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12/22

Episode 12: 文学論争

登場人物


田所家

 健一/元ハリウッド映画主演原作

 カヨ/健一の妻、カリスマ、管理魔


Dharma Beans (カフェ)

 アラン・ゼンズバーグ/ シンディの叔父、詩人、カフェ経営 ※アレン・ギンズバーグではありません

 ジェイク・ケンドリック/ 詩人、作家、アランの親友、カフェ共同経営 ※ジャック・ケルアックではありません


 地獄谷 劫火/謎の便所詩人


☆なんちゃって参考文献


アレン・ギンズバーグ 「HOWL」

ジャック・ケルアック 「路上」

takaki//cw 「個性なき幸福」(TALES掲載、現在休載中)

※読んでなくても大丈夫!


数日後の夜。

Dharma Beans。

健一は、アラン、ジェイク、劫火と一緒にテーブルに座っていた。

ビール。

4人分。

「Cheers!(乾杯!)」

グラスがぶつかる音。

健一も、ビールを飲んだ。

(久しぶりだな、こうやって飲むの…)

カヨには内緒だ。


「So, Kenichi! Tell us about your work!(それで、健一! 君の仕事について聞かせてくれ!)」

アランが、目を輝かせて聞いた。

「Ah, yeah…I use AI to write novels…(あ、ああ…AIを使って小説を書いて…)」

「AI! Interesting!(AI! 面白い!)」

「And one of them became a Hollywood movie…(それがハリウッド映画になって…)」

「Hollywood!?(ハリウッド!?)」

アランは、さらに興奮した。

「Which movie?(何の映画?)」

「‘Digital Ghost’…(『デジタル・ゴースト』っていう…)」

「Digital Ghost! I saw it! Amazing film!(デジタル・ゴースト! 見たぞ! すごい映画だった!)」

「Thank you…(ありがとうございます…)」

健一は、少し照れた。


ジェイクが、横から言った。

「Wait. How do you write with AI?(待て。AIでどうやって書くんだ?)」

「Well, I create prompts, get the output, and then…I edit it.(えっと、プロンプトを作って、出力を得て、それから…編集します)」

「Edit?(編集?)」

ジェイクの目つきが、変わった。

「How much?(どれくらい?)」

「Well…I refine the language, adjust the structure, polish the prose…(えっと…言葉を洗練させて、構造を調整して、文章を磨いて…)」

「…」

ジェイクは、黙った。

そして、言った。

「That’s the problem.(それが問題だ)」

「Huh?(え?)」


ジェイクは、身を乗り出した。

「You know what editing is? It’s like taking a shit and wiping your ass. The smell is gone. The rawness is gone. You’ve sanitized it. Made it ‘acceptable.’ But you killed what made it real.(編集が何か分かるか? クソしてケツ拭くようなもんだ。匂いが消える。生々しさが消える。清潔にしちまう。『受け入れられる』ものにする。でも、本物にしてたものを殺すんだ)」

「…」

健一は、固まっている。

ジェイクの声は、さらに熱を帯びた。

「You want to wipe your ass? Jump in the river! Don’t just wipe—JUMP! Wash in the river! Feel the cold! Feel the current! That’s real!(ケツ拭きたくなったら、川に飛び込め! ただ拭くだけじゃダメだ—飛び込むんだ! 川で洗え! 冷たさを感じろ! 流れを感じろ! それが本物だ!)」

「…」

「You edit at your desk? That’s bullshit! You need to LIVE it! Jump in! Get dirty! THEN write! No polish, no refinement, just raw truth!(デスクで編集? クソだ! 生きる必要がある! 飛び込め! 汚れろ! それから書け! 磨きなし、洗練なし、ただ生の真実だ!)」


健一は、完全に圧倒されていた。

(ケツ…川…飛び込む…?)

(何言ってるんだ、この人…)


その時、アランが口を挟んだ。

「Wait, Jake. I disagree.(待て、ジェイク。それは違う)」

「What?(何?)」

「Editing is part of the process. I spent two years editing ‘Heard.’ Dozens of revisions. That’s how I made it great.(編集はプロセスの一部だ。俺は『ハード』を2年かけて編集した。何十回も修正。それで偉大にした)」

「You RUINED it!(台無しにしたんだ!)」

「I refined it! The first draft was a mess!(洗練させたんだ! 最初の草稿はめちゃくちゃだった!)」

「That mess was REAL! You polished it to death!(そのめちゃくちゃが本物だった! 磨いて殺したんだ!)」


ジェイクは、立ち上がった。

「I wrote ‘Under the Road’ in three weeks! One long scroll! No editing! That’s how you capture truth!(俺は『アンダー・ザ・ロード』を3週間で書いた! 1本の長い紙に! 編集なし! それが真実を捉える方法だ!)」

アランも、立ち上がった。

「And it was unreadable garbage!(それで読めないゴミだった!)」

「It was ALIVE!(生きてたんだ!)」

「It was CHAOS!(カオスだった!)」

「Chaos is life!(カオスが人生だ!)」

「Order is art!(秩序が芸術だ!)」

二人、睨み合う。

健一は、二人の間で小さくなっている。


アランが、健一に言った。

「Kenichi, don’t listen to him. Editing is craftsmanship. It’s how you make something great.(健一、こいつの言うことは聞くな。編集は職人技だ。何かを偉大にする方法だ)」

ジェイクが、反論した。

「Craftsmanship? You want to wipe shit? Jump in the river! Don’t sit at your desk polishing turds!(職人技? クソ拭きたいのか? 川に飛び込め! デスクに座ってクソ磨いてんじゃねぇ!)」

「But without editing, it’s just shit! Nobody wants to read shit!(でも編集なしじゃ、ただのクソだ! 誰もクソなんて読みたくない!)」

「Exactly! It’s shit! But it’s REAL shit!(その通り! クソだ! でも本物のクソだ!)」

「Who cares about real if it’s unreadable!?(読めなかったら本物でも誰が気にする!?)」

「Real people care! Not your polished, sanitized readers!(本物の人間が気にする! お前の磨かれた、清潔な読者じゃない!)」


健一は、どちらを見ていいか分からなかった。

(どっちが正しいんだ…?)

「But…I made 1.2 billion dollars at the box office…(でも…興行収入12億ドルだったんだけど…)」

健一は、小さく言った。

二人、同時に健一を見た。

そして、同時に言った。

「So what?(だから何?)」

「…」

健一は、完全に言い負かされていた。


アランが、座りながら言った。

「Hollywood? Commercial crap!(ハリウッド? 商業的なクソだ!)」

ジェイクも、座って頷いた。

「Mass-produced garbage! We’ve been writing for 40 years! Underground! Pure!(大量生産のゴミだ! 俺たちは40年書いてきた! 地下で! 純粋に!)」

「No Hollywood, no money, just art!(ハリウッドなし、金なし、ただ芸術だ!)」

アランは、胸を張った。

「We’re legends, man!(俺たちレジェンドだぜ!)」


健一は、完全に打ちのめされていた。

(レジェンドたちが…俺の仕事を…)


その時、劫火が口を開いた。

「映画化されたから何だ」

「…」

みんな、劫火を見た。

炎は、ビールを飲みながら続けた。

「映画化されようが、本が売れようが、便所の落書きの方が本質だ」

「…」

「あんたのAI小説、悪くねぇ。でも、綺麗に磨きすぎた。生々しさが消えてる」

「…」

健一は、何も言えなかった。

劫火は、グラスを置いた。

「編集ってのは、クソを拭く行為だ。匂いを消す。生々しさを消す。綺麗にする。でも、それで本質も消えちまう」

「…」

「AIが出したまんまなら、まだ荒削りの面白さがあったかもな。でも、お前が編集して、整えて、磨いて…全部殺しちまった」

劫火は、少し笑った。

「便所の落書きの方がまだマシだ。誰も編集しねぇ。誰もケツ拭かねぇ。川に飛び込んだら、そのまま汚れてろ。それが本物だ」

そして、立ち上がった。

「俺は帰る。くだらねぇ」

劫火は、店を出ていった。


(便所で誰もケツを拭かない?それは流石に…)

だが、健一は何も言えなかった。


健一は、完全に打ちのめされていた。

アランとジェイクは、また言い争いを始めていた。

「Your ‘purity’ is just laziness!(お前の『純粋さ』はただの怠惰だ!)」

「Your ‘craftsmanship’ is just fear!(お前の『職人技』はただの恐怖だ!)」

「Fear of what!?(何の恐怖だ!?)」

「Fear of being real!(本物であることの恐怖だ!)」

「Jake, you’re insane.(ジェイク、頭おかしいぞ)」

「I’m FREE!(俺は自由だ!)」


健一は、ビールを飲んだ。

一気に。

(もう、何が何だか…)

ジェイクが、健一の肩を叩いた。

「But that’s okay, Kenichi. You’re learning.(でも大丈夫だ、健一。学んでるんだ)」

アランも、頷いた。

「Keep writing. Find your voice. Whether you edit or not.(書き続けろ。自分の声を見つけろ。編集するかしないかは別として)」

「But we disagree on which is right!(でも、どっちが正しいかは意見が分かれる!)」

二人、また睨み合った。

健一は、溜息をついた。

「…Thank you.(ありがとうございます)」

そして、また一気にビールを飲んだ。


30分後。

健一は、6杯目のビールを飲んでいた。

「Kenichi! You’re drinking too much!(健一! 飲みすぎだぞ!)」

アランが、心配そうに言った。

「I’m fine…I’m fine…(大丈夫…大丈夫です…)」

健一は、少しふらついていた。

「I have…soul too…you know…(僕だって…魂…ありますよ…)」

「Sure, sure. But maybe you should stop now.(そうだな、そうだな。でももう止めた方がいいぞ)」

「No…one more…(いや…もう一杯…)」

健一は、グラスを取ろうとした。

でも、手が震えている。

そして。

「…Ugh.(うっ)」

健一の顔が、青ざめた。

「Kenichi?(健一?)」

「…I feel sick…(気持ち悪い…)」

健一は、トイレに駆け込んだ。


数分後。

健一は、トイレで吐いていた。

「Ugh…」

(情けない…)

その時、スマホが鳴った。

カヨからだ。

『どこ?』

健一は、震える手で返信した。

『Dharma Beans…』

『今から行く』

(やばい…)


15分後。

店のドアが開いた。

カヨが入ってきた。

アランとジェイクは、席に座っていた。

健一は、トイレから出てきたところだった。

顔が青い。

カヨは、健一を見た。

そして、テーブルのビールグラスを見た。

6つ、空になっている。

「…何勝手にビール飲んでんの?」

カヨの声は、冷たかった。

「…Sorry.(ごめん)」

健一は、小さく謝った。

カヨは、溜息をついた。

「もう勝手に飲んだらダメ」

「…Yes.(はい)」

健一は、頭を下げた。


その時、アランが立ち上がった。

「Wait, Kayo!(待ってくれ、カヨ!)」

「What?(何?)」

「Don’t be so hard on him! We got carried away! Our fault!(そんなに厳しくしないでくれ! 俺たちが調子に乗らせちゃったんだ! 俺たちのせいだ!)」

ジェイクも、頷いた。

「Yeah! Kenichi’s not used to drinking like us. We should’ve watched his pace!(そうだ! 健一は俺たちみたいに飲み慣れてない。ペース見てやるべきだった!)」

カヨは、二人を見た。

冷静に。

「…So you both take responsibility?(二人とも責任を取るの?)」

「We do!(取る!)」

アランは、真剣な顔をしていた。

「From now on, we’ll make sure he doesn’t drink too much. Two beers max for Kenichi!(これからは、健一が飲みすぎないよう気をつける。健一は2杯まで!)」

ジェイクも、拳を胸に当てた。

「We’ll protect our friend’s health! Brotherhood means looking out for each other!(友の健康を守る! 兄弟愛ってのは、互いを気遣うことだ!)」

「…」

カヨは、少し考えた。

そして、言った。

「Fine. But there are conditions.(いいわ。でも、条件があるわ)」

「Conditions?(条件?)」

「Kenichi gets two beers max. Drinking once a week only. And you bring me the receipt every time.(健一はビール2杯まで。お酒は週一回。毎回レシート持ってきなさい)」

「…」

アランとジェイクは、顔を見合わせた。

そして、笑った。

「Deal! That’s totally doable!(了解! それくらい余裕だ!)」

「Yeah! We’ll keep Kenichi safe!(ああ! 健一を守る!)」

二人は、ハイタッチした。

「Yeah!(イェーイ!)」

カヨは、呆れた顔をしていた。

健一は、その光景を見て、少し笑った。

(レジェンドたちが…俺の保護者に…?)

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