2.有名人と一般人(?)
前回のあらすじ
同僚に連行されました。
「とうちゃーく」
リーナの転移魔術で移動した先は街の市街地から少し離れた場所だった。
エンロール街。
王都と各地を繋ぐ要所として、人や物資の出入りを管理・登録する役割を持っていたことからその名が付いた。現在では交易と討伐の拠点として賑わっている。
「ユリちゃんいる?」
その言葉にユリはセレナの肩から離れくるりと一周回る。
「いるぞ!」
「よし!」
リーナとユリの会話のテンションにセレナはついていけない。
(テンション高い…ついていけない…)
セレナは完全に孤立した。そんな中、リーナは勢い置くセレナの方を向いた。
「よーし、ユリちゃんもいるし今から移動するよー」
リーナはずいずいと市街地へ向かっていく。
✿✿✿
エンロール街は人で賑わっている。
商人に旅人らしき人、騎士団もいる。そんな中を二人と一頭は進んでいく。街の中心部に入るとやはり人の視線が集まる。
「あれは天八座の空間術筆頭では?」
「この街に何かごようかしら」
「隣の方は名門魔術学園の生徒さんね」
「何故、空間術筆頭様と共に…?」
リーナは、ローブを着、杖を持っている。なかなか目立つ格好だ。そして、リーナは何よりも顔が割れている。社交界の出席率は九割越え。貴族でも有名だが、平民の中でも有名な人だ。
「いやー、今日も賑わってるね」
「キラキラ、あれなんだ」
「あれは博物館」
「はくぶつかん?なんだそれは」
「博物館っていうのはねぇ───」
リーナとユリが、ワイン博物館の話をしている。博物館がワインのだからなのかリーナは熱弁している。リーナは王国でも少ない豪酒としても知られている。
ユリがワインに興味を持ってくれた事がとても嬉しいようだ。ユリが興味を持ったのは博物館だ。その為微妙に話がかみ合っていない。
「ね、セレナちゃんも興味あるでしょ?」
リーナがセレナに問いかけるも返信が無い。
「セレナちゃん?」
リーナとユリが振り向く。セレナは三歩程後ろにいた。
「…大丈夫、大丈夫。誤差は三ミリ…」
セレナは真っ青な顔で下を向き、ブツブツと呪文のように呟いている。
「あちゃあ、これは……」
「主は……」
セレナは、目立ちたがり屋ではない。反対にひっそりと暮らしていたい人だ。
しかしながら現在、知名度がありすぎる天八座のリーナと共に歩いている事で少なからずセレナも注目を浴びる。セレナは社交界に出ないため肩書きの知名度はあるが顔も割れてない、性別まで不明となっている。騒ぎ立てられないが、何故。という疑問を住人達の頭の中に浮かせる存在となっている。
「線を引き、円を書いて、指で…描く…」
要するにセレナは注目を浴びすぎてキャパオーバーという訳だ。その為、セレナの好きな世界に入り込んだのだ。
「セレナちゃん、戻っておいで」
リーナが容赦なく肩を叩く。
「いっ……」
あまりの痛さにセレナの思考は現実世界に戻ってくる。リーナの目的は果たされた。おかえりー、主。とユリに言われているセレナを横目にリーナは指を顎に当てていた。
「とりあえずアイツと合流するか」
少し考えたあとリーナは独り言のように呟いた。本当に独り言だったのかもしれないが、セレナには分からない。
「着いてきて。先に向かわせてたの」
リーナが先頭となり後をつけていく。
「主。アイツって誰だ?」
小声でユリがセレナに問いかける。リーナは気づかずにズンズン森の奥へ進んでいる。
「えっと、多分、リーナさんの使い魔の子だと思う…」
「……わかったぞ!あいつだ!」
ユリはピコーンと閃いたように声色を上げ、くるりとセレナを周りを一回転した。
市街地を通り、少し脇道に入ると広大な森が広がっていた。リーナはどんどん木を掻い潜り進んでいく。セレナは後を追いかけるのに必死だ。
「おっ、いたいた」
歩いて約十分程度立った時、リーナが足を止めた。
「やっほーお疲れ、チーロ」
チーロと言われたのはクジャクだ。
「リーナ!」
使い魔は基本的に自分の使えるべき相手の名は好きなように呼べる。ユリはセレナを『主』と呼んでいる。他にもある。『主人』と呼ぶ者も入れば『姫様』と呼ぶ者もいる。基本的に自由なのだ。
リーナの使い魔であるチーロは、呼び捨てで呼んでいるようだ。
「あらセレナ様ご無沙汰ですね」
「ひ、あ、はい…」
「ユリ様もお元気そうです事」
「ユリも元気だぞ!最近色々な言葉を覚えたぞ!」
チーロは少々甲高い声でセレナとユリに挨拶をする。セレナが全く定例会に行かなかったのでチーロに会うのも実に久しぶりだ。ユリとチーロは使い魔同士で軽い世間話をしているようだ。使い魔の考えなので人間であるセレナやリーナには理解ができない。
(うぅ、やっぱり定例会行った方いいのかな…ユリも挨拶とかあるし…)
セレナは今後のことに頭を悩ませていた。お互いの挨拶を終えた所でリーナが、チーロの方を向いた。
「で?いい感じ?」
「それが大問題なのよ!」
チーロは羽をバサッと広げた。クジャクだからなのか圧巻だ。
「魔物が弱すぎるのよ‼」
甲高い声が森の中に響き渡った。




