1.不法では無いです。公認です。
前回のあらすじ
色々燃えました。
例の事件が発生してから一週間経った。
国王陛下は事件を公表せず、新聞社にも口止めをしていた。当分は出回る事は無いだろう。その当事者、セレナは死にそうな顔で王宮に向かっている。
「……むり……王宮…やだ…」
「何言ってんだ主」
使い魔のユリはセレナとは反対に何も分かっておらず呑気に飛び回っている。
「だ、だって…この姿、見られたら……わたし死ぬ…」
現在、セレナは学園の制服を纏っている。白色のブラウスに紺色のベスト、紺色のスカートが学園の制服だ。紺色は高貴な証…らしい。多くの貴族が通う魔術学園なら採用していても可笑しくない色だ。
そして、現に紺色の制服を採用しているのは魔術学園だけだ。こんな姿で王宮に出入りしているところを見られれば最後。翌日には教師や生徒達から質問攻めにされる未来しか見えない。
「主は大変だなー」
やはりユリは理解していないようだ。
そうしていると王宮が見えてきた。外壁は高い。王宮のシンボル二つの塔も見えている。
王宮には三つの主な区画がある。
一つ目は、国王陛下や王子、妃、姫君達が暮らす王宮本館。
二つ目は、騎士団の本拠地。
三つ目は、王宮役所と天八座本部を兼ねた行政棟だ。
セレナは天八座本部に向かっている最中だ。ここ一週間、学園から本部へ往復を繰り返している。理由は至って簡単。セレナが当事者だからだ。
王宮役所に近づくにつれ人も少しづつ増えていく。王宮役所は商売届けや婚姻届け、出産届け等を出す場所でもある。その為、行政棟は常に人で溢れているのだ。
そこにセレナは向かう。
(むりむり……人多い……)
いつもの如くセレナは行政棟の前までは来れても中に踏み込めない。天八座本部は王宮役所の二階にある。二階に行くには王宮役所にある階段を使わなければいけないのだ。
しかし、人が多い王宮役所にセレナが行けるはずが無い。
「主、どうするんだ?いつものやつか?」
「う、うん…いつもの、道で行く…」
セレナはユリの質問に答えた後、王宮役所を通り過ぎ裏側に来た。人は居ない。草むらが生い茂って、若葉が日光を遮っている。初夏の風も通り過ぎる、中々良い休憩場所だとセレナは思っている。
(いない…よね)
セレナはキョロキョロ周りを見渡す。やはり周りに人は居ない。
そして、セレナは上を見上げる。二階は窓が空いている。
(良かった)
セレナは、人差し指を立て草むらに向ける。
「薫風」
魔術を行使するとフワリと足元から風が巻き起こった。
「うっ……」
何度もセレナは薫風を使っているが中々慣れない。空中でバランスを取るのは難しいのだ。
窓付近に近づくと魔術を解いたセレナ。窓枠に腰を下ろすことに成功した。
(良かった……落ちなかった…)
前に一度落ちた時にはひどい目にあっているセレナ。しかし、それにも関わらずセレナはこの方法で常に窓から侵入している。
窓から入った先は資料室だった。棚がいつの間にか綺麗になっている。セレナは資料に吸い寄せられる様に歩いていく。
(水質調査結果に、地盤調査…法律改定の没案…)
綺麗な資料棚から資料を取り出しキラキラと目を輝かせて見ている。ユリは資料室内をグルグルと回っている。
「主、面白いか?」
「うん、凄く面白い…」
「ふーん」
ユリは興味が無さそうだ。セレナはユリは視界に入っていないのか資料に釘付けだ。
「これ、これなんだ?」
ユリは、壁にかけられている文字盤の付近にいた。セレナは顔を上げその方向を見る。
「それは、時計……その、ポーンって鳴るの」
「あれか?毎日ボーン‼って遠くから聞こえるやつか?」
「えっと…あれは時計台の音で…これはその、小さくしたもの…」
「そうなのか!」
ユリは疑問が解消されて嬉しいのかクルクルと大きく資料室を回る。
(…五時過ぎ、もう、行かないとか…)
セレナは肩を落とし資料を棚に戻した。少し名残惜しそうにしている。
「ユリ、行こ」
「分かったぞ!」
ユリの元気な返事に後を押されセレナは資料室の扉を開けた。
開けると廊下が続いている。人々の声が静かに響いている。王宮役所は夜七時までやっている。まだまだお客さんは来るだろう。セレナは人が居ないにも関わらずビクビクと廊下を進んでいく。
「主、もっとどーどーとしてたらどうだ?強いだろ」
「堂々となんて…無理だよ…」
ユリと会話をしながら進む。そうしていると後ろから気配がした。セレナは反射的に魔術行使の準備を初める。
背後の相手との距離が分からず、迂闊に魔術も使えない。
突然、肩をポンと叩かれたのだ。
ぴゃっとセレナは跳ね上がった。ユリには不思議がられたがセレナはそれを無視し、ブリキ人形の様に後ろを振り返った。
「りりり、リーナさん…」
「いや、リリリ・リーナって…。貴族でリーナの姓を持つ人いないから」
セレナの背後を取っていたのは空間術筆頭、リーナ・アグレリア。一週間前の時にセレナを、強制的に任務に同行させた張本人だ。今日も今日とて真っ赤なヒールを履き、短い短パンを履いている。
「一週間毎日来ているんだね。引きこもりのセレナちゃんが」
「べ、べべ別にしたくてやってる訳ではなくて…その、お、お家の方が色々出来ていいんです!」
「あはは、生粋のインドアちゃんは堅物だな」
リーナはセレナで完全に遊んでいる。生真面目にセレナはそれに返す。そうして過ごしているとリーナは思い出したかのようにクルクルと指を回し一枚の紙を手に出す。きっと空間術を使ったのだろう。
「はい、これ例の」
「……?なんでしたっけ…」
「は?あれだよ。窓にあったメッセージカード。炙り式?だったのかな蝋燭でなら燃えた」
「…ありがとう、ございます」
セレナは、リーナから受け取ったメッセージカードの内容を見る。
『美しいものは隠すべきだ。あの流星のように』
「主。これユリ知ってるぞ。ポエムってやつだろ‼」
「………詩かな」
ユリの発言に辺りは少し凍り付いた。




