【劇場版2・宇宙恐竜編】勇者不在の店が宇宙へ発射!?二刀流フライパンのカイル&無重力ニコと挑む宇宙恐竜大乱闘!壊した厨房の詫びに作る『魚竜のアクアパッツァ』と平和種族のブチ切れ大逮捕劇!
いつも『奈落の底の485℃ピッツェリア』をお読みいただき、誠にありがとうございます!
今回は読者の皆様からもご期待の多かったスペシャル長編第2弾【劇場版2・宇宙恐竜編(1話完結)】をお届けします!
剣聖レオたち『白銀の暁』が不在の夜、アンジェロ・カイル・ニコの「厨房トリオ」の3人だけが店ごと宇宙の小惑星へ飛ばされてしまう大ピンチ!
初めて明かされるカイルの新たな戦闘スタイル『二刀流の鍋振り師』、そして宇宙の恐竜たちと囲むナポリ伝統の魚介料理『アクアパッツァ』と『ババ&リモンチェッロ』の大宴会を最後までお楽しみください! Buon appetito!
天界・地上・冥府の『三界料理大戦』を5大パスタの階段と両手ビンタで制し、ニコが満額給料の正式な『食材管理長』に昇格してから数ヶ月。
王都『新ナポリ』にある俺のピッツェリアには、その夜、珍しい静けさが訪れていた。
いつもなら中央テーブルで騒いでいる親友の剣聖レオ、タンクのゴラン、聖女エレナ、大魔導士ヴィクトルの『白銀の暁』の四人が、アルデバラン国王の頼みで一週間の国境視察に出かけており、今夜の店内にいるのは俺と、二番手シェフのカイル、そして倉庫番のニコの「厨房組の三人だけ」だったのだ。
「よし、カイル、ニコ! 大理石のカウンターを拭き上げたら、今夜は早めに寝るぞ!」
「はいっ、アンジェロ師匠!」
俺がエプロンで手を拭き、485℃の銅張り薪窯の鉄扉を閉めた――まさにその真夜中のことだった。
俺たちは知らなかった。
店の外の暗い広場に、かつて俺たちに潰された『黒き虚無教団』と『旧錬金術師ギルド』の残党・百人の闇魔導士たちが集結し、広場の石畳の下に神代の禁断遺物【惑星間・重力カタパルト(宇宙射出陣)】を起動させていたことを!
『ククク……あの忌々しいピッツェリアの【不可侵の聖域】がどれほど無敵だろうと、今夜は護衛の剣聖レオたちが街にいない!』
闇の一族の首領・ゾルバが醜悪な笑みを浮かべて杖を振り下ろした。
『この重力カタパルトで、あの店舗ごと大気圏の外――暗黒の宇宙空間の彼方へとマッハ50で撃ち出してやる! 建物が壊れなくとも、空気のない宇宙へ放り出されれば、戦闘力のない料理人三人は酸欠と孤独で永遠に宇宙の塵となるのだ! 発射ァァァッ!!』
――ドゴォォォォォォォンッ!!!
前触れもなく、足元の大地が火山の大噴火のように揺れた。
「な、なんだぁっ!? 地震か!?」
「アンジェロ師匠、外の景色を見てください!!」
ニコの叫び声にすりガラスの窓の外を見た俺は、あんぐりと口を開けた。
新ナポリの街並みが、一瞬にして眼下へと消え去っていた!
赤紫色の重力光線に包まれた俺の【伝統的ナポリピッツェリア】は、地面から丸ごと引き剥がされ、ロケットのような猛スピードで夜空の雲を突き抜けて、真っ暗な『宇宙空間』へと撃ち出されたのだ!
――チンッ! カンッ!
窓の外では星々とカラフルな星雲が輝き、燃える隕石がガラス窓にぶつかっては小石のように弾き返されている。
「う、宇宙です師匠!! 僕たち、お店ごと宇宙へ飛ばされてます!!」
カイルが真っ青になって叫んだ。「店の結界で隕石は防げますが、外は真空の宇宙です! このままじゃ五分で店内の酸素が尽きて窒息してしまいます!」
「いいえ、空気なら絶対に尽きません! 任せてください、アンジェロ師匠、カイルさん!」
その時、ニコが前に進み出て、天井に向かって両手を大きく広げた!
「【無限次元倉庫】――空気解放!!」
――ブワァァァァァッ!!
瞬間、店内に松の森と潮風の匂いがする新鮮で美味しい空気がたっぷりと流れ込んできた!
「僕、アンジェロ師匠のために山へ樫の薪を拾いに行ったり海へ買い出しに行ったりした時、時間が止まるこの【無限次元倉庫】の中に、新ナポリの綺麗な空気も何十立方キロメートルも一緒に吸い込んで貯蔵してあったんです! これなら千年でも酸素を出し続けられます!」
「でかしたぞニコ! さすが俺が満額給料にした自慢の倉庫番だ!」
俺がニコの頭をガシガシと撫でた、その直後だった。
宇宙を猛スピードで飛んでいたピッツェリアが、銀河の辺境に浮かぶ「ある小さな星」の重力に捕まり、火の玉となって大気圏へと突入したのだ!
「お前ら、大理石のカウンターにしっかり掴まれ! 不時着するぞォォォッ!!」
――ズドォォォォォォォンッ!!!
凄まじい轟音と土煙を巻き上げながら、俺のピッツェリアは見知らぬ惑星のジャングルのど真ん中に隕石のように墜落した!
もちろん【不可侵の聖域】のおかげで店内の皿は一枚も割れなかったが、外の砂煙が晴れた瞬間、窓の外を覗いた俺たち三人は目を丸くした。
そこは、巨大なシダ植物と湯気を立てる小さな温泉海が広がる「ジュラ紀のような原始の星」だった。
そして俺のピッツェリアをぐるりと取り囲んでいたのは――人間ではなかった。
身の丈三メートルを超える二足歩行の恐竜の姿に、エメラルド色に輝く鱗と三つの瞳、そして頭に小さな宇宙アンテナを生やした五十体の異星人――『宇宙恐竜人』の軍団だった!
四本腕のトリケラトプス型や、稲妻の羽根を持つラプトル型、そして先頭には身の丈四メートルの巨大なティラノサウルス型の王様『恐竜王レクソール』が立ち、俺の店を見て血走った目で怒りの咆哮を上げた!
『グオオオオオオッ!! 空から落ちてきた侵略者めぇぇっ!! 絶対に許さん、捕まえてくれるわァァッ!!』
五十体の宇宙恐竜人たちが、一斉に突撃してくる!
「し、師匠! 宇宙人の恐竜たちが総攻撃してきます! しかも今日はレオさんもゴランさんもいません!」
「レオたちがいなけりゃ、俺たち三人でやるしかねぇだろ!」
俺は腕まくりをしてエプロンの紐を締め直した。
「店の中に引きこもってりゃ無敵だが、そんなことをしてたら一生この星から新ナポリへ帰れねぇ! ニコ、倉庫から『ティラミス』を大さじ三杯出せ! カイル、商売道具を持て! 今日は『新ナポリ厨房トリオ』の力を見せてやるぞ!」
俺とカイルとニコは、モカ・エスプレッソとマスカルポーネの『ティラミス』を一口ずつ頬張り、【真・ティラミスの奇跡(+2000%)】の黄金オーラを全身に纏った!
俺が右手に握りしめたのは、俺だけの唯一の相棒――485℃の薪窯の熱を宿して白熱する【インフェルノ・パーラ(焦熱地獄の窯ベラ)】!
そして隣の二番手シェフ・カイルは、かつて暗殺者時代に使っていた毒薬や短剣には指一本触れなかった。俺のパスタ・エ・パターテを食べて生まれ変わったあの日から、カイルは「二度と人を殺す毒は使わない」と心に誓っていたからだ。
カイルが両手に鷲掴みにしたのは、高火力コンロの上で真っ赤に熱せられた【二枚の分厚い業務用・鉄銅フライパン】だった!
「私はもう毒殺者ではありません! アンジェロ師匠の二番手にして、二刀流のフライパン使い『鍋振り師のカイル』です!」
カイルが二枚の灼熱フライパンをカンッ!と打ち鳴らし、ニコが俺たちの安全靴に【ゼロ・ウェイト(無重量化)】をかけて店の扉を蹴り開けた!
「行くぞ野郎ども! 新ナポリの厨房の喧嘩を見せてやれェェッ!!」
――ドガァァァァン!! カンカンカァァァンッ!!
そこから始まったのは、俺の人生で一番泥臭くて激しい三十分間の大乱闘だった!
レオやゴランのような戦闘のプロがいない中、俺たち料理人三人は五十体の屈強な宇宙恐竜人たちの群れに真っ向からぶつかった!
「オラァッ! 三つ目のデカトカゲども、俺の485℃のパーラと『スキアッフォ(平手打ち)』を喰らいやがれ!!」
俺は右手の【インフェルノ・パーラ】を大薙ぎに振るってラプトル型の腕を弾き飛ばし、左手の粉まみれの平手打ちでトリケラトプス型の頬を張り飛ばした! だが同時に、恐竜王レクソールの丸太のような尻尾が俺の脇腹をかすめ、俺はエプロンを破きながら地面をゴロゴロと転がった!
「アンジェロ師匠、右翼は私が守ります! 【二刀流フライパン奥義・強火煽り(マンテカトゥーラ・ラッシュ)】!!」
『鍋振り師』カイルが華麗なステップで飛び出し、左手のフライパンを盾にして恐竜の爪を受け止めながら、右手のフライパンを手首のスナップを効かせて高速で振り抜き――カーン! カーン!と四体の宇宙恐竜人の頭をフライパンの底で痛打して目を回させた!
さらにニコが戦場を走り回り、恐竜たちが投げてくる大岩にタッチして【重さ0.0グラム】に変え、サッカーボールみたいに蹴り返して俺とカイルの背中を必死に守る!
だが、相手は五十体の野生の宇宙恐竜だ。
十分……二十分……三十分!
ティラミスの効果時間が切れ、俺がパーラの柄で恐竜王レクソールの顎を突き上げ、レクソールの頭突きが俺の肩にぶつかった、まさにその瞬間――。
――ドサァァァァッ……!!
俺も、カイルも、ニコも、そして恐竜王レクソールたち五十体の宇宙恐竜人も、全員同時に糸が切れたようにジャングルの草の上へ大の字にぶっ倒れた!
「ハァ……ハァ……ハァ……! く、くそっ、なんてタフなトカゲどもだ……もう指一本動かせねぇぞ……」
「ハァ……ハァ……師匠、私ももうフライパンが重くて持ち上がりません……」
俺とカイルとニコは、ボロボロの白エプロン姿で煤だらけになり、頭にタンコブを作って天を仰いだ。
すぐ横では、恐竜王レクソールたち五十体の宇宙恐竜人も、全員ベロを出して「ゼェ、ゼェ……」と蒸気機関車のように荒い息を吐きながら地面にへばりついている。
十秒間、ジャングルには全員の荒い呼吸音だけが響いていた。
そして――。
――グゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ……!!!
俺の腹から、木の実が落ちるほど特大の「腹の虫」が鳴り響いた!
するとそれに釣られたように、カイルとニコの腹が鳴り、さらには隣で倒れている恐竜王レクソールと五十体の宇宙恐竜人たちの腹までが『グォォォォォッ……!!』と大合唱を始めたのだ!
三十分間も全力で取っ組み合ったせいで、全員のカロリーが完全に底をつき、猛烈な空腹に襲われたのである!
巨大な恐竜王レクソールが、プルプルと震える前足で白いシダの葉っぱを掴み、降参の白旗のように弱々しく振った。
『ハァ……ハァ……も、もうやめだ、白い前掛けの異星人たちよ……!』
恐竜王レクソールが涙目で呻いた。『わしらの降参だ、もう戦いはやめよう……! 腹が減りすぎて目が回っておる、これ以上殴り合ったら全員餓死してしまうわい……!』
「ハァ……ハァ……それを一分早く言えよ、デカトカゲの大将……!」
俺は地面に寝転がったまま腹の上のパーラをどかした。「俺たち三人も限界だ、こっちも降参してやるよ……あと五分以内に何か食わなきゃ気絶するところだったぜ!」
俺たちはよろよろと起き上がり、地面に座り込んだ。
見ると、茂みの奥から二十匹ほどの「小さな子供の宇宙恐竜たち」がひょこひょこと顔を出し、ペコペコのお腹を押さえてシクシクと泣いていた。
「……しっかし、お前ら一体どういうつもりだ?」
俺は肩の痛みをさすりながらレクソールに尋ねた。「俺たちが空から落ちてきた途端、話も聞かずにいきなり五十体で飛びかかってきやがって!」
すると、巨体の恐竜王レクソールは急にボロボロと大粒の涙をこぼし始め、俺のピッツェリアの石造りの床の下を震える爪で指差した。
『だ、だって……お前たちのその空飛ぶ石の家が、どこに着陸したか見てくれ……!』
レクソールがしゃくり上げながら言った。
『見ての通り、わしらのこの星は直径がたった二キロしかない【極小の小惑星】なのだ! だから星の中央のこの広場に、部族全員で半年かけて【この星でたった一つの石造りの共同キッチンと竈】を作って、今夜の晩飯の白いご飯を炊いていたのに……お前たちの家が空からど真ん中に落ちてきて、わしらの唯一のキッチンも、炊きたてのお米の釜も、秘伝の醤油樽も全部ぺちゃんこに押し潰してしまったのだぁぁっ!!』
俺とカイルとニコは、慌ててピッツェリアの建物の角を覗き込んだ。
なんと、俺の無敵の店舗の床の下から、ぺちゃんこに潰れた石のかまどの破片と、曲がった鍋の取っ手がはみ出しているではないか!
その瞬間、俺の全身から血の気が引いた。
料理を床にこぼしかけた貴族をパーラでぶっ飛ばしたこの俺が――事もあろうに自分の店で他人の大事なキッチンを踏み潰し、子供たちの晩飯を台無しにしていたなんて!
俺は手に持っていたパーラを地面に置き、カイルとニコの頭を掴んで、恐竜王レクソールと子供たちの前に深々と九十度の土下座をした!
「すまなかったァァァッ!! お前らの大事なキッチンを潰したのは、100%俺たちの不注意だ!!」
俺は顔を上げ、胸をドン!と叩いて吠えた。
「料理人が他人の厨房を壊して子供を腹ペコにさせるなんざ、宇宙で一番の重罪だ! いいかレクソール、お前らのキッチンを壊したお詫びに、今から俺のこの【最高峰のナポリピッツェリア】を全開にして、お前らが今日釣った食材で、この星の歴史上最高のフルコースを全員に腹いっぱい食わせてやる!!」
俺の言葉に、恐竜王レクソールと子供たちの三つの瞳がパァッと輝いた。
彼らが近くの小さな温泉海から運んできた巨大な籠の中には、料理人の目がハートになるような素晴らしい「宇宙の海の幸」が満載されていた!
一つは、ナポリ湾の真鯛やスズキにそっくりな、銀色の鱗と引き締まった白身を持つ全長一メートルの『銀鱗の魚竜』!
もう一つは、星のように煌めく漆黒の殻にプリプリの身が詰まった『星光の宇宙黒ムール貝』だった!
「最高の魚とムール貝じゃねぇか! よしカイル、180℃の落花生油とアルミの大フライパンを温めろ! ニコ、無限食材庫からニンニク、山オレガノ、ミニトマト、黒胡椒、それにイタリアンパセリを全部出せ!」
「「はいっ、アンジェロ師匠!!」」
俺たち三人は乱闘の疲れも忘れ、厨房の中で流れるような連携を開始した!
■【1品目:『ニンニクと山オレガノのブルスケッタ』&揚げたて『モンタナリーナ』!】
まずは腹ペコの恐竜の子供たちと戦士たちの胃袋をすぐに満たすため、俺は薪窯で焼いた田舎パン『パーネ・カフォーネ』を分厚く切り、熱々の皮に生のニンニクを力強くこすりつけて、エクストラヴァージン・オリーブオイルと海塩、野生の山オレガノをたっぷりと振った!
隣では『鍋振り師』のカイルが、48時間熟成のピッツァ生地を180℃の落花生油で黄金色の風船のようにカラッと揚げ、サン・マルツァーノのトマトソースと雪のような『24ヶ月熟成パルミジャーノ』、バジルを乗せた揚げピッツァ『モンタナリーナ』を次々と揚げていく!
■【2品目:水を一滴も使わない『宇宙黒ムール貝のインペパータ(黒胡椒蒸し)』!】
続いて俺は、綺麗に洗った『宇宙黒ムール貝』を大鍋に山盛りに入れ、潰したニンニク、パセリの茎、オリーブオイルを少しだけ回しかけ、【水もワインも一滴も入れずに】蓋をして強火にかけた!
わずか90秒! パカッ、パカパカッ!と全てのムール貝が口を開き、貝自身が持つ濃厚な海のスープが鍋底に溢れ出す! 火を止めてから刻みたてのパセリの葉と、目が覚めるほど大量の『挽きたて黒胡椒』を振りかけ、アマルフィの黄金レモンを添えたナポリ伝統の『インペパータ・ディ・コッツェ』だ!
■【3品目:ナポリ漁師の至宝『魚竜丸ごとのアクアパッツァ』&485℃の『ピッツァ・マルゲリータ』!】
そしてメインディッシュだ!
俺は『銀鱗の魚竜』の鱗と内臓だけを丁寧に処理し、一番旨味が出る【頭と骨と尾びれがついた丸ごとの状態】のまま、カイルが構える巨大なアルミのフライパンへと並べた!
「いいか、魚の頭と目の周りのゼラチン、そして中骨の髄を捨てたらこの料理は絶対に作れねぇ!」
オリーブオイルに潰したニンニク、赤唐辛子、パセリの茎で香りを出し、丸ごとの魚竜の横に、半分に切った大量の『新鮮なミニトマト(ダッテリーニ種&ピエンノロ種)』を投入!
白ワインを振ってアルコールを飛ばしたら、純粋な湧き水を魚の半分まで注ぎ、蓋をして強火で15分間一気に炊き上げる!
すると――魚竜の頭と骨から溶け出した濃厚なコラーゲンが、沸騰の勢いでオリーブオイルとミニトマトの甘い果汁と完全に乳化し、ただの水が黄金とルビー色に輝くトロトロの極上スープ――ナポリの漁師が『アクアパッツァ(狂った水)』と呼ぶ奇跡のソースへと変わったのだ!
さらに俺は485℃の薪窯から、水牛モッツァレラがとろける焼きたての『マルゲリータ』を何十枚も引き出してテーブルに並べた!
「さあ宇宙恐竜の兄弟たち、冷めないうちに全部食え! アクアパッツァのスープは、ブルスケッタのパンで一滴残らずスカルペッタ(拭い取り)するんだぞ!」
恐竜王レクソールと五十体の宇宙恐竜人、そして俺とカイルとニコは、同じテーブルを囲んで一斉に料理にかぶりついた!
――バリッ、ジュワァァァァッ!!
【ユニークスキル発動:『ゼロ・ウェイストの錬金術(丸ごと魚竜の頭・骨およびムール貝スープの完全活用・出力300%)』!】
瞬間、小さな惑星全体に黄金と蒼の光の柱が噴き上がり、殴り合いで傷ついていた全員の体力が一瞬で100%全快した!
『グ、グオオオオオオッ!? な、なんだこの狂おしいほど美味いスープはァァッ!!』
恐竜王レクソールは林檎のような大粒の涙をボロボロこぼしながら、魚竜の白身を頬張り、パーネ・カフォーネをアクアパッツァの黄金スープに浸してむさぼり食った!
『わしらは今まで、魚の頭や骨は捨てて、身だけをそのまま食べておった! だが頭と骨ごとミニトマトと油と水で炊き上げただけで、身は雲のようにふわふわで、この「狂った水」には海と太陽の全ての命が溶け込んでおるではないか!! この黒胡椒の効いたムール貝も、揚げたてのモンタナリーナも485℃のピッツァも……生きててよかったわい、地球の兄弟よぉぉっ!!』
子供たちも全員お腹をパンパンに膨らませて笑い、俺たちと宇宙恐竜人たちはすっかり長年の親友のように肩を組んで盛り上がった。
だが――その時だった。
――ズズズズズ……パキィィィィンッ!!
突然、俺たちの足元の地面に巨大な亀裂が走り、星全体が激しく揺れ始めた!
さっき俺たちのピッツェリアがマッハ50で墜落した衝撃で、直径二キロしかないこの極小の小惑星の岩盤にヒビが入り、星そのものが崩壊し始めたのだ!
『あ、あああっ!! わしらの小さな星が割れて崩れてしまうぞ!!』
レクソールが子供たちを抱きしめて叫んだ。『わしには宇宙空間を光の速さで跳躍する固有スキル【超新星メテオ・ドライブ】があるが、この店の建物と部族五十人全員を背負って飛ぶには重すぎて無理だぁぁっ!!』
それを聞いた俺とカイルとニコは、顔を見合わせてニヤリと笑った。
「重すぎて無理だと? なら話は早いぜ、レクソール!」
俺はニコの肩をポンと叩き、レクソールに親指を立てて見せた。
「お前らのキッチンも星も壊れちまったなら、今日からお前ら部族全員で俺たちの街――『新ナポリ』へ引っ越してこい! 新ナポリには広い海も大地もあるし、うちのピッツェリアで毎日美味い飯を食わせてやる! そして『重さ』の問題なら……うちの天才倉庫番が一秒で解決してやるぜ!」
「僕に任せてください、レクソール王!」
ニコは五十体の宇宙恐竜人たち全員をピッツェリアのテラス席へと招き入れると、店の白大理石のカウンターに両手をついて叫んだ!
「お店と宇宙恐竜のみなさん全員に付与します――【無限次元倉庫・完全無重量化(ゼロ・ウェイト 0.0グラム)】!!」
――シュンッ!!
黄金の光が走り、なんとピッツェリアの建物ごと、中にいる五十体の宇宙恐竜人すべての重さが、羽毛一枚分もない【0.0グラム】へと変換された!
さらにニコは【無限次元倉庫】から新鮮な空気のドームを店舗の周囲に展開し、完璧な宇宙船シールドを作り上げた!
『おおおっ!? 五十人と建物全部が、風船みたいに重さゼロになったぞ!!』
恐竜王レクソールが歓喜の声を上げ、店の屋根の上に飛び乗って強靭な尻尾を構えた。
『これならお前たちの星まで一っ飛びだ! しっかり掴まっておれ、新ナポリの兄弟たちよ――【恐竜王奥義・超新星メテオ・ドライブ】ァァァッ!!』
――ドゴォォォォォォォンッ!!!
レクソールが宇宙空間を尻尾でひと蹴りした瞬間、彼の全身から惑星すら粉砕するほどの凄まじい『覇王色の宇宙エネルギー』が迸り、道中の巨大な小惑星群を衝撃波だけで塵に変えながら、俺たちのピッツェリアは光の速度を超えて新ナポリのある惑星へと一直線に翔け上がった!
窓の外で隕石群が紙くずのように吹き飛ぶその圧倒的な破壊力を見て、俺とカイルは目を丸くして屋根の上のレクソールに叫んだ。
「お、おい待てレクソール!! お前、ちょっとした星なら一撃で吹き飛ばせるほどの『本当の力』を持ってやがるじゃねぇか!! なんでさっき俺たち三人と三十分も殴り合った時、その力を1ミリも使わなかったんだよ!?」
すると、恐竜王レクソールと五十体の宇宙恐竜人たちは、気まずそうに頬をポリポリと掻き、よだれを拭いながら照れ笑いを浮かべて白状した。
『い、いやぁ……実はな、アンジェロよ。一時間前まで、わしら宇宙恐竜族の宇宙一の大好物は【人間の生寿司(お刺身と握り寿司)】だったのだよ!』
レクソールは悪びれもせず、自分の爪で寿司を握るジェスチャーをしてみせた。
『たまに宇宙から丸々と太った人間が落ちてくるとな、新鮮なうちに生のまま三枚におろして、温かい酢飯の上にペタッと乗せ、上から特製の「醤油」をちょんと垂らして一口で食べるのが最高のご馳走だったのだ! お前たちの家がわしらのキッチンを潰したあと、中からオリーブオイルとバターのいい匂いがする美味しそうな人間が三人出てきたじゃろ? もしわしらが本気の宇宙エネルギーで攻撃したら、お前たちが消し炭になって蒸発するか、せっかくの霜降りの身に打撲の血豆ができて「お刺身の食感と鮮度」が台無しになってしまうではないか! だから身に傷をつけないように、99.9パーセント手加減して「無傷で生け捕り」にしようと必死だったのだよ!』
その告白を聞いた瞬間、俺とカイルとニコの顔がモッツァレラチーズみたいに真っ白になり、髪の毛が逆立った。
「て、てめえら、俺たちを生のまま醤油かけてシャリの上に乗せて食う気だったのかよ、このグルメ怪獣どもがァァァッ!!」
『ま、待て待て、それは一時間前までの話じゃ、尻尾に誓ってもう絶対に食わん!!』
レクソールは慌てて四本の手足をブンブンと振って叫んだ。
『お前たちが作ってくれたあの奇跡のスープ「アクアパッツァ」と「ムール貝の黒胡椒蒸し」、そして485℃の「マルゲリータ」を一口食べた瞬間、わしらは自分たちがどれほど愚かだったか思い知ったのだ!! こんな天国みたいな料理を作れる「生きたナポリの料理人」を刺身にしたら、二度とピッツァもアクアパッツァも食べられなくなるではないか! 人間の生寿司より、人間が作る温かいイタリア料理の方が一億倍美味い! だからわしら宇宙恐竜族は、今日この瞬間から「人間を生で食べるの」を永久にやめて、お前たちの店の常連客になると決めたのだよ!!』
それを聞いて、俺とカイルとニコは顔を見合わせ、呆れ果てたあとに腹を抱えて大爆笑した。
「俺たちを寿司ネタにするより、俺たちにピッツァとアクアパッツァを作らせた方が一億倍トクだと気づいたってわけか……ハッハッハ! まったく、食い意地の張り方まで『新ナポリ』の住民にぴったりな連中じゃねぇか!」
そして数分後――俺たちのピッツェリアは、夜が明けたばかりの王都『新ナポリ』の上空へと帰還した!
見下ろした中央大広場では、昨夜俺たちを宇宙へ飛ばした『闇の一族と旧錬金術師ギルドの残党・百人』が、重力カタパルトの周りで酒を飲みながら高笑いを上げており、ちょうど国境視察から戻ってきた剣聖レオ、ゴラン、エレナ、ヴィクトルの四人が「アンジェロ師匠の店がないぞ!?」と広場へ駆けつけてきたところだった!
『フハハハハ! 今頃あのピッツェリアの三人は宇宙の果てで凍りついて死んでおるわ! さあ、今のうちに新ナポリの金庫を略奪しろ!』
広場の真ん中にピッツェリアごとドォン!と着地した俺は、正面扉を蹴り開け、485℃の【インフェルノ・パーラ】を構えて、高笑いしている百人の悪党どもをビシッと指差した!
「おい、恐竜王レクソール! それに宇宙恐竜の兄弟たち!」
俺は腹の底から響く声でレクソールに言った。
「あそこにいる黒いフードの百人を見ろ! あいつらが昨夜、俺たちのピッツェリアを無理やり宇宙へ撃ち出して、結果的にお前らの星の『たった一つの大事なキッチンと醤油樽』を押し潰させた張本人(犯人)だァァァッ!!」
その瞬間――。
ピッツェリアからゾロゾロと出てきた恐竜王レクソールと五十体の宇宙恐竜人たちの合計百五十個の瞳が、カッ!!と真紅に光り輝いた!
『な、なんだと……!? あいつらが、わしらの大事なキッチンとアンジェロたちの店を飛ばした犯人だとぉぉっ!?』
恐竜王レクソールの全身から、空気がひび割れるほどの凄まじい覇気が噴き上がった!
レクソールは懐から小さな「醤油差し」を取り出してニヤリと牙を剥き、五十体の仲間たちに向かって雷鳴のような号令を下した!
『よく聞け、同胞の宇宙恐竜たちよ!! わしらはアンジェロに「もう二度と人間を生で食べない」と誓った……だから殺しはせん! だが、他人のキッチンを壊したあの百人の悪党どもには、手加減なしの100%の力で大暴れして、「どうか醤油をかけて酢飯の上に乗せないでくれ!」と泣いて謝るまでボコボコにしてお縄にするぞォォォッ!!』
『『『グオオオオオオオオオッ!! キッチン破壊犯を三枚におろすぞォォォッ!!』』』
「俺たちも行くぞ、カイル、ニコ! 厨房トリオと宇宙恐竜軍団の合同お掃除タイムだァァッ!!」
そこからの光景は、駆けつけた剣聖レオやゴランでさえ目を疑うほどの圧倒的な大蹂躙だった!
手加減を完全にやめた五十体の宇宙恐竜人たちが本気の超重力タックルと咆哮を放ち、闇魔導士たちの防御結界をコンマ一秒でガラスのように粉砕!
逃げる幹部たちの前には、ニコの【ゼロ・ウェイト】で音速を超えた『鍋振り師』カイルが立ち塞がり、二刀流の赤熱フライパンで百発百中の往復ビンタを叩き込み、親玉のゾルバの顔面には俺の485℃の【インフェルノ・パーラ】と粉まみれの【スキアッフォ(平手打ち)】が炸裂した!
わずか十秒後。
百人の闇の一族は「ひぃぃっ、寿司にしないでくれぇぇっ!!」と泣き叫びながら一人残らず目を回して気絶し、宇宙恐竜たちが持ってきた強靭なツタで巻き寿司みたいにぐるぐる巻きに縛り上げられ、駆けつけた新ナポリの近衛兵たちに全員現行犯で引き渡されたのだった!
「ア、アンジェロ師匠……!」
呆気にとられた剣聖レオとゴランが駆け寄ってきた。「俺たちが留守にしている間に、一体どこでこんな最強の恐竜軍団を仲間にしてきたんですか!?」
「ハッハッハ! ちょっと宇宙まで出張して、俺たちが寿司にされる前にアクアパッツァで新しい家族をスカウトしてきただけだぜ!」
俺は誇らしげに笑うと、店のカウンターの奥から、この大勝利と宇宙恐竜族の『新ナポリ移住』を祝うための最高のドルチェと食後酒を運び出した!
「さあ、悪党のお掃除も終わったところで、新ナポリ流の歓迎会のシメだ! みんな、こいつを食ってくれ!」
俺がテーブルいっぱいに並べたのは、天然酵母の発酵生地をキノコの形に焼き上げ、ソレント産レモンのシロップと香り高いお酒をたっぷりと染み込ませたナポリ伝統の至宝ドルチェ――『ババ(Babà al Limoncello)』の山!
そして、マイナス18℃の冷凍庫から出したばかりの、とろりとした黄金の食後酒『本場ソレントのリモンチェッロ』を、恐竜王レクソールたちやカイル、ニコ、そしてレオたち全員のグラスに並々と注ぎ分けた!
「いいかレクソール、この『ババ』を一口かじって、ジュワッと溢れ出す甘いレモンシロップを味わった後に、このマイナス18℃の『リモンチェッロ』をキュッと飲むんだ! 今日からここ『新ナポリ』が、お前たちの新しい故郷であり、絶対に壊れないキッチンだ! ――乾杯!!」
『『『新ナポリとアンジェロ師匠に乾杯ァァァッ!!』』』
シロップが滴る甘い『ババ』を頬張り、氷点下18℃の『黄金リモンチェッロ』を飲み干した瞬間――案の定、三秒後に恐竜王レクソールと五十体の宇宙恐竜人たちの顔が完熟トマトみたいに真っ赤に染まり、ゴランやレオと肩を組んで『オー・ソレ・ミオ』を大合唱しながら広場中で陽気なタランテラを踊り始めた!
485℃の薪窯の前で、俺とカイルとニコの三人はエプロンの上で腕を組み、恐竜と人間が同じテーブルでババを食べて笑い合うその光景を見つめて、腹の底から笑い合った。
「よしカイル、ニコ! うちの新しい恐竜スタッフたちは食欲も十倍だ、今から朝までピッツァを千枚焼くぞ!! ――Buon appetito(召し上がれ)!!」
(【劇場版2・宇宙恐竜編】完!)
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■ 今夜お家で再現できる!アンジェロの本場ナポリ漁師町秘伝レシピ ■
【お魚丸ごとの旨味が爆発!『本場ナポリのアクアパッツァ』&『黒ムール貝のインペパータ(黒胡椒蒸し)』】
(※アクアパッツァの最大の秘密は、切り身ではなく「頭と骨がついた丸ごとの魚」を使い、強火で煮立たせて魚のゼラチンとオリーブオイルとミニトマトの果汁を「乳化」させることです!)
<材料(2〜3人前)>
・白身魚(鯛、スズキ、メバル、イサキなど、ウロコと内臓を取った「頭付きの丸ごと」):1尾(400g〜600g)
・ムール貝:300g
・新鮮なミニトマト(半分に切る):15〜20個
・ニンニク:2片(潰す)
・イタリアンパセリ(茎とみじん切りの葉):たっぷり
・辛口白ワイン:1/2カップ
・水:魚の半分が浸かるくらい(約1カップ〜1.5カップ)
・エクストラバージン・オリーブオイル:大さじ4
・塩、赤唐辛子、挽きたての黒胡椒、レモン:適量
・美味しいパン(バゲットや田舎パンなど、スカルペッタ用!):必須!
【黄金の作り方】
1.【インペパータ(ムール貝の黒胡椒蒸し)】:鍋に洗ったムール貝、潰したニンニク1片、パセリの茎、オリーブオイルひと回しを入れ、【水を一滴も入れずに】蓋をして強火にかけます。2分ほどで貝が開いたら火を止め、刻んだパセリと「たっぷりの黒胡椒」を振ってレモンを添えれば完成!
2.【魚とトマトの投入】:魚の入る大きなフライパンにオリーブオイル大さじ3、潰したニンニク1片、赤唐辛子、パセリの茎を入れて弱火で香りを出します。そこへ丸ごとの白身魚を入れ、周りに半分に切ったミニトマトをたっぷり並べ、白ワインを振って強火でアルコールを飛ばします。
3.【狂った水の乳化】:魚の半分が浸かるくらいの水と塩ひとつまみを加え、蓋をして中火〜強火で12〜15分ほど煮込みます。途中、フライパンの底の赤いスープをスプーンですくって魚の上から何度も回しかけることで、魚の頭や皮のコラーゲンがオイルと乳化してトロトロの黄金スープになります!
4.【仕上げ】:火を止めて刻みたてのイタリアンパセリを散らし、生のオリーブオイルをひと回し!極上のスープはパンで最後の一滴までスカルペッタして召し上がれ! Buon appetito!!
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スペシャル長編【劇場版2・宇宙恐竜編】を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
ついに宇宙へ飛び出したピッツェリア!レオたちが不在のピンチに、アンジェロの485℃のパーラ、二刀流フライパンの『鍋振り師』カイル、そして無重力と無限の空気を生み出すニコの3人が大活躍しましたね!
本当は優しくて平和主義な宇宙恐竜たちも、キッチンを壊した真犯人を前に「今日だけ平和主義はやめだ!」と大暴れして、最後はナポリの伝統ドルチェ『ババ』と氷点下18℃の『リモンチェッロ』で新ナポリの新しい家族になりました!
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「また新たな劇場版や裏メニュー編が読みたい!」というお声もお待ちしております。それではまた新ナポリの食卓でお会いしましょう!チャオ、そして Buon appetito(召し上がれ)!!




