3.お宅訪問。実験台になる。
前回のあらすじ
研究大好き人間に火をつけました。
「えっと、ペルットさん、その、どこに行くのですか…」
「そーだそーだ。白衣。どこ行くんだ」
「君たちは黙ってついてきなさい」
ペルットは意気揚々と王都の街を歩いていく。白衣を着ているのでなかなか目立つ。セレナは少し怯えながらペルットについて行っている。
ちなみに『白衣』とはユリがペルットにつけているあだ名だ。毎日白衣を着ているから、らしい。正直セレナは怒られ無ければなんでもいいのだ。
(…こっち、お貴族様の屋敷がある所)
街にはもちろん優劣と言うものが存在する。貴族は立地のよく広い土地に屋敷を構えている。反対にセレナの様な平民はタウンハウスの一室に住む人が多い。一軒家は王都付近では見ない。見るとしても、もっと離れている。
「主。この辺魔力大きいな」
「…お貴族様多いから…。魔術師のほとんどがお貴族様だからね」
ユリにはちょっとした特技もある。半径五十メートル居ないの魔力探知が出来るのだ。最も距離が遠くなるにつれ精度は落ちる。
「さてさて、これをどうするものか…楽しみだなぁ」
ペルットの少し恐ろしい言葉を無視し、セレナは貴族街を見ている。やはり大きい屋敷だ。馬車も待機させてたりする。
「さて、ついたぞ」
ペルットの言葉に顔を上げる。屋敷だ。
「えっと、ここは…」
セレナの問いを無視しペルットは進む。慌ててセレナも追いかける。
ペルットは屋敷を開け、慣れた手つきで地下に向かう階段を降りていく。セレナは、急な階段を簡単に降りれるはずが無い。その為ソロリ、ソロリとゆっくり降りていく。
降りた先にあったのは広い研究室だ。ビーカーや謎の液体がある。
「…ここは…?」
「は?ワタシの屋敷だ」
「ペルットさんのお屋敷……」
セレナは知らずのうちに貴族の屋敷に入ってしまっていた。
ペルットは全く気にせずに床にある物を器用に避けて大きな机に向かう。
「何をしている。早く来い」
「こここ、ここを…」
「主。いつもやってるだろ」
「違うから…こんなに散らかしてない…」
セレナの部屋は確かに散らかっている。現在は床も書類の山が少しづつ積み上がっているのだ。一方、ペルットの研究室はどうだろうか。こちらも散らかっている。セレナの部屋の何倍も物で溢れかえっているのだ。
セレナの部屋を片付けが出来ない人の部屋というのなら、ペルットの部屋は全てを研究に捧げている部屋だ。
「おぉ⁉見つけたぞ」
唐突に大きな声を出したペルットにセレナは少し飛び上がる。ペルットの方を見れば何やら怪しい道具を持ってこちらに来ているではないか。
セレナは反射的に後ろに下がる。
「や…やです…来ないでください…」
「何故下がる。いいだろう?後は君さえあればワタシの仮説は完璧に……」
ジリジリと下がるセレナとそれを追いかけるペルット。危ない言葉と表情をしているペルットにセレナは半泣き状態になる。
「白衣!主をいじめるな!」
「ハッハッハ。ユリシス蝶君。虐めてなどいない。逃げる実験台を追いかけてるだけだ」
「じ、じじ、実験台では、ななな、ないです!」
ペルットは不気味な笑みを浮かべセレナを追い詰めた。
「さぁ、ワタシのいい実験台になってくれ」
「いいい、いやです‼」
「なに、悪くはしないさ。ただちょっと使わせてもらうだけだ」
「そそそ、それ、それが怖いんです!」
✿✿✿
ディフィチーレ邸の庭にセレナは座り込みんでいた。肩にはユリが止まっている。
「うぅ…なんでこんなことに…」
「断れば良かっただろ」
「だ、だってぇ…ど、どうせ追いかけられるし…」
「主が逃げればいいだろ」
「け、結界のす、スペシャリストだよ…?ま、魔術弾き返されるもん…逃げ場無くなるもん…」
そんな会話をしている目の前でペルットは実に楽しそうに笑いながら鍋を掻き回している。魔女だ。正確には魔術師と言うべきだろう。ペルットは髪の毛は長めだが正真正銘男の人だ。しかし、どこからどう見ても怪しい魔女にしか見えない
「……なんか笑ってるぞ」
「……やだぁ」
セレナは蹲り隅の方に寄る。
ペルットは何かが完成したのかセレナの方を勢いよく向く。好奇心を隠しきれない子供のようにも見える。
「セレナ君!さぁ、これに魔術を使ってみたまえ」
「…へ?」
「あ、炎で頼む。最大火力を使いたまえ!」
「…へ、あの、な、なんで」
「使いたまえ‼」
「わ、わかりました」
ペルットの押しに押されまくりセレナは大人しく立ち上がる。少しビクビクとしながら鍋付近に向かった。
「…主、甘い匂い」
「ま、また?」
「甘い匂いするぞ」
ユリの独り言は無視し、セレナは息をゆっくりと吐く。ここで失敗すれば永遠とこの事を愚痴られるだろう。前科がある為セレナはもう後には引けないのだ。
「て、展開」
手のひらを鍋に向けて魔術陣を出す。一点集中の為だろうか。いつもよりもふた周り程小さい術式陣が展開される。
もう一度セレナは深呼吸をする。深く息を吸い、吐く。左手は胸元をキツく閉めている。
息を吐き出したセレナは指を変える。全て開いていたのから人差し指を鍋の方に指す。
「…外炎」
次の瞬間。鍋の中身は思いっきり燃え始めた。鍋は燃えずに中身のみが炎を纏う。ユリはほわー、と眺めている。ペルットは満足そうに目を輝かせ、何かを書いている。
「よい!素晴らしい‼セレナ君!一度止めてみろ‼」
「…え、あ…はい」
セレナは言われた通りに魔術を解除した。中身は蒸発し、無くなったはずだった。
「……あれ?」
しかし、セレナの予想とは反対に中身は何事もない状態だった。




