Episode 7: スタジオ訪問、そしてマラソン対決
登場人物
田所家
健一 /元ハリウッド映画原作主演
カヨ /健一の妻、ハリウッドのカリスマ、管理魔、
トシキ /健一の息子、東大生、マザコン
シンディ・ゴールドバーグ/トシキの彼女、カヨの弟子
エイミー・ヴァーデン/シンディの友達、ストイック
ブレイディ・ヴァーデン/エイミーの兄、役者志望、レッドブル、ジャンクフード好き
スティーブン・シュピーガー/ハリウッド巨匠監督※スピルバーグではありません
翌日、午前10時。
シュピーガーのスタジオ。
カルバーシティ。
大きなスタジオ。
ゲートで、警備員にIDを見せる。
「Tadokoro family. Mr. Schpieger is expecting us(田所ファミリーです。シュピーガーさんが待ってます)」
「Go ahead」
車が、中に入った。
「すごいな…」
健一は、窓の外を見た。
巨大なスタジオビル。
セットが並んでいる。
「Father, this is amazing!(父さん、すごいね!)」
トシキも、興奮していた。
シンディも、目を輝かせている。
「I’ve never been inside a real studio!(本物のスタジオに入ったの初めて!)」
カヨは、相変わらず冷静だった。
駐車場に停めた。
その時、別の車が隣に停まった。
ドアが開いた。
ブレイディ が飛び出してきた。
「Toshiki!(トシキ!)」
「あ、ブレイディさん」
「I’m so nervous! I’m meeting Schpieger!(緊張してる!シュピーガーに会うんだ!)」
ブレイディは、レッドブルを2本持っていた。
すでに1本は空。
エイミー が、車から降りてきた。
ランニングウェア。
「Brady! I told you not to drink that!(ブレイディ!それ飲むなって言ったでしょ!)」
「I need energy!(エネルギーが必要なんだ!)」
「You need real food!(必要なのは本物の食事よ!)」
エイミーは、ブレイディからレッドブルを取り上げようとした。
ブレイディは、逃げた。
「Amy! Stop!(エイミー!やめろ!)」
トシキとシンディは、笑っていた。
健一とカヨも、その光景を見ていた。
「…賑やかな兄妹ね」
カヨが、小さく呟いた。
「ああ…」
エイミーが、カヨに気づいた。
「Oh! You must be Mrs. Tadokoro!(あら!カヨさんですよね!)」
「Yes. I’m Kayo(ええ、カヨです)」
「I’m Amy Varden. Cindy’s friend(エイミー・ヴァーデンです。シンディの友達)」
握手。
力強い。
「Cindy told me about you. You’re amazing!(シンディから聞きました。あなた、すごいんですよね!)」
「…Thank you?(ありがとう…ございます?)」
「You managed your husband’s health during a Hollywood shoot! And your son’s swimming training! That’s incredible!(ハリウッド撮影中、ご主人の健康管理をして!息子さんのスイミングトレーニングも!すごいわ!)」
「Well, it’s just normal…(まあ、普通のことを…)」
「No! It’s not normal! It’s excellence!(いいえ!普通じゃないわ!卓越してるのよ!)」
エイミーの目が、輝いていた。
カヨは、少し戸惑っていた。
(この人…エネルギーがすごい…)
健一とトシキは、遠くでその光景を見ていた。
「父さん、エイミー さん、すごくない?」
「…ああ」
「母さん、ちょっと圧倒されてる?」
「…珍しいな」
撮影が始まった。
シュピーガーが、監督席に座った。
俳優たちが、セットに入る。
「Action!」
カメラが回った。
俳優たちが、演技をする。
SF映画のワンシーン。
「Cut! Good! Let’s do it again!(カット!いいね!もう一回やろう!)」
撮影は、何度も繰り返された。
ブレイディは、真剣に見ていた。
メモを取っている。
エイミーは、横で見守っている。
トシキとシンディも、興味深そうに見ていた。
カヨは、相変わらず冷静だった。
休憩時間。
シュピーガーが、ブレイディに話しかけた。
「Alright, Brady. Show me something(さあ、ブレイディ。何か見せてくれ)」
「Really!?(本当ですか!?)」
「Yes. A monologue. Anything you’ve prepared(ああ。モノローグ。何か準備してるものを)」
「Yes, sir!(はい!)」
ブレイディは、セットの中央に立った。
深呼吸。
そして、演技を始めた。
ブレイディの演技。
『ハムレット』の”To be or not to be”。
でも、アレンジされている。
現代風。
「To be or not to be…that’s the question, man. Like, do I exist? Or am I just…you know…nothing?(生きるべきか死ぬべきか…それが問題だよな。俺は存在してるのか?それとも、ただ…ほら…無なのか?)」
「…」
シュピーガーは、無表情で見ていた。
ブレイディは、続けた。
「I mean, life is tough, right? Auditions, rejections, Red Bull…it’s all a mess. But hey, we keep going, right?(つまりさ、人生って大変だろ?オーディション、不合格、レッドブル…全部めちゃくちゃ。でも、俺たち、続けるんだろ?)」
「…」
トシキは、笑いを堪えている。
エイミーは、顔を覆っている。
健一とカヨは、呆然としている。
ブレイディは、最後まで演じきった。
「…And that’s the question. To be…or not to be(それが問題だ。生きるか…死ぬか)」
沈黙。
数秒。
シュピーガーが、拍手した。
「Interesting interpretation(興味深い解釈だね)」
「Thank you, sir!(ありがとうございます!)」
「But…a bit too modern for my taste(でも…ちょっと現代的すぎるかな)」
「…Oh」
ブレイディ の顔が、少し曇った。
「But you have energy. Passion. That’s good(でも、エネルギーがある。情熱がある。それはいいことだ)」
「Really?(本当ですか?)」
「Yes. Keep working. Keep auditioning. You’ll find your role(ああ。頑張り続けろ。オーディションを受け続けろ。君の役が見つかるさ)」
「…Thank you, sir」
ブレイディは、少し落胆したが、前向きだった。
撮影が終わった後。
スタジオの外。
ブレイディ は、少し静かだった。
「…I didn’t get it」
エイミー が、横から言った。
「You did well, Brady(よくやったわ、ブレイディ)」
「But he said it was too modern…(でも、現代的すぎるって…)」
「He also said you have energy and passion(エネルギーと情熱があるって言ってたわ)」
「…Yeah」
ブレイディは、少し笑った。
「I’ll keep trying(頑張り続けるよ)」
「That’s the spirit(その調子よ)」
エイミーは、ブレイディ の肩を叩いた。
トシキが、ブレイディに話しかけた。
「ブレイディさん、かっこよかったですよ」
「Really?(本当?)」
「ええ。エネルギーがすごかった」
「Thanks, man」
ブレイディは、少し元気を取り戻した。
その時、エイミーが、カヨに話しかけた。
「Mrs. Tadokoro, can I ask you something?(カヨさん、一つ聞いていいですか?)」
「Sure」
「How do you maintain discipline? Every day?(どうやって規律を保ってるんですか?毎日?)」
「…Schedule. Routine. Consistency(スケジュール。ルーティン。一貫性)」
「Yes! Exactly! I do the same!(そう!まさに!私も同じです!)」
エイミーは、興奮していた。
「I wake up at 5 AM every day. Run 10K. Eat clean. Train hard(毎日午前5時に起きます。10km走ります。クリーンな食事。ハードなトレーニング)」
「…Every day?(毎日?)」
「Yes! No exceptions!(はい!例外なし!)」
「…」
カヨは、少し考えた。
「That’s…impressive. But do you take rest days?(それは…すごいわね。でも、休息日は取ってる?)」
「Rest days? No! Rest is for the weak!(休息日?いいえ!休息は弱者のためのものです!)」
「…」
カヨは、少し眉をひそめた。
「Rest is necessary. For recovery. For growth(休息は必要よ。回復のため。成長のため)」
「But if I rest, I lose progress!(でも休んだら、進歩を失います!)」
「No. You lose progress if you burn out(いいえ。燃え尽きたら、進歩を失うのよ)」
「…」
エイミー は、少し驚いた顔をした。
「But…I’ve never burned out(でも…燃え尽きたことないです)」
「Not yet」
カヨは、冷静に言った。
エイミーは、何も言えなかった。
その時、エイミーが言った。
「Mrs. Tadokoro, I have a proposal(カヨさん、提案があります)」
「Proposal?(提案?)」
「Yes. There’s a half marathon in two weeks. Let’s compete!(ええ。2週間後にハーフマラソンがあります。競いましょう!)」
「Compete?(競う?)」
「Yes! You and me!(そう!あなたと私で!)」
「…I don’t run marathons(私、マラソン走らないけど)」
「Then this will be your first!(じゃあ、これが初めてになります!)」
エイミーは、目を輝かせた。
シンディが、横から言った。
「Actually, Mrs. Tadokoro doesn’t need to run(実は、カヨさんが走る必要はないわ)」
「What do you mean?(どういうこと?)」
「We have Toshiki. He’s the one Mrs. Tadokoro trained(トシキがいるわ。彼がカヨさんの訓練した人よ)」
「Toshiki?(トシキ?)」
Amy は、トシキを見た。
「You were a swimmer, right? Junior Olympics?(スイマーだったのよね?ジュニアオリンピック?)」
「ああ、まあ…」
「Perfect! Let’s race! You and me!(完璧!レースしましょう!あなたと私で!)」
「え、俺?」
トシキは、少し戸惑った。
カヨが、横から言った。
「いいんじゃない?トシキ」
「母さん…」
「あなた、体力あるでしょ。それに、この2週間、私とシンディで管理するわ」
シンディも、頷いた。
「I’ll help!(手伝うわ!)」
トシキは、少し考えた。
そして、言った。
「…分かった。やるよ」
「Great!(素晴らしい!)」
エイミーは、嬉しそうに言った。
「I’ll show you what real training looks like!(本物のトレーニングがどんなものか見せてあげる!)」
「…頑張ります」
トシキは、少し不安そうだった。
その時、ブレイディが言った。
「Hey! I’ll join too!(おい!俺も参加するぜ!)」
「You?(あなたが?)」
エイミー は、疑わしそうに見た。
「Yeah! Red Bull gives me wings! I’ll drink three cans before the race!(ああ!レッドブルが俺に翼をくれる!レース前に3缶飲むぜ!)」
「Brady, that’s not how it works…(ブレイディ、そういうものじゃないのよ…)」
「It’ll work! Trust me!(うまくいくって!信じろよ!)」
ブレイディ は、自信満々。
エイミー は、頭を抱えた。
「…Fine. But don’t blame me when you collapse(分かったわ。でも倒れても文句言わないでね)」
「I won’t collapse!(倒れないって!)」
健一が、横で呟いた。
「…何だか、変なことになってきたな」
カヨが、答えた。
「そうね。でも、面白そうよ」
「お前が走るわけじゎないだろ?」
「走らないけど、トシキを管理する」
「…そっか」
健一は、小さく笑った。
(そうか、トシキ、がんばれよ…)
その夜、ホテルの部屋。
トシキとシンディが、健一とカヨの部屋に来た。
「父さん、母さん、相談がある」
「何?」
「このマラソン、2週間後だろ?」
「ああ」
「それで…俺たち、もう少しLAにいたいんだ」
「…もう少し?」
「ああ。実は、今年、休学したいって思ってる」
「休学?」
健一は、驚いた。
「ああ。1年間。LAで色々経験したい」
シンディも、頷いた。
「I want to stay too. It’s a great opportunity(私も残りたいの。すごいチャンスだわ)」
健一は、カヨを見た。
カヨは、冷静だった。
「いいんじゃない?」
「え?」
「トシキ、まだ若いし。1年くらい、自由に過ごしてもいいでしょ」
「でも…」
「あなたの仕事、リモートでできるでしょ?」
「…まあ、できるけど」
「じゃあ、問題ないわ」
カヨは、あっさりと言った。
トシキとシンディは、嬉しそうだった。
「ありがとう、母さん!」
「Thank you, Mrs. Tadokoro!(ありがとう、カヨさん!)」
健一は、少し複雑な気持ちだった。
(LA、1年間か…)
(確かに色々経験できそうだ)




