6.真剣な話
前回のあらすじ
炎の海を作りました。
セレナの下には自ら燃やした街がある。そして、ユリによって作り上げられた竜巻も存在している。
(十箇所…多いな…これから増える可能性もあるからざっと十五箇所)
セレナは遠視魔術を自らに掛け竜巻の発生している家を見渡す。燃えない火を使ったので家に火はついていないが、一見すれば燃えているように見える。
そんな魔術をセレナは使ったのだ。
(あ、リーナさん)
セレナが視界の端で見つけたのはリーナだった。混乱の中心から少し外れた場所で人々を落ち着かせるように手を動かし、声を張り上げているた。状況を瞬時に理解し、避難の誘導と制止を同時に行っている。
「主!全部終わらせてきたぞ!」
「ありがとう」
ユリはふら、ふら、ふらりと一仕事終えセレナの元に戻ってきた。声はとても元気だ。
「人が戻ってきた所の竜巻は消していって」
「わかったぞ!」
ユリはヒラヒラとまた、街の中へ戻る。
いつもの様に街を観察しに行くような軽さだった。
✿✿✿
「セレナちゃん!」
セレナが、竜巻の位置を確認していると足元から人の声がした。リーナだった。人を宥めたあとセレナの姿を見つけたのだろう。セレナと同じように杖を箒として使っている。避難誘導後すぐに来たからか、息切れをしている。
「リーナさん」
「何したの」
リーナの声色と顔色はとても真剣だ。セレナはリーナの方を見ずに街を見ている。
「炎をつけました」
セレナは淡々と答えた。今日の天気は何?晴れだよ。完全にそんなノリだった。
「信じられない。いくらセレナちゃんが燃えない火使えると言ってもこれは無いよ」
いつもよりもずっと低く、陽気な感じはなりを潜めている。美人は怒ると怖い。まさにそれだった。
「犯人を炙り出すために…」
「そんな事言ってんじゃない」
パシャリと切られるような声色だった。
そこでやっとセレナは顔をリーナに向けた。怒りと呆れ、少しの悲しみが混ざっていた。
「街の人全員を巻き込んだんだよ。それを理解してるわけ?」
「…わたしは、これが最善だと」
セレナは思わず手を組み、指先を忙しなく動かしている。
「確かに結果はいいと思う。けどさ、それは独りよがりじゃん。街の人の事ちゃんと考えたの。どうなの。そこをハッキリさせて」
現実をセレナは突き付けられた。切り捨てられて無いだけマシだと思う様な状態だ。声は震え、少し掠れた。
「…か、考えてません」
はぁ、とリーナは溜め息をついた。
「ここから見てたでしょ。どうだった」
何を、とは言われなかったが察したセレナだった。間違えるな、そんな声が頭の中で響いたがセレナには答えなんて直ぐに出てこなかった。
思いついてもリーナ相手に誤魔化せる気がしなかったのだ。
「…み、見てません」
「ほーんと街の人に興味無いね」
セレナはリーナから視線を外し、街を見た。いつの間にか竜巻は三つにまで減っていた。
「……いいや、で、何するの」
リーナは何か言いたそうだが、セレナの作戦に乗った。
「ユリに人がいない所に竜巻を作ってもらいました。最後まで残った家に犯人がいると思います」
「普通の人は突然街が燃えたら家から出るもんね」
「はい、それにわたしは森の中で火を使ってました。わたしが燃えない炎を使えるのを知っているのは天八座の皆さんと犯人だけ。魔物 を操っているのなら、視界の共有をしていると思うので」
「なるほどねぇ。燃えないと知ってるから家に立て籠るのね」
その間にユリによって竜巻は一つになった。
「あそこです」
セレナが指をさしたのは街の北側。
「よし!じゃあ出向くか!」
リーナは立ち上がった。
「セレナちゃん、何してるの。早くこっちに来な」
「え?あ、えっと」
セレナはよく分からないが、リーナの杖に腰を下ろし自分の乗っていた杖を腕に抱える。
「さぁ!飛ばすよ‼掴まって‼」
セレナはリーナの杖にぎゅっと捕まった。リーナは思いっきり息を吸っていた。
「セレナ・リブロの使い魔ユリシス蝶、ユリの作り上げた竜巻の元へ!」
リーナは現在竜巻の発生地に指を向けた。セレナは察してしまった。これはまずいと。
「あ、あの、リーナさん、その…あの──」
「トルネード!」
その言葉によって急速に進んでいく。
(速い速い速い‼むりむり怖い…!)
セレナはしがみつくしかない。
「さぁて、ここからが本番!」
リーナによって瞬速で竜巻の現場に辿り着いた。リーナは杖から飛び降りた。辺りには野次馬がいる。セレナは下手に降りたくない。
(…ど、どうしよう)
「主!」
「ゆ、ユリ…」
セレナはよく聞く声を聞き、思わず情けない声を出す。ユリはゆらゆらゆらりと飛んでいる。全くよくわかっていない様子だ。
「なんだ?」
「ひ、ひと…多い…怖い…」
「なんだそんな事か」
ユリは随分とあっけらかんとしている。セレナは何もしていないのに半泣きだ。
「主、何時もみたいにローブ被ればいいだろ」
「む、無理…今回はローブだけじゃあ誤魔化せない…」
「じゃあ、それはどうだ?キラキラみたいなやつ」
「キラキラ?」
ユリの止まった先は、ローブにいれていたベネチアンマスクだ。セレナはそれを理解すると正気…?という顔をした。




