5.流星の魔術師、星を撃ち抜く
前回のあらすじ
大事な事に気づきました。
サクサクとどこかリズミカルに草が音を立てる。セレナは珍しく全力疾走だ。体力なしのセレナが全力で走るのは貴重である。
(うぅ肋が痛い…足も疲れてきた…)
しかし、考えている事は体力なしのままだ。呼吸が既に乱れ、ゼーゼーしている。
「主ー!」
どこからかユリの声がした。セレナは荒い呼吸と重い足を止めずに探す。ヒラヒラと目の前にいた。
「ローブと杖持ってきたぞー」
ユリは状況が分かってなく呑気にユラユラしている。セレナは足止めずに地面に置かれてたローブと杖をシュパッと回収した。
「主?走ってどうしたんだ?」
「い、いま…いろ、いろまずいの」
右腕にローブと小さくしている杖を抱えて走っている。
少し抜かれるんでいるところに足を取られつつも森の外へ歩みを進める。
「どういう事だ⁉」
「たぶん、複数犯。今日、じ、実行する」
「だからどういう事だ!」
ユリの質問はセレナの耳には全く入っていないようだ。
「今日するの、天八座に、擦り付けるため。り、リーナさんは、目立つから…それに、攻撃術苦手なの…王国の人、皆知ってるし…。魔術師は、魔術で全部出来るけど。わざわざ本当の炎使うのは、ひと握りだけ。それに、突然、街、燃えたら疑われる、の、今日来た、リーナさんに、なる」
息切れもありたどたどしくユリに説明していくセレナ。ユリはパタパタとなんの苦労と無さそうにセレナと並走する。ただ、状況は先程と同じように全く理解していない。
「キラキラが悪いヤツになるっことか⁉」
「そう、多分、それが狙い」
言葉はツギハギだが、セレナには確信があった。
「どうして街燃やすんだ?意味ないだろ」
セレナは少し遠い目をしながら足を動かし続ける。
「…この間、ユリ、学園見て回る、為に、壊そうって言ったじゃん。それ、と、反対。多分、目的、達成されないなら、諸共、壊そうって人、が、集めた」
「なんで、複数なんだ?魔術だけなら人間一人でいいだろ」
ユリはゆっくりと今の状態を噛み砕いていた。三割理解というところだろうか。
「魔術師って、適正っていうの、あるの。普通は攻撃術、と、空間術みたいに、二つ位なの」
「主、八つ使えるじゃないか」
「…わたし、だけ、じゃないもん。天八座の皆さん、全部使えるもん」
天八座は色々とすごい集団なのだ。基本的に適性は二つしか持ってないが、八つ全てを高度に使える魔術師集団だ。ローファーが、少しづつ汚れてきた。
「話、戻すけど、操りの宝石には、精神感応術と空間術、が、使われてた。それに、周りには幻創術、一人で三つ使うの、おかしくは無いけど、この三つ、一人で、使える、なら、リーナさん、か、街の人の誰か、洗脳する方が、簡単」
魔術には合わせで出来る事もある。精神感応術、空間術、幻創術の三つを混ぜ合わせて生命のあるものに使うとその相手を洗脳が出来る。
簡単な洗脳から人身全てを操る洗脳。
だから、危険なのだ。
「それ、キラキラ知ってるのか?」
「た、多分、知らない。知ってたら、わたしの所、に、戻って、来そうだし」
実際セレナが森の中を探索していた時、伝言すら飛んで来なかった。何か分かれば伝言か転移魔術で飛んできそうなリーナだから何も分かっていないのだろう。
「そ、いえば、チーロさん。どこ」
「あいつはキラキラ所に行ったぞ」
チーロがいればチーロに今の状態をリーナに伝えてもらおうと思ったが、そう、上手くは行かなかった。
「で、出れた」
約十分セレナの全力疾走により森から抜けられた。森の中にいた時は見えなかったが、満天の星空がセレナの頭上に現れた。
「良かった、まだ燃えてない」
街は街灯によって輝いている。
「主どうするんだ?」
「…」
セレナは、黙って街を見ているだけだ。
「主?」
「ユリ」
セレナはローブを広げて、着ながら杖を元の大きさに戻す。ローブはセレナにとっては非常に大きいので腰で紐を結ぶ。杖は優に身長を越える大きさに戻す。
杖には赤色の水晶が街を赤色に反射する。
「わたし、今から街を燃やす」
「はぁ⁉主どうしたんだ⁉」
真面目な顔してセレナが告げた言葉にユリは思わず食いつく。
「燃えない火使うから、ユリ、空から燃えた時人が出て来なかった家マークしておいて」
「どういう…わかったぞ!そーゆー事か主!」
「そういう事」
少し悪い微笑みをユリに向けたセレナと理解しテンションが高いユリ。異色なコンビだが、成り立っているのはそれなりの理由があるからだろう。
「マークした所に竜巻作って」
「任せろ主!」
使い魔にも特性というものがある。ユリの一つの特性として風を操れる。チーロの様に転移魔術が使える個体もいる。ユリはふわふわと空に向かって浮上していく。
コバルトブルーが、月に反射して綺麗だ。
セレナはユリが街の上に浮上した事を確認した後、息を整え杖を街の方へ向けた。
「展開」
セレナが魔法陣出現の詠唱を唱えると街一体の地面に陣が術式現れた。ある程度の魔力が無いと不可能な技術だ。夜風に吹かれセレナの髪の毛とローブは呼吸をしているようにパタパタ揺れている。
星空は、セレナを、魔術を祝福しているように見える。
「天八座攻撃術筆頭、セレナ・リブロが告げる」
声は震えていない。手も震えていない。
「我が攻撃術の始祖、星の射手の元、沈黙する軌道の果てにて現れよ——」
声は、淡々と告げていく。迷いも、感情も、無い
あるのは、覚悟だけだ。
「炎上の矢」
その瞬間光、正しく、流星のような光が降り注いだ。街は炎に覆われていく。他の街との炎の外壁が完成した。セレナは魔力を注ぎ込む。決して炎が消えたりしないように。
その後十箇所に竜巻が見えた。
(よし)
セレナは炎をそのままに、杖に腰をかけ浮遊を始めた。
「う…グラグラする…」
ユリが起こした竜巻の風に少々影響され、安定感はあまり無いがセレナは構わず進んでいく。
一つの街を炎の海にした。
炎の海を作り上げたその姿は、ただのセレナ・リブロでは無い。
正しく星を撃ち抜いた魔術師、王国の最高魔術機関にいる攻撃術筆頭だ。




