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024●敵対と天災

乾いた大地に、長く続く確執の歴史を刻む二つの村があった。

国境という見えない線によって隔てられたアザール村とベクタシュ村は、互いを敵とみなし、言葉を交わすことすら稀だった。


時折、境界線近くで小競り合いが起こり、互いへの不信感は募るばかりだった。

アザール村の年老いた長は、「あそこの連中は信用ならん」と若者に言い聞かせ、ベクタシュ村の子どもたちもまた、「向こうの奴らは悪魔だ」と教えられて育った。


しかし、自然は、彼らのいがみ合いなど意に介さなかった。

ある嵐の夜、大地が激しく唸り声を上げたかと思うと、恐ろしいまでの揺れがアザール村を襲った。

M8を超える直下型の大地震だった。

活断層の真上に建造されていた木造家屋は瞬く間に崩れ落ち、石造りの家々も大きな亀裂を走らせ崩壊した。

夜が明ける頃には、美しい村は瓦礫の山と化し、多くの村人が生き埋めになった。

道は寸断され、外部からの救援は望めない絶望的な状況だった。

生存者たちは凍える夜空の下、途方に暮れ、ただ呻くしかなかった。


その悲劇は、国境を越えてベクタシュ村にも伝わった。

村の広場に集まった人々は、恐怖と困惑の入り混じった顔で囁き合った。

「敵の村が滅びた」「これも神の思し召しか」・・・。

だが、一人の若者が叫んだ。

「瓦礫の下には、俺たちと同じ人間がいるんだ!」


その言葉に、古老が重い口を開いた。

「憎しみなど、飢えた腹を満たしはしない。困っている者を助けるのが、人の道ではないか」。


そして、信じられない光景が繰り広げられた。

普段は決して越えることのない国境を跨ぎ、ベクタシュ村の人々が列をなして歩き始めたのだ。

彼らは、スコップやツルハシ、毛布や食料を携えていた。

アザール村の生存者たちは、最初はその姿を見て身構えた。

だが、彼らが救助の手を差し伸べ、瓦礫を懸命に運び出す姿を見た時、疑いの心は消え去り、ただ涙があふれた。

「ありがとう・・・。」かすれた声でアザール村の長が呟いた。

ベクタシュ村の若者は、泥だらけの手で瓦礫をどけながら、生存者を探し続けている。

互いに負傷者を運び、水を分け合い、凍える体を寄せ合った。

長年の確執は、この悲劇の前ではちっぽけなものだった。

共に汗を流し、共に涙する中で、両村の間に新たな、しかし強固な絆が芽生え始めた。


月日は流れ、アザール村は少しずつ復興していった。

しかし、数年後、今度はベクタシュ村が大規模な洪水に見舞われた。

村全体が水に浸かり、家々は流され、収穫を間近に控えた畑は泥の海と化した。

かつてアザール村が味わった絶望が、今度は隣人を襲っていた。


この報せを聞いたアザール村の人々は、一瞬の躊躇もなく立ち上がった。

彼らは、あの震災の日にベクタシュ村の人々が差し伸べてくれた温かい手を、決して忘れてはいなかったのだ。

村の若者たちが先頭に立ち、食料や建築資材を満載した荷車を引いて、一路ベクタシュ村へと向かった。

ぬかるみなど、ものともせずに。


ベクタシュ村の人々は、水に浸かった村に現れたアザール村の人々を見て、言葉を失った。

かつての自分たちの行いが、こんな形で返ってくるとは。

アザール村の長は、ベクタシュ村の長に深く頭を下げた。

「あの時のご恩を、ようやくお返しできます」。

両村の長は固く手を取り合った。

その手は、かつてのいがみ合いの痕跡など微塵もなく、ただ温かい友情と信頼に満ちていた。


こうして、二つの村は、災害という悲劇を通して、憎しみを超えた真の隣人となった。

大地がどれほど揺れようと、水がどれほど溢れようと、彼らの間に築かれた絆は、決して揺らぐことはなかった。


天災は仮想敵と言えるのだろうか?

もし、そうであるとしても、天災に武器をもって備える人はいない。

食糧などの物資を蓄え、何より共助の精神が必要となる。

相互扶助という発想は敵対という考えからは生まれない。

普段から継続した、安定したコミュニティの広がりを構築することが肝要だ。

天災は忘れたころにやって来るのだから。


この世界線での出来事は、一筋の光のように思えた。

以上をデータベースに保管し、共有することにする。文責:ロイ・ジン・ロード・エンジェラム


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