【劇場版3・最終決戦】破壊の猫皇帝に『聖サン・ジェンナーロでも順番を待て!』の平手打ち!炭水化物ゼロの銀河料理大会を、ナポリ3大肉料理(サルシッチャ・ブラチョーラ・イスキア風一角翼兎)で制覇する!
恐竜王レクソールと五十体の宇宙恐竜人たちを宇宙から連れ帰り、熱々の『アクアパッツァ』と氷点下18℃の『リモンチェッロ・ババ』で「人間の生寿司よりも温かいナポリ料理の方が一億倍美味い!」と改心させてから、王都『新ナポリ(ネアポリス)』には最高に陽気で平和な日々が流れていた。
それは、気持ちのいい風が吹く日曜日の午後のことだった。
夜の営業開始を前にした俺のピッツェリアの特大テーブルには、いつものように賑やかな常連たちが顔を揃えていた。
俺の親友である『白銀の暁』の剣聖レオ、タンクのゴラン、聖女エレナ、大魔導士ヴィクトル。
すっかり若返ったアルデバラン国王と幼いソフィア王女。
さらには『創世の魔王』、『海神ネプトゥーノ』と料理長トリトン、額にまだたんこぶの跡が残っている『天界の最高神』と『地底の獄炎王』、そしてテラス席で日向ぼっこをしている身の丈四メートルの『恐竜王レクソール』までが同じテーブルを囲み、今夜のメニューについて楽しそうに言い争っていた。
一方、カラーラ産白大理石のカウンターの後ろでは、俺と二番手シェフ(セコンド・ピッツァイオーロ)のカイル、そして【無限次元倉庫】を持つ食材管理長のニコの三人が、夜の仕込みの最終確認をしていた。
「アンジェロ師匠」
ニコがステンレスの作業台の隅に置かれた小さな素焼きのボウルを指差して尋ねた。
「今朝、港の漁師さんたちがオマケで置いていってくれたこの『新ナポリ湾のトンノラット(鮪鼠魚)』の切れ端はどうしましょうか? 丸っこい体にネズミみたいなヒゲが生えているせいで見栄えが悪く、市場でも一キロ銅貨二枚で買える『王国で一番安物の雑魚』だからって、よその料理屋ではみんなゴミ箱に捨ててしまうそうですが……」
その瞬間、俺のこめかみに太い青筋が浮き出た。
「トンノラットをゴミ箱に捨てるだと!?」
俺はボウルを手に取って怒鳴った。
「いいかニコ、この胸に刻み込んでおけ! 俺の厨房ではな、たとえ新ナポリで一番安物のトンノラットだろうが、食べ物を1グラムたりとも無駄に捨てたりしねぇ! 確かにこいつは見た目がちょっとネズミに似てて値段もタダ同然だがな、血合いを綺麗に掃除して、自分の骨の出汁でしっとり蒸し上げ、俺の『サルヴァトーレ爺ちゃんのオリーブオイル』とパンテッレリーア島のケッパー、ガエータ産の黒オリーブと一緒にオイル漬け(ソットーリオ)にしてみろ! 高級な本マグロの大トロ(ヴェントレスカ)が裸足で逃げ出すくらい濃厚で柔らかくなるんだ! ほら、この小鉢に盛ってカウンターの端に出しておけ。最初に入ってきた腹ペコの客への突き出し(アンティパスト)にしてやるからな!」
俺がエメラルドグリーンのオイルに浸かったピンク色の『トンノラットのオイル漬け』の小鉢を、白大理石のカウンターの上にコツンと置いた――まさにそのコンマ一秒後だった。
――ズゴオオオオオオオオオオオオオンッ!!!
新ナポリの青い空が、前触れもなく不気味な『紫色の宇宙空間』へと変色した!
太陽の光が遮られ、大気が鉛のように重くなって街中の石畳がミシミシとひび割れる中、雲を突き抜けて「黄金の逆ピラミッド型をした超巨大宇宙船」が音もなく降下してきたのだ!
ピラミッドの先端から紫色の光の柱がピッツェリアの真ん前に降り注ぎ、入り口の扉の鈴が「チリン……」と小さく鳴った。
ゆっくりと扉を開けて入ってきたのは、人間でもなければ迷宮の魔物でもなかった。
身長百七十センチほどの、後ろで手を組んで二足歩行する細身の『猫』だった。
毛足が極端に短いスフィンクスのような艶やかな「紫色の毛並み」を持ち、ピンと尖った二つの長い耳と、しなやかに揺れる長い尻尾。首には古代エジプトのファラオのような黄金と蒼玉の首飾りを着け、足首の締まった白い絹のダボダボのズボンを履いている。そして半眼に細められた黄金色の二つの瞳は、百億年の退屈を煮詰めたような圧倒的な威圧感を放っていた。
魔力感知スキルを持たない俺は、その紫色の猫を上から下まで眺めて首をかしげた。
(……おい待てよ。紫色のスフィンクスみたいな毛並みで、エジプトのファラオみたいな首飾りをして、不機嫌そうに二足歩行する猫だと……? なんか俺、地球にいた頃、日曜日の朝のテレビでこいつにそっくりな『食いしん坊の破壊神様』を見たことがある気がするんだが……どこで見たんだっけな? まあいい、どうせ気のせいだろう!)
だが――その紫色の猫が俺の店のタイルに片足を踏み入れた瞬間。
――ガシャアアアアアンッ!!
テーブルに座っていた『創世の魔王』『天界の最高神』『地底の獄炎王』『海神ネプトゥーノ』、そしてテラスにいた身の丈四メートルの『恐竜王レクソール』の五人が、同時に手にしていたグラスを取り落とし、モッツァレラチーズのように真っ白な顔になって椅子から転げ落ちた!
そして、星や大陸すら砕くはずの神々と魔王と恐竜王が、全員ガタガタと子犬のように震えながら紫色の猫の足元へと這いつくばり、床に額を擦りつけながら――なんと猫の『紫色の両手(前足)の甲と爪先』に、次々と必死にキスの雨を降らせ始めたのだ!!
「ひ、ひぃぃぃっ!! ぜ、全銀河の最高支配者にして、十二宇宙の頂点に君臨する『破壊の猫皇帝』様ァァァッ!!」
天界の最高神が涙声で猫皇帝の右手にチュッチュッとキスをしながら叫んだ。「な、なんという畏れ多いことでしょう! まさかこのような辺境の銀河まで直接お運びになられるとは!」
「お、お許しください猫皇帝陛下ァァッ!」
創世の魔王と地底の獄炎王が、猫皇帝の左手の肉球に交互にキスをしながら震え上がった。「レオ、ゴラン、お前たちも今すぐ床に伏せて陛下のお手にキスをしろ! このお方はな、三百年前に『昼寝の枕が二ミリ高かった』という理由だけで、北の銀河系を三つまとめて指先ひとつで消滅させた、全宇宙で最も恐ろしい絶対神なのだぞ!!」
『お、お慈悲をぉぉっ! わしらの星を消さないでくだされぇぇっ!』
あの最強の恐竜王レクソールでさえ、四メートルの巨体をダンゴムシのように小さく丸め、涙目で猫皇帝の足の甲にチュッとキスをして命乞いをしていた!
『ふん、暑苦しい連中だニャ。よだれで余の毛並みが濡れるであろうが』
破壊の猫皇帝は大きなあくびを一つすると、長い耳をピクリと動かして鼻をひくつかせた。
『余は自分の星で三百年ぶりの昼寝を楽しんでおったのだ。だというのに数日前、余の星のすぐ横を「奇妙な石造りの家」が光の速度で飛び去っていきおってな……その後ろから、魚の頭をトマトで煮込んだスープと、485℃の樫の薪で焼いた小麦とチーズのたまらなく美味そうな匂いが宇宙空間に漂ってきたのじゃ! おかげで余は目が覚めてしまい、腹が減って気が立っておる。もしこの店に余を満足させる食い物がなければ、この銀河ごと消してまた寝ることにするニャ』
猫皇帝の黄金の瞳が、店内でただ一人、エプロンの上で腕を組んで普通に突っ立っている俺へと向けられた。
俺は「腹が減って気が立っている」というその痩せた紫色の猫と、さっきカウンターの上に置いたばかりの『トンノラットのオイル漬けの小鉢』を見比べた。
(なんだ、宇宙の皇帝だか何だか知らねぇが、要するに匂いに釣られてやってきたただの腹ペコの客じゃねぇか。……よし、食べ物は絶対に捨てちゃならねぇ。たとえ新ナポリで一番安物のトンノラットだろうと、腹を空かせた猫に出してやれば立派なご馳走だ!)
俺はカウンターの上の小鉢を、猫皇帝の鼻先へとスッと押しやった。
「ようこそ新ナポリへ、紫の猫の大将! 薪窯は今夜の営業に向けて温めてるところだが、そんなに腹が減ってるなら、まずはこの突き出しを食いな。新ナポリ湾で獲れた一番安物の雑魚『トンノラットのオイル漬け(ソットーリオ)』だ。よその店じゃゴミ箱に捨てるような安い魚だが、俺の厨房じゃ骨の一本まで無駄にしない。味見してみな!」
その瞬間、床に伏せていた天界の最高神と創世の魔王と恐竜王レクソールが、白目を剥いて気絶しかけた。
『お、おいアンジェロォォッ!? 貴様、全宇宙の破壊の猫皇帝陛下に、一キロ銅貨二枚のネズミ魚の切れ端を出しただとぉぉっ!? 終わりだ、銀河が吹き飛ぶぞォォッ!!』
猫皇帝の長いヒゲがピクリと動いた。
だが、小鉢の中でサルヴァトーレ爺ちゃんのエメラルドグリーンのオイルに浸かり、丸っこい小ネズミのような形をしたピンク色の魚肉を見た瞬間――宇宙の支配者としてのプライドよりも先に、猫としての「野生の本能」が反応した!
猫皇帝は黄金の瞳を真ん丸にし、ピンクの舌をペロッと伸ばすと、トンノラットのオイル漬けを一口でパクリと咥え込んだ。
――モグ……モグ……。
次の瞬間、猫皇帝の全身に稲妻が走り、長い尻尾の毛がタワシのようにボワッ!と逆立った!
『な、な、なんじゃこの食べ物はァァァッ!? ミャアアアアアッ!!』
猫皇帝は両手で自分の頬を押さえ、目をキラキラと輝かせて絶叫した。
『見た目は猫の本能をくすぐる小ネズミの形をしておるのに、噛んだ瞬間、宇宙大洋の最高級マグロの大トロよりも濃厚で甘い脂が舌の上でとろけるではないか!! しかもこの緑色の神聖なオイルと、ケッパーの酸味、黒オリーブの塩気が魚の旨味を百倍に引き立てておる! こんな安物の端材がこれほど美味いとは……!!』
猫皇帝はわずか二秒で小鉢の底のオイルまでペロペロと舐め尽くした。
だが、その一口が猫皇帝の「暴走する食欲」に火をつけてしまった!
『突き出しの雑魚でこれほどの味なら、その奥の厨房の鍋にはどれほど美味いものが隠されておるのだ!? 待っておれん、余が直接味見してやるニャ!!』
なんと猫皇帝は、俺の許可も取らずにヒョイッと身のこなし軽く【カラーラ産白大理石のカウンターを飛び越え】、土のついたブーツのまま俺の神聖な厨房のど真ん中に降り立つと、洗ってもいない猫の手(前足)の爪を伸ばして、コンロの上で煮えていた仕込み用の鍋の中へ直接手を突っ込もうとしたのだ!!
その瞬間。
俺の頭の中で、プツン、と何かが切れる音がした。
店に入ってきた時に「こんにちは」の一言もなかったのは百歩譲って許してやる。
だが――料理人が命を懸けて清潔に保っている厨房の中へ無断で土足で踏み込み、手を洗わずに人の鍋へ前足を突っ込もうとするなど、俺の前では絶対に許されない万死の大罪だった!
俺は魔力もスキルも一切使わず、セモリナ粉がたっぷりついた分厚い右の手のひらを大きく振りかぶると、鍋に伸びかけた猫皇帝の前足を弾き飛ばし、そのまま猫皇帝の紫色の左頬に――本場ナポリの生地伸ばし奥義『スキアッフォ(職人の全力平手打ち)』を、渾身の力で叩き込んだァァァッ!!
――パァァァァァァァァァァンッ!!!
新ナポリの街中の窓ガラスがビリビリと震えるほど痛快なビンタの音が響き渡った!
全宇宙の最高支配者である猫皇帝は、「ニャッ!?」という間抜けな声とともに空中で二回転半し、カウンターの外のホールまで吹き飛んで着地した。
その紫色の気高い左頬には、小麦粉で真っ白になった『俺の五本の指の手形』が、スタンプを押したようにくっきりと刻み込まれていた!
店内の時間が、完全に凍りついた。
剣聖レオ、ゴラン、エレナ、ヴィクトル、カイル、ニコ、そして床で手をキスしていた創世の魔王、天界の最高神、地底の獄炎王、海神ネプトゥーノ、恐竜王レクソールの全員が、心臓が口から飛び出たような顔で石像と化した。
『き……貴様……』
猫皇帝がゆっくりと顔を上げた。
その黄金の瞳が血のように紅く染まり、全身から噴き上がった黒紫色の『破壊のオーラ』によって店外の広場の石畳が重力に逆らって宙へ浮き上がり、空が真っ二つに割れて雷鳴が轟いた!
『よくも……よくも全宇宙の最高支配者たるこの余の顔を引っ叩きやがったなァァァァッ!! うおおおおおおおおおおっ!!』
猫皇帝が右手の指先を天に向けると、その爪の上に、新ナポリどころかこの惑星系すべてを一瞬で原子の塵に変える巨大な『破壊エネルギーの黒球』が出現した!
だが、俺は一歩たりとも後ろへ下がらなかった。
それどころかカウンターから身を乗り出し、首筋に船のロープのような血管を浮き上がらせて、その猫皇帝の鼻先に鋼鉄の窯ベラ(パーラ)を突きつけて倍の大声で怒鳴り返した!
「うるせぇ、誰が宇宙の支配者だか知らねぇが、その汚い前足を引っ込めろこの泥棒猫がァァァッ!!」
俺の怒号が破壊のオーラを真っ向から押し返した。
「耳の穴をかっぽじってよく聞け! 外の宇宙じゃお前が王様かもしれねぇし、そこの魔王やトカゲどもに手をキスさせてりゃいい! だがな、この扉を一歩入った瞬間から、この厨房のルールを決めるのは『料理人の俺』だ!! いいか、たとえ俺の故郷ナポリの守護聖人である『聖サン・ジェンナーロ様(San Gennaro)』が空から大行列を連れて俺のピッツァを食いに降りてきたってな、許可なく厨房に入ることは絶対に許さねぇ! 聖サン・ジェンナーロ様だって、ちゃんと手を洗って、テーブルに座って、他の客と同じように自分の順番を待って料理に敬意を払うんだよ!! それが出来ねぇ奴には、お代わりにもう一発右の頬にも手形を押してやるから覚悟しろ!!」
『な、なんだとこの定命のパン焼き風情がァァッ!! サン・ジェンナーロだか何だか知らんが、貴様の店ごとこの銀河を今すぐ消滅させて――!!』
「「『お、お待ちください猫皇帝陛下ァァァッ!! どうかお鎮まりをォォォッ!!』」」
猫皇帝が破壊の球体を振り下ろすコンマ一秒前!
『創世の魔王』『天界の最高神』『地底の獄炎王』『海神ネプトゥーノと料理長トリトン』、そして四メートルの『恐竜王レクソール』の六人が、涙と鼻水まみれになって一斉に猫皇帝の両足と腰と尻尾にしがみつき、再びその紫色の手に必死にキスをしながら全力で引き止めたのだ!
「お、おやめください陛下!!」と創世の魔王が号泣しながら叫んだ。「その男は狂っております! 我々も全員そいつにビンタされましたが、そいつの料理の腕だけは本物なのです! 今ここで銀河を消してしまったら、さっきの『トンノラット』の百倍美味いメインディッシュを永遠に食べられなくなってしまいますぞ!!」
『そ、そうですぞ猫皇帝様ぁぁっ!』と恐竜王レクソールも大きな頭を床に打ちつけて懇願した。『わしらもそいつらを寿司にしようとして逆にアクアパッツァで胃袋を掴まれたのです! どうか星を壊すのではなく、料理で勝負をつけてくだされぇぇっ!!』
「そうだ、海神と恐竜王の言う通りです、陛下!」と天界の最高神と冥府の獄炎王も必死に叫んだ。「無礼なその料理人を罰するなら、陛下の宇宙船に乗っている『銀河最高峰の三つ星宇宙料理人たち』と料理対決をさせて、実力でひざまずかせてやりましょう!!」
猫皇帝の指先が、ピタリと止まった。
そのお腹が、さっき食べた『トンノラットのオイル漬け』の味を思い出して『グゥゥゥゥッ……!』と大きく鳴ったのだ。
『……ふん。確かに、晩飯を食う前に料理人を消してしまうのは惜しいニャ』
猫皇帝は指先の破壊エネルギーをフッと消し去ると、頬の小麦粉を払って、獰猛な黄金の瞳で俺を睨みつけた。
『いいだろう、ナポリの料理人アンジェロよ! この魔王や恐竜王どもの顔に免じて、今すぐ銀河を消すのだけはやめてやる! だが、余の顔を引っ叩いて「順番を待て」などとほざいた罪は、ただでは済まさんぞ!』
猫皇帝が指をパチンと鳴らすと、上空の黄金ピラミッドから三つの光が降り注ぎ、白銀の宇宙調理服を纏った異星の巨匠――『銀河宮廷・三大宇宙シェフ』が広場の中央に出現した。
『これから一時間後、この広場で千年に一度の【全銀河・千年料理大戦】を開催する! 貴様は余の三大宇宙シェフと戦い、余を最も満足させた一皿を作らねばならん! ――ただし、貴様にいつものインチキは一切使わせんぞ!』
猫皇帝は鋭い爪を一本突き立て、悪魔のような笑みを浮かべて宣言した。
『余は事前に貴様のことをすべて調べてある! 貴様がこれまで魔王や神々を倒してきた料理は、すべて「ピッツァ」「パスタ」「パン」「リゾット」「ティラミス」……すなわち、すべて小麦粉や米を使った【炭水化物】ばかりではないか! だが余は誇り高き肉食獣・猫族の皇帝である! よって、この千年料理大戦の絶対ルールはただ一つ――【炭水化物ゼロ・純粋なメイン肉料理のみ】とする!!』
広場中に、衝撃のどよめきが走った。
猫皇帝の声が、逃れられない死刑宣告のように響き渡る。
『いいか、小麦粉、ピッツァ生地、パスタ、パン、米、ジャガイモ、トウモロコシ……貴様の料理の中に「たった1グラムでも炭水化物」が入っていたら、その瞬間に反則負けとしてこの銀河を吹き飛ばす! さらに、もし4人の中で「2位以下」になった場合も、やはりこの銀河を跡形もなく消滅させる! さあ、粉もパンもパスタも封じられたただのピッツァ職人に、全宇宙の頂点の肉料理が作れるかニャ!? フハハハハハ!!』
広場に降り立った三大宇宙シェフたちは、俺を見て勝ち誇ったように高笑いを上げた。
「ハッハッハ! ピッツァ職人に小麦粉とパスタとパンを禁じるなど、剣士から剣を取り上げるようなものだ! 我々の勝ちは決まったも同然だぞ!」
店内では、レオ、ゴラン、エレナ、ヴィクトル、そして魔王や海神たちまでもが真っ青になって俺を取り囲んだ。
「ア、アンジェロ師匠、どうしましょう!? ピッツァも、パスタも、リゾットも、パヌオッツォも、パーネ・カフォーネも全部禁止だなんて……!」
俺は一秒間だけ目を閉じ、それから――新ナポリの青空が割れるほど豪快に腹を抱えて笑い飛ばした!
「ガッハッハッハッハ!! ピッツァとパスタが禁止だから俺の負けだと!?」
俺は白大理石のカウンターをバンッと叩き、カイルとニコを見てニヤリと笑った。
「おいお前ら、ナポリの人間が毎日小麦粉と水ばっかり食ってると思ったら大間違いだぞ! ナポリの日曜日の食卓じゃな、山盛りのパスタを食った後に、本当の王様である『セコンド・ピアット(メインの肉料理)』がドカンと出てくるんだ! 粉も米もジャガイモも1グラムも使わずに、あの生意気な猫皇帝が床にひざまずいて泣き叫ぶほどの【本場ナポリの3大伝統肉料理】を食わせてやる!」
俺は腕まくりをして、店の前で震えているレオ、ゴラン、天界の最高神、地底の獄炎王、そして恐竜王レクソールを指差した。
「いいかお前ら、自分の住んでる銀河が消し炭になるのが嫌なら、今から十分以内に俺が言う『二つの究極の魔物肉』を無傷で狩って、ニコの【無限次元倉庫】に入れて運んでこい!
一つ目は、冥府の火山の奥に棲む、極上の赤身と甘い脂を持った猪とライオンの合体魔物『冥府の獅子豚』!
そして二つ目は、天界の黄金の雲の上に棲む、額に水晶の角と背中に白い翼を持った幻の神獣『天界の有翼一角兎』だ!!
それに俺の【無限食材庫・極】にあるナポリの秘宝野菜を合わせて、『サルシッチャ・エ・フリアリエッリ』『ナポリ風ブラチョーラ』、そしてイスキア島の至宝『ユニ・コニッリオ(一角翼兎)のアッリスキターナ』の3品を同時に作ってやる!!」
「「『りょ、了解だアンジェロォォッ!! 全宇宙の命運は任せたぞォォッ!!』」」
自分の命と銀河がかかっているとなれば、神も魔王も恐竜も速い。
剣聖レオとゴラン、天界の最高神、地底の獄炎王、創世の魔王、そして恐竜王レクソールがニコと一緒に次元の扉へ飛び込み、なんとわずか八分後に、完璧に血抜きされた巨大な『冥府の獅子豚』と、シルクのように輝く白身肉を持つ『天界の有翼一角兎』をカウンターへと運び込んだのだ!
一方、向かいのステージでは、三大宇宙シェフたちが一足先に料理を完成させて猫皇帝の前に差し出していた。
彼らは宇宙怪獣の肉の「中心のヒレ肉5%だけ」をレーザーメスで切り出し、残りの95%の骨や内臓やバラ肉をすべてゴミ箱へ捨てて、分子調理光線で焼いたサイコロステーキに化学調味料の泡を乗せた皿を出した。
猫皇帝はそれを一口食べたが、退屈そうに耳をかいて溜息をついた。
『……ふん。柔らかくはあるが、肉汁も魂も抜けたただの病院食だニャ。60点といったところか。おい人間、もし貴様の皿がこれ以下なら、予告通り銀河を消すぞ!』
「おう、その猫の口をあんぐり開けて待ってろ、皇帝陛下!」
俺とカイルとニコは、ピッツェリアの中から湯気を噴き上げる【三つの巨大なテラコッタ(素焼き)の深鍋】を抱えて現れ、猫皇帝の目の前のテーブルにドォン!と並べた!
俺が三つの鍋の蓋を同時に開けた瞬間――広場全体に、十万人の観衆と神々がその場でよだれを垂らして膝から崩れ落ちるほど暴力的で芳醇な「ナポリの肉と野菜とトマトと白ワインの香りの大津波」が炸裂した!
「よく見ろ、猫の大将! 小麦粉も米もイモも1グラムも使っていねぇ、これが炭水化物ゼロ・廃棄ゼロで挑む『本場ナポリのセコンド・ピアット(肉料理)三銃士』だ!!」
■【第1の鍋:『冥府の獅子豚の手切りサルシッチャと、本場ナポリのフリアリエッリ(Salsiccia e Friarielli)』!】
「まず一つ目の鍋だ!」
俺は鮮やかな深緑色の葉と、ぷっくりと膨らんだ黄金色のソーセージが絡み合う鍋を指差した。
「ナポリでピッツァの次に愛されている絶対のコンビがこれだ! この緑の野菜は、俺の【無限食材庫・極】から出した、ヴェスヴィオ火山の麓でしか育たないナポリの聖なる野菜『フリアリエッリ(Friarielli)』だ! ブロッコリーや菜の花に似てるが、独特の気高い『ほろ苦さ』と旨味がある! いいか、ド素人はこれを湯で茹でて水っぽくしちまうが、本場のナポリじゃ絶対に水で茹でたりしねぇ! 洗った生のフリアリエッリを、たっぷりのエクストラバージン・オリーブオイルと潰した皮付きニンニク2片、そして赤唐辛子の鍋に直接放り込み、蓋をして野菜自身の水分とオイルだけで蒸し炒め(ストゥファーティ)にするんだ!」
俺はさらに、そのフリアリエッリの上でジュウジュウと肉汁を弾けさせている極太のソーセージを指差した。
「そして相棒は、そいつらがゴミ扱いした『冥府の獅子豚』の肩肉と腹バラ肉を、ミンチ機を使わずに二本の包丁で粗く手切り(プンタ・ディ・コルテッロ)にし、塩と黒胡椒と白ワイン、野生のフェンネルシードを練り込んで腸に詰めた自家製生ソーセージ『サルシッチャ』だ! 焼く時に爪楊枝で皮にプツプツと穴を開けてからフリアリエッリの鍋に投入したから、獅子豚の甘くて濃厚な脂がすべてフリアリエッリの葉に染み込んでいる!」
■【第2の鍋:『日曜日の女王!松の実とレーズンを巻いたナポリ伝統のブラチョーラ・アル・スーゴ(Braciole al sugo)』!】
「続いて二つ目の鍋だ!」
俺はルビー色の濃厚なトマトソースの海の中で、太巻きのように丸々と煮込まれた肉のロール巻きを示した。
「よその地方じゃ『ブラチョーラ』って言うと骨付きのステーキのことだが、ナポリで『ブラチョーラ』と言ったら、日曜日にマンマ(お袋)が作るこの【特製ロール肉】のことだ! 獅子豚の赤身の薄切り肉を肉叩きで広げてな、その内側に刻んだニンニク、イタリアンパセリ、たっぷりの『24ヶ月熟成パルミジャーノ・レッジャーノ』と『ペコリーノ・ロマーノ』、そしてナポリ伝統の最大の秘密――香ばしい『松の実』と甘い『干しブドウ(レーズン/ウヴェッタ)』を巻き込んでタコ糸で縛り、骨髄とサン・マルツァーノ種トマトのソースの中で何時間もポコポコ(ピッピアーレ)と煮込んだ一品だ! もちろん、小麦粉なんて1ミリも使ってねぇ!」
■【第3の鍋:『天界の一角翼兎のイスキア島風テラコッタ煮込み(Coniglio all'Ischitana)』!】
「そして最後の三つ目! ナポリ湾に浮かぶ緑の島・イスキア島が世界に誇る、兎肉料理の最高峰『ユニ・コニッリオ(一角翼兎)のアッリスキターナ』だ!!」
俺は黄金色と茜色が混ざり合った濃厚なソースがグツグツと泡立つ三つ目の土鍋を指差した。
「天界の『有翼一角兎』を骨ごとぶつ切りにし、テラコッタの土鍋にオリーブオイルと潰した皮付きニンニク、赤唐辛子を入れて、表面が黄金色になるまでじっくり焼きつけた! そこに辛口の白ワインをたっぷり注いで蒸し焼きにし、半分に切った甘い『ピエンノロ種のミニトマト』と、イスキア島の野生のハーブ『ピペルナ(野生タイムとマジョラム)』、ローズマリーを加えて煮込んである! ――そして、小麦粉を1グラムも使わずに、どうやってこのソースをこんなにドロリと濃厚なクリーム状にしたか分かるか?」
三大宇宙シェフが目を剥いた。「ま、まさか……どうやってデンプンなしでそんなとろみを出したのだ!?」
「俺の【ゼロ・ウェイスト(廃棄ゼロ)】の技だ!」と俺は胸を張って笑った。
「お前らがゴミ箱に捨てた一角翼兎の『新鮮なレバー(肝臓)とハツ(心臓)と腎臓』を、カイルが包丁でペースト状になるまで細かく叩き、仕上げの3分前に鍋のソースの中へ溶かし込んだんだ! そして火を止めてから、俺の『サルヴァトーレ爺ちゃんの生オリーブオイル』をひと回しして乳化させた! 内臓の濃厚なコクとミニトマトの酸味、白ワインとハーブが一つになった、これが本物のイスキア島の漁師と農夫の知恵だ!」
猫皇帝は、もう話を聞いていなかった。
三つのテラコッタ鍋から立ち昇る、ニンニクと唐辛子で炒められたフリアリエッリの香り、松の実とチーズが溶け出すブラチョーラの香り、そして白ワインとレバーで煮込まれた一角翼兎の香りに、猫皇帝の口からは滝のようにキラキラとよだれが溢れ出していたのだ!
『い、いただくニャァァァァッ!!』
猫皇帝は黄金のフォークを両手に握りしめ、まず一つ目の鍋から『獅子豚のサルシッチャとフリアリエッリ』を突き刺して口へ放り込み、続けて二つ目の鍋の『ブラチョーラ』、そして三つ目の鍋の『一角翼兎のアッリスキターナ』を次々と頬張った!
モグ、モグ……ジュワァァァァァァッ!!
【複合ユニークスキル発動:『ゼロ・ウェイストの錬金術(出力300%)』×『炭水化物ゼロ・ナポリ3大肉料理の極致』!!】
――ドゴォォォォォォォォォンッ!!!
猫皇帝の紫色の体から、黄金とエメラルド色の神話級の光柱が噴き上がり、上空の暗雲を一瞬で吹き飛ばして虹をかけた!
『ミャ、ミャ、ミャアアアアアアアアアアアアッ!?!?』
全銀河の最高支配者である破壊の猫皇帝が、両耳をピンと立て、黄金の瞳から大粒の涙をボロボロとこぼしながら天を仰いで絶叫した!
『な、なんじゃこの宇宙の真理を超えた美味さはァァァッ!! まずこの【サルシッチャとフリアリエッリ】! 手切りの獅子豚からジュワッと溢れ出す甘い脂とフェンネルの香りを、このフリアリエッリとかいう葉っぱの「大人のほろ苦さ」とニンニク唐辛子のパンチが完璧に受け止めて、口の中で無限ループを起こしておる!!
そしてこの【ブラチョーラ】! 箸で触れただけで崩れるほど柔らかいお肉の中から、ペコリーノチーズの強烈な塩気と、松の実の香ばしさ、そして「レーズンの優しい甘み」が飛び出してきて、トマトソースの酸味と踊っておるわ!!
極めつけはこの【一角翼兎のイスキア風】じゃ!! 白ワインで煮込まれた兎の肉がシルクのようにしっとりして甘いのに、溶け込んだレバーの濃厚なコクとピエンノロ・トマト、そして最後に垂らされた緑のオイルが絡み合って……余は百億年生きてきて、これほど魂が震える肉料理を食ったことがないニャァァァァッ!!』
十万人の観衆と神々が息を呑む前で、猫皇帝は威厳も何もかもかなぐり捨て、顔を三つの鍋に突っ込む勢いでフォークを高速回転させた!
ゴロゴロゴロゴロ……!!と街全体が揺れるほど巨大な「猫の喉鳴らし(ゴロゴロ音)」を響かせながら、わずか三分間で、三つの鍋に入っていた山盛りのサルシッチャも、フリアリエッリも、ブラチョーラも、一角翼兎の肉も、骨の周りの肉までしゃぶり尽くして完全に平らげてしまったのだ!
――だが。
肉をすべて食べ終えた、まさにその直後だった。
この日一番の「大惨事」が起きたのは。
猫皇帝はハッと息をつき、目の前の三つのテラコッタ鍋の底を見下ろした。
肉と野菜はすべてなくなった。
しかし――三つの素焼きの鍋の底には、まだ深さ2センチ近くにわたって、肉と野菜のすべての魂が溶け出した【究極のソース(スーゴ)】がたっぷりと残っていたのだ!
一つ目の鍋の底には、獅子豚の甘い肉汁とニンニク、唐辛子、フリアリエッリの苦味が溶け込んだ『エメラルドグリーンの極上オイル』。
二つ目の鍋の底には、ブラチョーラのチーズとレーズンと骨髄の旨味を吸い込んだ『ルビー色の濃厚なナポリ風ラグー』。
三つ目の鍋の底には、一角翼兎のコラーゲンとレバー、白ワイン、ミニトマト、そしてサルヴァトーレ爺ちゃんのオイルが乳化した『イスキア風の黄金ソース』!
『む、むむっ……!? 一番美味いエキスが詰まったソースが、鍋の底に残っておるではないか!』
猫皇帝はフォークでそのソースをすくおうとしたが、フォークの隙間からサラリと落ちてしまってすくえない!
たまらず猫皇帝は、自分の顔を三つ目の鍋に突っ込んで、猫の舌で直接舐め取ろうとした――が!
『アチチチチッ!! ニャアアアッ!!』
蓄熱性の高いテラコッタの土鍋はまだチンチンに熱く、猫皇帝は舌の先を火傷して涙目で飛び退いた!
『く、くそっ、フォークではすくえんし、鍋が熱くて舌でも舐め取れん!! なんという拷問じゃ!!』
猫皇帝は鍋の底でキラキラと輝く三種類の極上ソースを見つめ、全身の毛を逆立てて悶絶した。
そして、猫皇帝の黄金の瞳が――ゆっくりと俺のカウンターの後ろへと向けられた。
そこには、485℃の薪窯の余熱(落ちゆく窯)からちょうど今、カイルが木べらで取り出したばかりの、外はパリッパリで中は無数の気泡が空いた2キロの巨大な田舎パン――『焼きたてのパーネ・カフォーネ(Pane Cafone)』が、香ばしい小麦の湯気を立てて並んでいた!
あの白いパンの柔らかい中身をちぎって、この熱い鍋の底に突っ込めば、あの神のソースを最後の一滴まで余さず吸い取って食べることができる!
だが――猫皇帝の脳裏に、1時間前に自分自身が全宇宙に向かって宣言した「絶対の法律」が蘇った。
――『もし1グラムでも炭水化物を出したら、この銀河を吹き飛ばす!』
五秒間。
全宇宙の支配者である猫皇帝は、鍋の底のソースと、カウンターの上の焼きたての『パーネ・カフォーネ』を交互に見つめながら、額から滝のような脂汗を流してプルプルと震えていた。
そして六秒目――。
――ドシャアアアアアンッ!!
なんと、さっきまで神々や魔王に手をキスさせていた全銀河の最高支配者・破壊の猫皇帝が、十万人の観衆とレオたちの目の前で、俺のカウンターの前に【両膝から崩れ落ちて土下座し】、両耳をペタンと横に倒して、子猫のようにボロボロと涙を流しながら泣き叫んだのだ!!
『う、うわあああああんっ!! ア、アンジェロよぉぉ、余が悪かったニャァァァァッ!!』
猫皇帝は床を両手でバンバン叩きながら、プライドを100%捨て去って絶叫した!
『さっきの「炭水化物ゼロ」の法律は、今この瞬間に全宇宙の憲法から永久に廃止するニャ!! こんな悪魔みたいに美味いブラチョーラとイスキア風兎のソースを目の前にして、パンを禁止する法律を作った奴はどこの大馬鹿者じゃ!? 余じゃったわい!! この鍋の底のソースを一滴でも残したら、宇宙のバチが当たって余は夜も眠れん!!
さっき厨房に勝手に入ったことも謝る! ほら、ちゃんと石鹸で前足も洗ったし、その「聖サン・ジェンナーロ」みたいにちゃんとお行儀よく椅子に座って順番も待つから……後生だから、余にその焼きたての『パーネ・カフォーネ』を一切れ恵んで、お前たちの言う【スカルペッタ(皿拭い)】をさせてくれぇぇぇっ!! ミャアアアアアッ!!』
一秒の静寂のあと――。
俺も、カイルも、ニコも、レオも、ゴランも、創世の魔王も、海神ネプトゥーノも、天界の神も、冥府の王も、恐竜王レクソールも、全員がお腹を抱えて涙が出るほど大爆笑した!!
「ガッハッハッハッハ!! だから言っただろ、ナポリの肉料理とソースはな、月が潮を引くみたいに絶対に『パン』を呼ぶように出来てるんだよ!!」
俺は腹の底から笑いながら、焼きたてアツアツの『パーネ・カフォーネ』を両手でバリッ!と豪快に引き裂き、湯気の立つ大きな塊を猫皇帝の両手へと渡してやった。
「ほらよ、猫の大将! 順番を守って手を洗ったいい子には、うちのパーネ・カフォーネはいつだって無料サービスだ! その三つの鍋が鏡みたいにピカピカになるまで、思う存分スカルペッタしな!!」
『ミャアアアアアッ!! ありがとうなのニャ、アンジェロォォォッ!!』
猫皇帝は輝くような笑顔でパーネ・カフォーネを受け取ると、まず一角翼兎のイスキア風ソースにパンをどっぷりと浸し、続けてブラチョーラの赤いラグー、そしてフリアリエッリの緑のオイルをパンで一滴残らず拭い取って、頬っぺたをリスみたいに膨らませて夢中で頬張った!
『う、うまぁぁぁいっ!! パリパリの皮とモチモチのパンが、肉と野菜とワインの旨味を100%吸い込んで……パンと肉料理が口の中で結婚しておるニャァァァッ!! ゴロゴロゴロゴロ……♪』
猫皇帝が幸せの絶頂で鳴らした「ゴロゴロ音」の波動が新ナポリ全体に広がり、広場にいた十万人の市民や冒険者たちの疲れや古傷が一瞬で癒やされただけでなく、三つのテラコッタ鍋はニコがタワシで洗う必要すらないほど鏡のようにピカピカになったのだった!
『決まりじゃ!! 千年に一度の全銀河料理大戦、完全無欠の優勝者は『新ナポリ』のアンジェロとカイルとニコじゃ!!』
お腹がビーチボールのようにポンポンに膨らんだ猫皇帝は、満足げにヒゲを拭うと、全宇宙に向けて高らかに宣言した。
『本日より、この惑星と『新ナポリ』のピッツェリアを、全十二銀河における【最高神聖・絶対不可侵グルメ保護区】に指定する! もし今後、この店に指一本でも敵意を向ける星があれば、余が個人的に飛んできて消し炭にしてやるニャ!』
そしてその日の夜。
食後のティラミスと、氷点下18℃の黄金『リモンチェッロ』を三杯飲んで顔が真っ赤になった全銀河の破壊の猫皇帝は、「この485℃の薪窯の前は、全宇宙で一番ポカポカして昼寝に最高なのニャ……ムニャムニャ……」と呟きながら、俺のピッツェリアの薪窯のすぐ前の温かい石床の上でアンモニャイトのように丸くなり、そのまま幸せそうにイビキをかいて眠り込んでしまった。
俺は白い大理石のカウンターの後ろで、カイルとニコと肩を組み、テーブルで魔王や神々や恐竜王と乾杯して笑い合うレオたち『白銀の暁』の仲間たちと、薪窯の前で丸くなって眠る宇宙最強の「飼い猫」を見つめて、誇らしげに笑った。
相手が迷宮の魔物だろうが、国王だろうが、魔王だろうが、宇宙恐竜だろうが、銀河を消す破壊の猫皇帝だろうが――俺の485℃の薪窯と、食材を1グラムも無駄にしないナポリの料理の前では、全員がただの「腹ペコの家族」だ!
「さあカイル、ニコ! うちの新しい猫の大将が昼寝から目を覚ます前に、明日の分の生地を千個仕込むぞ! 俺たちの『新ナポリ』の伝説は、ここからまだまだ続くからな! ――Buon appetito(ボナペティート/召し上がれ)!!」
(【劇場版3・最終決戦】大団円・完!!)
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■ 今夜お家で再現できる!アンジェロの本場ナポリ「炭水化物ゼロでも絶品(でもパンは必須!)」2大肉料理レシピ ■
【① ナポリの黄金コンビ!『サルシッチャとフリアリエッリ(菜の花・ブロッコリー)のナポリ風ソテー』(2〜3人前)】
(※本場ナポリのフリアリエッリは日本では希少ですが、「菜の花」や「スティックセニョール(茎ブロッコリー)」「カブの葉」で驚くほど美味しく再現できます!最大の鉄則は、野菜を「お湯で茹でずに生のままオイルで蒸し炒めにする」ことです!)
<材料>
・生ソーセージ(サルシッチャ/なければ粗挽き豚ひき肉300gに塩小さじ1/2、黒胡椒、白ワイン大さじ1、フェンネルパウダーまたはハーブを練り込んで棒状に丸めたものでOK!):4〜6本
・菜の花、または茎ブロッコリー・カブの葉:1〜2束(300g)
・ニンニク:2片(皮を剥いて包丁の腹で潰す)
・赤唐辛子:1〜2本
・エクストラバージン・オリーブオイル:大さじ4(たっぷりが命!)
・塩:適量
<黄金の作り方>
1.【野菜は茹でない!】フライパンにたっぷりのオリーブオイル(大さじ4)と潰したニンニク、赤唐辛子を入れて弱火にかけ、ニンニクが黄金色になったら、洗って水気が少し残ったままの菜の花を「生のまま」直接投入します!
2.塩をひとつまみ振って蓋をし、中火〜弱火で野菜自身の水分とオイルだけで5〜6分蒸し炒めにします(お湯で茹でないことで、ほろ苦さと旨味が100%凝縮されます!)。
3.別のフライパン(または同じフライパンの端)で生ソーセージの表面に焼き色をつけ、爪楊枝で数箇所穴を開けてから白ワイン少々を振って2の野菜のフライパンへ合流させます。蓋をしてさらに5分ほど蒸し焼きにし、豚の甘い脂を野菜に吸わせたら完成!
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【② イスキア島の最高傑作!『鶏肉(または兎肉)のイスキア島風テラコッタ煮込み(アッリスキターナ)』(2〜3人前)】
(※本場イスキア島では兎肉を使いますが、日本の家庭では「骨付きの鶏もも肉(ぶつ切り)」で作ると、驚くほどジューシーで同じ極上の味になります!)
<材料>
・骨付き鶏もも肉(ぶつ切り/または普通の鶏もも肉を大きめに切ったもの&鶏レバー1〜2個):500g
・新鮮なミニトマト(半分に切る):15〜20個
・ニンニク:2片(皮付きのまま潰すのがイスキア島流!)
・辛口白ワイン:100ml(半カップ)
・ローズマリー(1枝)、タイムまたはマジョラム(適量)、イタリアンパセリ(適量)
・赤唐辛子:1本
・エクストラバージン・オリーブオイル:大さじ3、塩・黒胡椒:適量
・【絶対に用意してください!】スカルペッタ(皿拭い)用の美味しいパン!
<黄金の作り方>
1.厚手の鍋にオリーブオイルと「皮付きのまま潰したニンニク」、赤唐辛子を入れて香りを出し、塩胡椒した鶏肉を入れて表面がしっかり黄金色になるまで10分ほど焼きつけます(鶏レバーがあれば、ここで一緒にサッと焼いて一度取り出し、包丁で細かくペースト状に叩いておきます)。
2.ハーブ(ローズマリー・タイム)と白ワイン100mlを注ぎ、強火でアルコールを飛ばしながら旨味をこそげ落とします。
3.半分に切ったミニトマトを投入し、蓋をして弱火〜中火で15〜20分ほど煮込みます。
4.お肉がホロホロになったら、1で細かく叩いたレバーペーストをソースに溶かし込んで濃厚なとろみをつけ、【火を完全に止めてから】生のオリーブオイルをひと回し!お肉を食べた後の鍋底の黄金ソースは、猫皇帝のようにパンで最後の一滴までスカルペッタして召し上がれ! Buon appetito!!
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【劇場版3・最終決戦】までお読みいただき、本当にありがとうございました!
皆様の温かい応援のおかげで、本作はついに全17エピソード・合計15万文字を超える大長編としてここまで描き切ることができました!心より感謝申し上げます!
「猫皇帝への平手打ちとサン・ジェンナーロの啖呵に笑った!」「炭水化物ゼロの法律を自分で廃止してスカルペッタするラストが最高だった!」と少しでも思っていただけましたら、すぐ下の【ブックマーク登録】や感想・リアクション等で応援していただけると、著者にとってこれ以上ない励みになります!
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また次の美味しい物語でお会いしましょう!グラッツェ!




