085●怒ってないよね?
ーねえ、ねえ、ボレリアの復興が始まるのね!
ーほぼ、全部、焼いちゃったもんね。
ー時間、かかるの?
ーそれほどでもないと思うけど。
ーちゃんと元の状態って、記録してあるのよね。
ーもちろん。マイロードに抜かりがあろうはずがない!
ー家の内部から景観、畑や森まで精密データで残ってるのね。
ーそれじゃあ、復元は簡単じゃないの?
ーでも、マイロード、できるだけあの世界線の実情に沿ってやるかどうか、迷ってるよ。
ーなあぜ、そこで迷う!住民の負担を軽くするほうがいいんじゃないの?パパッとやるべきよ。
ーでも、自力で復興しないと、民のためにもならないのでは?
ー人間が中心になってやるってなると、長くかかるよね。
ーこのまま、インフェィニティの生活に慣れてしまうと、村に戻った時、困るぞ!
ーわたしたちの技術を極力、表に出さないことを優先するか、原状回復を優先するか。
ーもう、マイロードったら、悩みすぎ!これって’緊急事態’じゃないの?!
—それじゃあ、ちょっとサプライズしない?
ーえっ、それって・・・わたしたちでやっちゃうってこと?
ーおもしろそう!このメンバーだったら、星雲系改造だって一発よね!
ーそうだ、そうだ、やっちゃえ、やっちゃえ!
ー先発隊を組織しようよ。誰が行く?
ーハイ、ハ〜イ、わたし!ラナが行きま〜す!
ーいいね。あなた、改造系、得意だもの。
ーでも、叱られないかな?
ーそこは、ココアとソレイユで、何とかお願い!
ーも〜う!しょうがないなあ。ソレイユ、それでいいかな?
ーいいよ。なんとか、うまくやりましょう。
ーそれでは、始めるよ!マイロードの驚く顔が目に浮かぶ!
ーソレイユ、お願いがあります。エンジェル100名とエンジェルナイト1万名を、派遣してください。
ーあら、ついに恒星系改造に着手ですか?
ーいや、ボレリアの復興です。データのとおり、できるだけ早く原状回復することにしました。わたしたちの有する技術力の高さが、万人に知られてしまいますが、やはり民の生活を元に戻すことが優先ですね。できれば、半年以内に完成させたい。
ーえっと、あのですね、事後報告で申し訳ないのですが・・・。
ーおや、ココアも来てたの?
ーソレイユとわたしで、ご説明をしたほうが、いいってアークエンジェルズで決まったので・・・。
ーそれで、何が決まったのですか?
ーそれは、その・・・。もう、完全復興しちゃいましたあ!
ーえっ、ええっ?!あっ、本当だ!完璧に戻ってる!
ー見かけも中身も、使い勝手も自然環境も、元通りです。建築素材などには、耐久性の高いものを使いましたけど。
ー・・・つまり、あなたたちが、「やっちゃった」ということですね?
ーすませ〜ん!お怒りですか?怒ってる?いや〜ん!
ー怒ってなんかいませんよ。ありがとう。みんなにもお礼を言わなければなりませんね。
ーわ〜い、よかったあ!ココア、やったね!
ーラナが本気だしたからね!
ーそうそう、これも言っておかなければ。
ーなんですか、マイロード?
ーサプライズは結構ですが、やはり、できるだけ事前に報告・連絡・相談してくださいね。
ーひぇ!やっぱり、ちょっと怒ってる?怒ってない?怒ってませんよね?
ー怒ってなんか、いません!!!
人々は驚愕した。焼け野原になった故郷が元通りになっている。
「じいさんの木像もある・・・。」
「この子が描いた、わたしの等身大の絵もあるのよ・・・。」
「家の中も、避難前と全くおんなじだ・・・。」
「森や畑や、穀物貯蔵庫とその中身も・・・。」
「聖なる場所も、みんな・・・。」
「夢か?魔法か?」
最も遠い復興場所まで一緒に来ていた、アリス・ファインが応える。
「わたしたちは魔法のことを‘科学’と言っています。」
茫然としていた村人たちが、我に返る。
その瞬間、涙とともに大歓声が上がった。
春まではまだ遠い。
風が吹き抜け、再生された森の針葉樹の枝が、ささやくように揺れた。
空の青さが目に染みる、そんな日であった。




