006●自分が原因
「提督、お久しぶりです!おかわりありませんか?」
「やあ、グレッグ!元気そうですね。’提督’はやめてください。退役して、随分になりますよ。あなたも大佐ですか。偉くなったんですね。」
「あなたの除隊が、早すぎたんですよ。まだまだ、お若いのに。」
「あなたも若き俊英ですよ。でも、お互い、まだ独身のままですね。」
ロイ・ラベンダー提督、柔らかな口調は変わらないな。
あなたのもとで、戦術を学んだ日々、あの奇跡の逆転勝利を収めた宙域戦、なつかしく思い出される。
「実は、お願いがあって参りました。」
その異常が発見されたのは、地球体感時間で1ヶ月前であった。
鉱物資源の豊富な惑星、仮称アルファ。
自律作業車が掘削をしていた。
数名の作業員が数万台の進行状況を管理する中、突然・・・。
「突然・・・作業車が1台、消えたのです。」
「消えた?地面を踏み抜いて、地中の空洞に転落ということでは?」
「いえ、それが全く機体が見当たりません。もちろん、地面に穴も、地中に空洞もありません。これは、そのときの映像です。隣接稼働していた同型の作業車からのものです。」
端末を操作し、立体映像を浮かび上がらせる。
「ほぉー・・・。」
提督が小さな声をあげられる。
「なるほど。これは不思議ですね。ゆらゆらと霞んで、消えていく様子がよく撮れています。」
「これ以降、各マシンは次々と動作不良を起こしました。生命維持プラントまで不調を来たす始末。作業チームは惑星アルファから、一時的に撤退しました。」
その後、作業チームの上層部が、無人調査機を何度も送り込んだが、それらも不通となった。
光学的観察では、残された施設に変わりはないものの、大気を持たない惑星にかかわらず、映像に揺らぎが確認される。
遠隔による復旧作業は継続中だが、未だに反応はない。
事態の報告が回り回って、軍の知るところとなった。
だが、極秘事項でもあり、軍自体が関与することは、行政府も躊躇している。
「そこで、わたしに、簡単に言うと、非公式に何とかしろ、と指示が来よったんですわ。」
「なるほど。わかりました。あなたがお国言葉を使うということは、本気で興奮してるということですね。・・・では、わたしとわたしのチームが行ってみましょう。」
「えっ、提督ご自身が直接ですか?対応策の検討にお知恵をいただければ、と伺ったのですが。」
「これは小さな現象に見えるかもしれませんが、科学的に説明がつかない大きな事態です。早く対応しなければ。わたしであれば、民間人が調査に赴く、ということで各方面の面子も立つでしょう?作業チームの上層部の企業から、わたし宛に調査を依頼させてもらえますか?・・・それと、何度もすみませんが、’提督’は無し、です。」
ークラリス、以上だ。質問はあるか?
ーいえ、マイロード。では、わたしの配下と共に合流します。何か事前に、承ることはございますか?
ーいえ、無いのですが。あなたは、どう思います?わたしのことを’提督’とか、’陛下’とか、やめてほしいと言っても、呼び続ける人たちが多いのは何故でしょう?どの世界線でも、こうなってしまうね。
ー慕われているからでしょうね。恩師をいくつになっても’先生’と呼ぶのといっしょでは?ご自分が原因だと諦めてはいかが?
ーうーん・・・。




