3.秘密
前回のあらすじ
差をしみじみ感じました
ユキナはセレナの部屋を見ている。絵本探しのようだ。セレナはそれを後ろからついて回っている。
「セレナおねーちゃんのえほんはユキナみたことない!」
「それはそうだよ…」
セレナとユキナは約十歳の差がある。読む絵本も違うのも当たり前だ。しかし、ユキナはキラキラとした目で本棚を見ている。
絵本なのか、書籍なのかユキナには分からないはずだが直感で当てている。三冊は当てた。
セレナの自宅には絵本は三冊しか無い。
これで終わりのはずなのだが、ユキナはまだ探している。
「も、もう無いですよ…」
「あるもん!」
「な、無いです」
「あるもん‼」
家の主、セレナが言っているにも関わらずユキナは本棚を見ている。
(わ、わがまま…やっぱり…いい子では無いかも…)
いくら年下と言っても失礼な事を思うセレナ。そんな中、ユキナは一つの本に興味を持ったようだ。
指を指しているのは古い本。セレナの自宅にある本はほぼ全て綺麗だ。しかし、この本だけは何度も、何度も繰り返し読まれた形跡がある。
「そ、それは…」
「おねーちゃん!これ!なぁに?」
セレナは少し葛藤した後、人差し指を口元に当てる。
「えっと…秘密です」
「ひみつ?」
「わたしの、大切な本です」
「たいせつ…?」
「はい。二度と手に入らない、大事なものです」
セレナの念押しと意志を感じ取ったのかユキナは大人しく別の所を探す。セレナはユキナの指を指していた本を見つめる。
同じ作者、同じ題名に一、二、三、と巻数名。出版は二十年前に止まっている。
(……年が流れてるな)
一つ指で表紙をなぞりユキナの方を見る。
ユキナは今、本よりも花に興味があるようだ。
「おねーちゃん!おはなさん!なんてなまえ?」
「え⁉えっと……」
セレナはユキナから視線を逸らす。生憎、花の名前に精通している訳では無い。むしろ分からないとまで言える。
(な、なんだっけ…ユリから頼まれたやつ…ぽ、ポインセチアってやつ?)
セレナはこれだ、と思いユキナの方を見る。ユキナはキラキラと期待した視線をセレナに送っている。
「そ、その…ポインセチア…かな?」
「………?」
「え、だから、その…」
「…むずかしい」
ユキナは興味をなくしたのか窓から外を眺める。子供とは気まぐれだ。
セレナは椅子に座ってユキナを見ている。
(…貴族の子にしては利口で大人しい…?なんか、わたしの同級生と違う)
セレナの同級生といえば、地位を振りかざし貴族だ!、と平民のセレナによく言っている。お陰でセレナは、常に雑用係をやらされるのだ。別にセレナは人がいないければ魔術で終わらせるので苦労はしていないが。
(貴族のイメージってわがままで怖いと思ってたけど…もしかして違う?)
セレナは自身の貴族のイメージについて疑問を抱き始める。もちろん、地位を振り回さない人もいる。
そんなことを考えているとユキナが突如窓から身を出した。
「おとーさん!」
「お父さん…⁉」
セレナが慌てて外を見る。人通りが多い。
しかし、見た事がある背丈と顔の人がいた。
(ま、まさか……)
セレナが顔を真っ青にしているとユキナは体重を窓枠にさらに体重をかける。
「おとーさん!おとーさん!」
ユキナは片手に手を窓枠にかけ、もう片手を振る。顔は明るい。
「!危ない」
「え?」
ユキナはセレナの方を振り向いた。するとバランスを崩し、窓から落ちる。
「青嵐」
セレナは慌てて指を外に向け風を巻き起こす。ユキナは風に乗りセレナの自宅に戻ってくる。
ヘタリ、とユキナは床に座り込んでいる。何が起こったか理解してないようだ。
(や、やっちゃった………ど、どうしよう…何か言われたらわたし…死ぬ…)
貴族の怪我を防いだ事よりも魔術を使ってしまったことにセレナは慌てている。
「おねーちゃん、すごいね!まほうつかいみたい!」
「ま、魔法使い?」
「うん!」
「えっと…魔法使いは居ないよ?」
「でも!魔法使い見たい!」
「…初めて言われた」
セレナの知識の中では魔法使いは存在しない。
いるのは魔術師。術を組み上げ、魔力を注ぎ込み想像通りに完成させるものだ。
魔術師の女性を魔女と言うことはあるが、魔法使いはいないと言われている。ゼロから奇跡は生み出せないと言うのが国の見解だ。
(……魔法使いか、変な感じだな…)
セレナが魔術師と魔法使いについて考えているとユキナは窓枠から手を振っている。今度は体重はかけていないようだ。
「おとーさん!ユキナだよ!」
ユキナがそう声を掛けていると父親らしき人が寄ってくる。
「おねーちゃん!おとーさんきた!!」
「…え、え⁉」
慌てて外を見る。確かに男性が寄ってきている。
セレナは身を隠す様に隅による。
「おねーちゃんなにしてるの?」
「か、隠れてる…」
「かくれんぼ?」
「…違うけど…そう」
「ふーん、あ、おとーさん!」
ユキナが手を振る先は、体格が非常に良い男性だった。




