2.貴族と平民
前回のあらすじ
誘拐犯(?)になりかけてる
「えつと、ここが、わたしの家…だよ」
セレナが鍵を回し扉を開ける。ユキナはおじゃましまーす、と一声かけてから上がる。きっと出来た家庭の子なんだなと思いながらセレナは窓を開ける。
決して密室に連れ込んだ訳では無いと証明したい訳では無い。
「…おねーちゃんのおうち。せまいね」
「そ、そうかな…」
「うん、なんか、ユキナのおうちよりせまい」
真っ直ぐに伝えられるものはやはりセレナに、ダメージを与える。いつもは遠回しで詰め寄られるか勢いで詰め寄られるかの二択しか存在しないので新鮮でもある。
しかし、やはりグサッと刺さったセレナだ。
(こここ、子供…怖い…何この子…怖い、)
年下の、それも随分と歳が離れている女の子に恐怖を抱くのはセレナくらいだろう。人馴れしていないのがよくわかる。
「…おねーちゃん、おへや、えほんだらけだね」
「え、絵本じゃないよ…」
「…?」
「絵本って言うのはね、絵が主体となっている本の事なの。まだ文字が読めない子供でも分かりやすいストーリーを届ける為に他の書籍には無い絵に主点を当てているの!更にね!」
「…?」
セレナは本棚から絵本を取り出して絵本の定義について話し始める。ユキナは絵本の定義よりもセレナの持つ絵本に興味があるようだ。
キラキラとした目で見ている。
「おねーちゃん!」
「な、なぁに?」
「そのえほんかして!」
「…これ?」
「うん!ユキナよんだことない!」
「えっと………、こ、壊さないでね…大事なの」
「わかった!」
セレナはゆっくりとユキナに絵本を渡す。ユキナは、床に座って絵本を開き始める。
「主」
ユキナが夢中で絵本の絵を見ている時、ユリはコソコソっとセレナに話しかけてきた。ドキッとし、ユキナを見たセレナだったが気づいていないようだ。
「…なに」
「あれ、だれだ」
「……分からない…ユキナさん、らしいよ」
「ゆきな?だれだ」
「だから分からないんだって…」
ふーん、とユリは興味無さそうだ。セレナはハラハラと絵本とユキナを見守っている。特にユキナが絵本のページを捲る時はアワアワしている。
「そんなに心配か?」
「う、うん…古いものだから劣化してて…」
「れっか?」
「壊れやすいの…」
「主そんなの大事なんだな」
「…うん」
ユリとセレナがユキナを見ているとユキナは満足したのかセレナに返す。
「おねーちゃんありがとう」
「えっと、はい」
返された本をセレナは確認する。何も汚れても傷も付いていない。
(良かった…もしかしていい子な子かも…)
ホッとしているセレナはそのままお茶を入れる。一応客人だ。何も出さない訳にはいかない。セレナはユキナに椅子に座ってていいよ、と声をかけて台所へ行く。
全く使わないので綺麗だ。そこからティーカップを取りだしお茶を入れる。子供は何が好きなのか分からないのでとりあえずお茶だ。
セレナがユキナの元にお茶を持っていく。
「は、はい…どうぞ」
「おちゃ?」
「お茶です…」
「ありがとう!」
ユキナはキラッキラした笑顔でティーカップを持つ。
(綺麗な持ち方…確かルナもこんな感じだったな…)
ユキナを見て思い出したのはルナだ。貴族の娘として育てられているルナはやはり行動も仕草も綺麗だ。
ティーカップの持ち方が、ルナと似ていると感じたのだ。
(多分…お貴族様の娘さん…勝手に連れてきちゃった…誘拐になるのかな…どうしよう)
ユキナの一言でセレナの人生は変わってしまうのだ。
仮にユキナが、勝手に連れてこられた、なとど言えばセレナは騎士団に突き出される。誤解と分かっても次は同僚達に何を言われるかだ。『えぇ?騎士団に突き出されたの…信じらんない』とリーナに言われるところまで見えてしまったセレナは、小さくなる。
(…間違っても誘拐されたなんて言わないでね…)
お茶を飲んでいるユキナを見ながら願う。
そんな心配と裏腹にユキナは、キョロキョロと部屋を見渡す。
ユキナにとっては未知数なのだろう。
「おねーちゃんひとりでここにいるの?」
「ひ、ひとりというか…なんというか…」
セレナは少し誤魔化す。実際はユリと住んでいるのだが、蝶々と住んでると言えば変人だ。セレナはなるべく一般人と思われたいので変なことは言いたくないのだ。
しかし、セレナは間違いなく変人だ。
「ふーん。ユキナはね、おとーさんと、おかーさんと、めいどさん達と、ひつじさん達とすんでる!」
「お、多いね…」
ひつじ、と言われて一瞬モコモコの方をイメージしたが多分、執事だろう。
(達…だからかなり居そう…か、階級上?順番なんだっけ…公爵、男爵、侯爵、子爵、伯爵……だっけ)
貴族階級の順番は、男爵、子爵、伯爵、侯爵、公爵だ。
貴族に疎いセレナが貴族階級をまともに覚えているはずがない。
「あとね、おうまさんもいるの!ばしゃ?ってやつもある!」
「馬車…」
馬車は貴族しか使えない品物だ。馬の管理費もバカにならない。馬の管理にかかる費用は金貨二枚分だ。セレナの住むミラ街なら一戸建てが買える。
(ひ、ひぇ…お金持ち…)
ユキナが呑気に言いながらお茶を飲んでいる。これが貴族と平民の差だと痛感しながらセレナもお茶を飲む




