律 2026
あー! サッカーってやっぱ、おもしれー!
ゲームはゲームの面白さがあるけど、人と人って、計算通りにいかないから面白いんだよな、きっと。
女子リーグ開幕戦当日。
「まじか」
ってことが判明した。
うち、7人しか揃わなかった。
いや、ある程度は想定してたよ?
仕事、家庭、子どもの熱、女子サッカーはそういうので人数が消える。でも、ここまではさすがに想定外。終わったな、と思った。
ところが。
いつもイライラしてるキャプテンが、妙に涼しい顔してんだよな。
絶対、「こんなんでサッカーできるか!」って最初に怒るタイプなのに。
なんで怒らない?
しかも落ち着いてる?
理由はすぐ分かった。
相手も人数が足りてない。
8人か。
うちより多いんだけど……あー、GK即席か。
よくあることだ。
女子サッカーは、専門GKいるだけで結構アドバンテージになる。瑠のやつ、「点取られても取り返せばいい」って顔してる。
うん。
それでいい。
好きなだけサッカーしてくれ。
監督なんて、ホイッスルが鳴ったら無力だ。
練習でやったことを出せるかなんて、選手次第。
人と人が、ピッチで何を見て、何を考えて、どう動くか。それで、想像以上にもなるし、想像以下にもなる。
だから面白い。
さぁ、ホイッスルだ。
鈴は、相手とのマッチアップを気にしてる。
いや、そこじゃない。
問題は七人でのシステムだ。
この広いピッチで、中を空けずに、鈴がポジションを保ち続けるのは簡単じゃない。
システムは213。
超攻撃型。
DF二枚。
その前に鈴。
鈴との攻守の連携を取りながら、瑠が自由に動く。
両サイドは絞り気味。
中央を消しながら、鈴と瑠へのパスコースを作る。
基本は、鈴のワンタッチ。
強めのボールを鈴へ落とす。
鈴はロングキックができない。
でも。
強いパスの勢いをそのまま使うダイレクトなら距離が出る。
瑠の動き。
瑠の重く、早く、強いパス。
それを、鈴は練習で受け続けてきた。
だから、多分、一発で通る。
鈴だから。
瑠だから。
崩せる。
試合は、互角。
速い。
でも、面白い。
瑠が走る。
鈴が限定する。
瑠が回収する。
また鈴がコースを消す。
何回か、完全に崩した。
でも、点が入らない。
1人の差は、やっぱり大きい。
最後のところで人数が足りない。
後半、残り十分。
瑠のシュートを相手DFが大きくクリアした。
あ、やばい。
相手の速いやつに通る。
「鈴! 行くな!」
思わず叫ぶ。
聞こえない。
鈴は競りに行った。
高さのある鈴は、ちゃんとボールを見ていた。
頭で前へ流す。
その瞬間、瑠はもう走っていた。
はっや。
あっという間だった。
抜ける。
振る。
入る。
ゴール。
「っしゃあ!!」
瑠がガッツポーズしてる。
俺も思わず立ち上がって吠えた。
やっぱサッカーおもしれー!!
……あれ?
鈴が膝ついてる。
振り返った鈴を見て、俺は固まった。
「げっ!」
妖怪みたいになってる。
額、めちゃくちゃ腫れてる。
わー。
こりゃダメか。
残念だけど没収試合だな。
そう思った瞬間だった。
鈴の向こうで、瑠が見えた。
両手で大きくバツを出してる。
え?
下げるなってこと?
いやいや無理だろ。
こっちもバツを返す。
すると。
鈴が、ふらっと立ち上がった。
うそだろ。
審判が駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
鈴は、少し考えてから頷いた。確認した審判は、センターサークルに戻る。再開。
まじか。
あいつ、やる気だ。
その瞬間、瑠が叫ぶ。
「左だ!鈴!」
鈴が反応する。
走る。
いや、もう走れてはいない。
でも、ちゃんとポジションへ戻る。
瑠が奪う。
鈴が離れる。
パスコースを作る。
瑠が強くて、速くて、重いボールん出す。
鈴がワンタッチで流す。
瑠は、もう走り出してる。
練習通りだ。
「ひゅー!!」
思わず変な声出た。
やべぇ。
今の、めちゃくちゃ綺麗だった。
「鈴! ポジション!」
俺が叫ぶと、鈴はちゃんと戻る。
額にコブ作った妖怪みたいな顔で。
なのに、笑ってるんだよなー。
いい顔して、サッカーしてる。
あー。
サッカーって、ほんとおもしれー。
明日へつづく




