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Episode 9: ピザと代償

登場人物

 カヨ/健一の妻、管理の達人

 トシキ/カヨの息子、マザコン


 シンディ・ゴールドバーグ/トシキの彼女、カヨの弟子


 ブレイディ・ヴァーデン/役者志望、おバカ

 エイミー・ヴァーデン/ブレイディの妹、ストイック

ピザ屋。

「Tony’s Pizza」

地元の人気店。

トシキとブレイディは、テーブルに座っていた。

目の前には、大きなピザ。

ペパロニとチーズ。

「Man, this is the best!(おい、これ最高だろ!)」

ブレイディは、ピザを一切れ取った。

大きく噛みついた。

「Mmm! So good!(うまい!)」

トシキも、ピザを取った。

恐る恐る、噛みついた。

「…!」

美味い。

久しぶりのジャンクフード。

玄米と蒸し野菜と鶏胸肉ばかりの日々。

この味が、恋しかった。

「Delicious…(美味い…)」

「Right!?(だろ!?)」

ブレイディは、嬉しそうに笑った。

「See? This is freedom, man!(ほら! これが自由ってもんだよ!)」

「…Freedom.(自由)」

トシキは、もう一切れ取った。

(ああ、これ…最高だ)

二人は、ピザを食べ続けた。


ブレイディは、レッドブルも飲んでいる。

ピザを食べながら、一気に飲む。

「Ahh! Perfect!(ああ! 完璧!)」

「Toshiki, you should try this too!(トシキ、これも試してみろよ!)」

「Red Bull? With pizza?(レッドブル?ピザと一緒に?)」

「Yeah! Perfect combo!(ああ! 完璧な組み合わせだ!)」

トシキは、ブレイディがピザを食べながらレッドブルを飲むのを見た。

(うわ…想像しただけで胸がムカムカする…)

「I know you like it, but…that combination makes me feel sick just thinking about it.(好きなのはわかるけど、そんな具合悪くなりそうな食べ方はしない)」

「What!? Toshiki! You don’t get it!(なんだと!? トシキ! わかってないな!)」

ブレイディは、笑いながら続ける。

「I can FEEL it! In my throat, in my body! It transforms into ENERGY! Right here!(喉と身体の中でエネルギーに変わるのが俺には分かるんだ! ここで!)」

ブレイディは、胸を叩いた。

「…That’s not how it works.(そういう仕組みじゃないと思う)」

「Yes it is! Trust me!(いや、そうなんだ! 信じろ!)」

ブレイディは、またレッドブルを一口飲む。

「Ahh! See? ENERGY!(ああ! ほら? エネルギー!)」

トシキは、呆れた顔をした。

(こいつ…本気で言ってる…)


1時間後。

ジムに戻った。

トシキとブレイディは、入口をくぐった。

「Man, that was great!(おい、最高だったな!)」

「…Yeah.(そうだね)」

「Let’s do it again tomorrow!(明日もやろうぜ!)」

「…No, not tomorrow.(いや、明日はやめとく)」

「Why?(なんでだよ?)」

「…Once is enough.(一回だけでいい)」

トシキは、少し罪悪感を感じていた。


ラウンジエリアに入った。

そこに。

カヨとシンディが、ソファに座って待っていた。

腕を組んで。

「…」

無言。

トシキとブレイディは、固まった。

「…Ah.(あ)」

「…Oh no.(やばい)」


ジムのラウンジ。

トシキとブレイディは、ソファに座っていた。

背筋を伸ばして。

カヨとシンディは、二人の前に立っていた。

カヨが、言った。

「…どこ行ってたの?」

「…Outside.(外)」

トシキは、小さく答えた。

「外?」

「…Yes.(ええ)」

カヨは、トシキに近づいた。

そして、匂いを嗅いだ。

「…ピザの匂いがするわね」

「…!」

トシキは、青ざめた。


シンディも、ブレイディに近づいた。

「Brady! You took him to eat pizza!?(ブレイディ! 彼をピザに連れて行ったの!?)」

「…Sorry.(ごめん)」

ブレイディは、頭を下げた。

「And Red Bull? Did you give him that too!?(それとレッドブル? それも飲ませたの!?)」

「I offered! But he said no!(勧めた! でも断られた!)」

「He said no?(断った?)」

「Yeah! He said it would make him sick! With pizza!(ああ! 気持ち悪くなるって! ピザと一緒だと!)」

シンディは、当然という顔で頷いた。

「Of course he did. That combination is disgusting.(当然でしょ。その組み合わせ、気持ち悪いもの)」

「What!? It’s the best!(なんだと!? 最高の組み合わせだぞ!)」

「Brady, let me be clear. Red Bull is not energy. It’s all in your head.(ブレイディ、この際ハッキリ言うわ。レッドブルはエネルギーじゃない。全部錯覚よ)」

「What!? No!(なんだと!? 違う!)」

「I’m not saying it’s completely bad. But you’re addicted.(完全にダメとは言わないけど、あなたはもう依存症よ)」

「Addicted!? I’m not addicted!(依存症!? してない!)」

「You drink three cans a day.(1日3本飲んでるでしょ)」

「…That’s…normal.(それは…普通だ)」

「No, it’s not.(いいえ、普通じゃないわ)」

シンディは、きっぱりと言った。

ブレイディは、黙った。


カヨが、トシキに言った。

「トシキ、何のためにトレーニングしてると思ってるの?」

「…I know.(分かってます)」

「分かってたら、ピザ食べなかったでしょ」

「…」

トシキは、何も言えなかった。

カヨは、続けた。

「自分で決めるのはいい。でも、責任も取りなさい」

「…Yes.(はい)」

「明日から、トレーニング、倍よ」

「…Double?(倍?)」

「ええ。ピザのカロリー、消費しないと」

「そうだね、分かりました」

トシキは、小さく頷いた。


シンディが、ブレイディに言った。

「Brady, you’re corrupting him!(ブレイディ、彼を堕落させてるわ!)」

「I’m sorry! I just thought he needed a break!(ごめん! ちょっと休憩が必要だと思って!)」

「A break doesn’t mean junk food!(休憩はジャンクフードを意味しないわ!)」

「…I know.(分かってる)」

ブレイディは、反省していた。


カヨが、ブレイディを見た。

「Brady.(ブレイディ)」

「Yes?(はい?)」

「We're going to manage you too.(あなたも、私たちが管理するわ)」

「…What?(え?)」

「At this rate, you won't finish the marathon.(このままじゃ、マラソン、完走できないわ)」

「I can finish it!(完走できるよ!)」

「On Red Bull and junk food?(レッドブルとジャンクフードで?)」

「…」

ブレイディは、黙った。

カヨは、続けた。

「Starting tomorrow, you'll train with Toshiki.(明日から、トシキと一緒にトレーニングしなさい)」

「…Me too?(俺も?)」

「Yes. And we'll manage your meals too.(ええ。食事も管理する)」

「But…(でも…)」

「No buts.(でももないの)」

カヨは、きっぱりと言った。

ブレイディは、観念した。

「…Okay.(分かった)」


その時、エイミーがラウンジに入ってきた。

トレーニングを終えたところらしい。

会話を聞いて、小さく笑った。

「Finally! Someone who can control Brady!(やっと! ブレイディをコントロールできる人が!)」

ブレイディは、エイミーを睨んだ。

「Amy! You’re enjoying this!(エイミー! 楽しんでるだろ!)」

「Of course I am!(もちろんよ!)」

エイミーは、楽しそうだった。


翌日から、ブレイディもトレーニングチームに加わった。

朝5時。

ブレイディのアパート。

アラームが鳴った。

「…Ugh.(うぅ…)」

ブレイディは、ベッドから起きた。

眠い。

隣の部屋から、エイミーの声。

「Brady! Time to wake up!(ブレイディ! 起きる時間よ!)」

「…I’m up.(起きてる)」

ブレイディは、ランニングウェアに着替えた。

(これ、マジでやるのか…)


サンタモニカビーチ。

朝日が昇り始めている。

カヨ、シンディ、トシキが待っていた。

そこに、エイミーとブレイディが自転車で到着した。

カヨが、言った。

「Today, we’re running 10km.(今日は、10km走るわよ)」

「10km…」

ブレイディは、青ざめた。

「Pace is 5 minutes per kilometer. Keep up.(ペースは、1キロ5分。ついてきなさい)」

「…Okay.(分かった)」

「Let’s go!(行きましょう!)」


3km地点。

ブレイディは、すでに息を切らしていた。

「…Wait…I need…a break…(待って…休憩…必要…)」

「It’s only 3km.(まだ3kmよ)」

カヨは、冷静に言った。

「But…(でも…)」

「Keep going.(我慢しなさい)」

「…」

ブレイディは、何とか走り続けた。

トシキは、横で少し同情していた。

「Brady, you okay?(ブレイディ、大丈夫?)」

「…I’m…fine…(俺は…平気…)」

でも、明らかに平気じゃなかった。


5km地点。

ブレイディは、止まった。

「…I can’t…I can’t go on…(無理…もう無理…)」

「5km more.(あと5kmよ)」

「5km!?(5km!?)」

「Yes.(ええ)」

「…Kill me.(殺してくれ)」

ブレイディは、膝に手をついた。

エイミーが、横から言った。

「Brady! This is why you need to stop drinking Red Bull!(ブレイディ! だからレッドブルやめろって言ったのよ!)」

「…Shut up, Amy.(黙れ、エイミー)」

ブレイディは、何とか立ち上がった。

そして、また走り始めた。


10km走り終えた後。

ブレイディは、地面に倒れた。

「…I’m dead.(死んだ)」

「You’re still alive.(まだ生きてるわよ)」

カヨは、水を渡した。

「Drink.(飲みなさい)」

「…Thanks.(ありがとう)」

ブレイディは、水を飲んだ。

トシキも、疲れていた。

でも、ブレイディほどではない。

「Brady, you did well.(ブレイディ、よく頑張ったね)」

「…Thanks, man.(ありがとう)」

ブレイディは、少し笑った。


ビーチ近くのカフェ。

朝食。

カヨが注文していた。

玄米。

蒸し野菜。

鶏胸肉。

プロテインシェイク。

ブレイディは、それを見て、少し引いた。

「…This?(これ?)」

「Yes. Eat.(ええ。食べなさい)」

「But…where’s the bacon? The eggs? The pancakes?(でも…ベーコンは? 卵は? パンケーキは?)」

「No.(ないわ)」

「…」

ブレイディは、観念して食べ始めた。

「…Mmm.(うーん)」

「How is it?(どう?)」

「…Not bad. But boring.(悪くない。でも退屈)」

「Boring is fine. It’s effective.(退屈でいいの。効果があるから)」

「…Okay.(分かった)」

ブレイディは、黙々と食べ続けた。

エイミーは、横で楽しそうに見ていた。


1週間後。

ブレイディは、少し変わっていた。

体が引き締まった。

顔色も良くなった。

朝5時起床も、慣れてきた。

ジムのラウンジで休憩中。

「…I feel…different.(何か…違う気がする)」

「That’s because you’re healthier.(それは健康になったからよ)」

カヨは、あっさりと言った。

「But I miss Red Bull…(でもレッドブルが恋しい…)」

「Endure it.(我慢しなさい)」

「…Okay.(分かった)」

ブレイディは、溜息をついた。

でも、悪い気はしていなかった。


マラソン前日。

ブレイディのアパート。

自分の部屋。

帰り道に買ってきた。

レッドブル。

3本。

それをポーチに入れる。

「…Tomorrow. I'll set myself free with these.(明日、これで俺を解放する)」


マラソン当日。

朝。

スタート地点。

グリフィス公園。

たくさんのランナーが集まっている。

トシキ、ブレイディ、エイミーも、スタートラインに並んでいた。

カヨ、シンディ、そして健一も応援に来ていた。

エイミーは、完璧な準備。

ストレッチ済み。

水分補給済み。

集中している。

トシキも、準備万端。

1週間、カヨとシンディの管理のおかげで、体調がいい。


そして、ブレイディ。

ブレイディは、トイレに行った。

数分後、戻ってきた。

目が、ギラギラしている。

「…Brady?(ブレイディ?)」

トシキが、気づいた。

「What?(何?)」

「Something’s…your eyes…(何か…目が…)」

「I’m fine! Never felt better!(平気だよ! 最高の気分だ!)」

ブレイディは、妙にハイテンションだった。

トシキは、何となく察した。

(まさか…)


エイミーも、気づいた。

「Brady! Did you…(ブレイディ! まさか…)」

「What?(何?)」

「You drank Red Bull, didn’t you!?(レッドブル飲んだでしょ!?)」

「…Maybe.(多分ね)」

「How many!?(何本!?)」

「…Three.(3本)」

「Three!?(3本!?)」

エイミーは、頭を抱えた。

「You idiot!(馬鹿ね!)」

「Hey! I needed it! It’s race day!(おい! 必要だったんだ! レースの日だぞ!)」

「You’re going to crash!(絶対クラッシュするわ!)」

「I won’t!(しないって!)」

ブレイディは、自信満々だった。

トシキは、少し心配になった。

(ブレイディ…大丈夫?)

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