇っていたので予想はしていたがパラパラと雨が降ってきた。それは、ドンドンと勢いを増していく。

「……これ、大丈夫ですか…?」

「馬車は壊れねぇよ」

「す、すみません…」

 セレナは縮こまる。ユリは外を見てどこかしょげているようだ。多分、外に迎えないからだろう。

 蝶は雨の日でも飛べるが、基本は雨宿りをどこかでしている。ユリも例外ではないのだ。外に出るのが大好きなユリだが、雨の日は大人しく自宅にいることが多い。

「ユリ…外行けないぞ…」

「…そうだね」

「あるじー、外…行きたい」

「…自分で飛べるならいいんじゃない?」

「あるじ…お願いだ」

 セレナはユリの方を見ないで地図を見ている。

 心底興味が無いようだ。

「はんっ、弱っちいなユリシス」

「ユリは弱くないぞ!」

「俺に勝ってみてから言いやがれ」

「ガチャガチャに勝つからな!」

 薄々勘づいてはいたが、ユリとヴォルガーノは相性が悪いらしい。会えば直ぐにヴォルガーノがユリを挑発し、ユリもそれに乗ってしまう。

「ゆ、ユリ…落ち着いて、ヴォルガーノさんも、ユリの事煽らないでください…」

「煽ってねぇよ」

 ヴォルガーノは不貞腐れたのか窓の外に視線を向けた。

 セレナはアワアワしながらユリの方を向く。敵意剥き出しだ。

(うぅ…なんでこんな空間にいるの…誰か変わってよぉ…)

 心の中でセレナは泣いていた。

 セレナがメソメソしていると馬車が急に止まった。馬の声もする。

 馬車の反動でセレナは飛び上がった。

「ひぇ⁉」

「おい、どうした!」

 ヴォルガーノは御者に声を掛ける。

 しかし、返答は無い。

「おい⁉…ちっ」

 ヴォルガーノは扉を荒っぽく開けて馬の方を見に行く。セレナは馬車に残ったままだ。開けっ放しの扉から外を見てみる。

 山道の様だ。

(山道…スーマリ街は山中にあるとは聞いたけど…この辺は木だらけ。多分…街の門すら通ってない)

 しばらくするとヴォルガーノの大きな声が聞こえる。

「セレナ!ローブ着てさっさと来い!」

「え?」

「急げ!」

「は、はい!」

 セレナは雨で緩くなった地面に足を下ろした。

 そして、声のする方へローブを着ながら向かう。ユリはちゃっかりフードの中にいるようだ。

(なに…、何があるの…)

 雨はドンドン強くなった。

 

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