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094●剣は抜けるの?なんのため?

その剣は、

ボレリアからラベンダー公国に入る前の平原の、なだらかな高みにあった。

剣先の打突部の三分の一ほどが、大地に突き刺さされている。

近辺の住民や、行き交う人々が、時おり足をとめ、祈りを捧げることがある。

しかし、その周囲には、近づくものを遮るようなものはない。

草がきれいに取り除かれているのは、誰かがそうしているからである。


「ねえ、お母さん、どうして剣がささってるの?」

「あなたが生まれる前に、戦いがあったの。そのとき、勇者が平和になったって言って、突き刺したのよ。」

「あぶなくないの?」

「あれはね、切れないの。触ってもだいじょうぶなの。剣だけど、剣じゃないのね。」

「ふーん。でも、おとぎ話のように、あの剣を引き抜くことができたら、勇者になれるの?」

「それがね、誰でもできるのよ。お母さんにだって、きっとできるわ。」

「えってー、誰かが持っていかないの?」

「何度か、持っていった人がいるの。でも、それは何かを守る力を貸してほしくて、持って行くの。だから、その役目が終わったら、返しにくるの。」

「そうなんだ。切れないけど、力を貸してくれるんだ。」

「みんな、そう信じているのよ。何か、争いが起きそうなとき、あれを見ると、みんな考えるの。」

「何を考えるの?」

「怒ったり、よくばったり、だれかのことを悪く言ったりするのは、よくないなあ、って。たたいたり、つねったりは、だめだなあ、って。」

「えっー!ケンカはだめってことなの?」

「そうねえ。たとえば、相手が泣いたらおわり、とか。そのあとは、また、いっしょにあそぶとか。いいことかわるいことか、それを自分で考えるようにすればいいんじゃないかしら?なにか嫌なことがあっても、お友だちにあたりちらかしたり、だれかのせいにしないことが、だいじよね。」


雨風にさらされても、その剣は錆びない。

切れない剣が、憎しみの連鎖を断つためのものとして、

長らく畏敬の念を集めることになる。


実は剣には誰も読めない、異国の文字が刻まれている。

「友へ。矛盾した願いを贈る」と。


この矛盾を解決できるのは、ヒトのみである。


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