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星撃ちの魔術師  作者: 星宮 しずく
3章 若葉のざわめき
32/56

7.隠した顔、見えない様子

前回のあらすじ

リーナにまた、怒られました。

 セレナのローブにはリーナから貰ったベネチアンマスクがある。

(こんなの着けたら絶対に目立つ…)

 セレナは天秤に掛けた。目立つ事と犯人を捕まえる事。

「理不尽だよぉ」

 そういいながらセレナは結局自らを隠す事にした。

「主似合うぞ」

「なんにも言わないで…」

 セレナはフードも深く被り、思いっきり深呼吸をし、杖から飛び降りた。

「あの方が攻撃術筆頭様…?」

「身長が低い…」

「容姿を隠しておられる。あの身長だと女性…?」

「いや、最近は背の低い男性もいる。確信は出来ない」

 地に降り経てば民衆からは好奇心の視線を向けられた。今まで絶対に人前に降りなかったからだろう。セレナは過去最大に注目をされていた。

(無理無理…線を引いて…ゆっくり描く…そうすれば分からない…)

 セレナは心の中で必死に正常を保とうとおまじないを掛けていた。

「はいはーい。ここは今から立ち入り禁止でーす。魔術法違反者がいるので取り締まってまーす」

 リーナはよく通る声で対応をしている。それでも野次馬は止まらない。いつの間にリークしてきたのか記者もいる。

 セレナはリーナに視線を向ける。

 リーナからは行ってという視線を向けられたのだ。

「主、どうするんだ?さっきユリが突撃したが開かなかったぞ」

 ユリはセレナの肩に止まり囁く。ユリの言う突撃、とはただドアに体当たりしただけだろう。蝶なので体当たりかも怪しい。その間も野次馬の視線はセレナとリーナに集中している。

「…展開」

 セレナは極力小さな声で術式陣出現の詠唱を唱える。術式陣は家のドアの前に繰り広げられた。おぉと、民衆の声が上がる。

「花筏」

 その次の瞬間、家を覆い隠すようにバラやツツジ、ネモフィラ、すずらん等に咲く花の花弁が広がった。記者からも野次馬からも視線を向けられないようにし、花弁でドアを切り裂いていく。

 美しさは時に凶器にもなるのだ。


「だ、誰だ!」

 中にいたのは二人の女と一人の男。逃げるつもりだったのか、部屋は散乱しているのに鞄はコトンと置かれている。セレナは散乱している部屋を歩いた。

「何をしているの!か、勝手に入ってくるとか意味わかんない!」

 女の悲鳴が聞こえているが気にしない。セレナはとある地点で足を止めた。床に落ちていた物を拾い上げた。

「これはなんですか?」

 顔を上げたセレナを見て、三人はどこか驚いた様な、衝撃を受けたような顔をしていた。しかし、セレナは別の所で確信を持った。

「マッチ箱五十箱に油六缶、街を燃やすには十分ですね」

 燃やす、と言う言葉にドキッとしたのか一瞬三人は挙動不審になった。

(こんな感じの、ひと月前にもやったな…)

 サラッと思い出すのは春の初めの出来事。

 この間は学園創立いらいの天才が書いた論文を盗み、金儲けしようとしていた人の行いだった。倉庫は大爆発。爆発の原因はユリだった。

 あれはすでに処理済みの案件だ。

 しかし、今回は違う。セレナはとある紙を3人の前に突きつけた。

「魔術法違反。これよりわたしと騎士団に向かってもらいます」

 セレナが突きつけたのは騎士団及び、国王がサインしたものだ。いつの間に書いてもらっていたのかは知らないが、持っててと別れる前に渡されたものだ。

 どうやら、今回は魔術法違反として取り扱う様だ。上手くいけば放火未遂も追加されるだろう。

「はぁ、きし、騎士団⁉ふざけないで!人を勝手に犯罪者呼ばわりして!」

「証拠あるの!?勝手に入ってきて!人を犯罪者みたいに──」

 二人の男女は共に叫んでいた。一人は腰を抜かしてる。

「犯罪者です」

 セレナはバッサリと切り捨てた。反論の余地もないようだ。

「マッチ箱五十箱。油六缶。避難経路の地図。夜間巡回の時間が書かれた紙…これでも街を燃やすつもりではなかった、と?」

 セレナは自分は圧力を出せないと思っている節がある。しかし、それでも十分だ。天八座には確かに圧力が強く有無を言わせない人が何人かいる。その人達よりはセレナは圧がかけられない。だが、一人の少女が出すには十分だった。

「俺達は……俺達はただ……」

「ただ?」

「……脅されて……」

 一人の男は言った後に口を塞いだ。思わず、という反応だ。

「誰にですか…?」

 にわかには信じられないがセレナは恐る恐る問いかける。

「嫌だ…来ないで!いや…いやだ!」

 三人はそれぞれ悲鳴を叫び始めた。足をジタバタさせ、苦しそうにしている。セレナは何もしていない。

「お、落ち着いてください!聞こえますか」

 セレナは慌てて三人に近寄る。

「嫌だ!嫌だ嫌だ…」

 三人はその後意識を落とした。セレナは息を確認する。呼吸はしていた。

(精神…感応術。いや、幻創…魂術…?分からない…。この三人の誰かが使ってるのじゃないの…?)

 セレナの予想はデュース・リンドンが主犯としての放火未遂だったのだが、どうも違うようだ。セレナは荷物の中の山を少し触る。

(身分証……魔術師なら資格ナンバーあるはず…)

 荷物は沢山あるが、セレナにとってはなんて事ない。常に書類の海に住んでいる様な場所で暮らしているのだ。

「あった…」

 手に持ったのは三人の身分証。どうやら魔術師では無いようだ。

(…やっぱり雇われたのかな。高額なお金でも渡されたのかな)

 セレナが少し考えてると少し空気が揺れた。魔術反応だった。

 セレナは条件反射で術式陣を構える。セレナの目の前には意識を失ってる三人しかいない。三人は魔術師では無い。一体誰なのか。セレナが考えながら構えてると、手の中が熱くなった。

「ひぇっ!」

 思わず手の中にあった三人の身分証を手放す。床に転がり落ちた身分証は火の海に消えた。

(うそ…でしょ…)

 セレナは手を胸元にきつく閉める。

(魔術…どこから使われたの)

 その疑問は解消されなかった。

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