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058●ヒーロー

最近、亜子と話すのが楽しい。

文化祭での彼女の頑張りには、本当に感心した。

ひたむきで、まっすぐで。

毎日モメていたのが、まるで嘘みたいだ。


最近、ゴンタと話すのが楽しい。

文化祭では黙々と仕事をこなし、きちんと準備していた。

ちょっとだけど、ステキだと思ってしまった。ちょっとだけ、ね。

あんなに言い合いになっていたのに、今では笑い合ってる。


階段を登っていく亜子とすれ違う。

目が合う。微笑んでる・・・カワイイな。

「ガタッ!」って何の音だ?えっ、亜子が落ちてくる?!


しまった!足を滑らせた!後ろ向きに落ちる!

うわっ、これはマズイ!

「キャ〜!!」

・・・あれ?何ともない?

柔らかいものの上にいる。えっ?ゴンタ?!

「大丈夫?!しっかりして!ゴンタ〜!!なんでわたしの下にいるの?!」


病院でふたりとも検査してもらった。

わたしは異常なし。けど、ゴンタはベッドに横たわっている。

「ごめんね。足、折っちゃったの?」

「大丈夫。亜子は無事だったか?」

「うん。ゴンタがクッションになってくれたから。」

「おー、それはラッキーだった。亜子のクッションって、なかなか貴重な体験だもんな。」

「バカっ!死んじゃったらどうすんのよ!」

「死なないよ。100歳まで生きてやる!」

「もうっ!ホントにバカなんだから・・・。」

「あっ、あれっ?おい、泣くなよ、亜子!俺は大丈夫だからさ。泣くなって!」


ドアが開く。親父か。

「ごめんなさい。本当にすみませんでした。」亜子が深々と頭を下げる。

親父がベッドに近づいてくる。

「いやいや、かまわん、かまわん。ほっ、ほおー。女の子のために骨を折るとは、名誉なことだな、太一郎。だが、まだまだ未熟だ。なぜ、骨を折らんようにキャッチできん!」

相変わらず好きなことを言う親父だ。やれやれ。

「それでも、骨折り損ではなかったな!褒めてやるぞ!あっぱれだ!」

亜子が不思議そうに見ている。そりゃそうだ。こんな芝居がかったセリフ、そうそう聞けないぞ。


病室のドアが開く。ハアハアと息をついている。亜子のご両親だな。

「亜子、無事か?!あっ、権藤さんですか?!この度は娘を助けていただき、本当にありがとうございました。お子様、骨折ですって。申し訳ありません。」

ご両親と亜子が頭を下げる。

「なんの、心配はご無用。こいつは少々のことでは、くたばらん。」

「あっ!あれっ?アクション俳優の・・・藤原 弘さん?」

「知っていただいてありがとう。本名は、権藤 邦弘と言います。」


親父が若い頃に主演していた連続テレビ番組、「仮面サイダー」の話題で盛り上がる。

晩婚だった親父と年齢差があるから、亜子のお父さんはリアルタイムで見ていたそうだ。

握手して、サインをもらって、亜子のお父さん、うれしそうだった。


帰り際、亜子が言う。

「大事にしてね」

「大丈夫。俺は頑丈なんだ」


家に帰ってきても、お父さんは上機嫌。

まったく、わたしのことも心配してよね。

「いやあ、ご本人に会えてサインまでもらえるなんて!これはすごい!」

「あなた、そんなに興奮しないの。亜子は今日のことで、責任感じてるんだから。」

「亜子、それは心配いらないぞ。」

「どうしてよ。わたしのせいで、ゴンタ、怪我しちゃったんだよ・・・。」

涙がこぼれそうになる。その時、お父さんが真顔になって言った。

「だって、ヒーローは誰かを守るためにいるんだ。・・・太一郎くんは亜子のヒーローなんだろ?」

「・・・うん。・・・ヒーローだね。」


お父さん・・・ありがとう。


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