私 2026
三角形は3点で作る。
でも、サッカーの三角形は2点でできることもある。
ユニができた。
番号をもらった。
ユニは尊い。
番号は責任を負う。
ってことは、いよいよリーグ戦が始まる。
不安しかない。
相変わらず瑠はイライラしているし、それを見て律はベンチで大笑いしている。怪我人が出て、人数はさらに減っている。
むかつく。
Jリーグ戦の開幕戦を見て、調子悪い選手に「ちゃんと準備してこいよー!」と思っていた頃の自分をぶっ飛ばしてやりたい。
キャンプをして、コンディションを整えて、チームを仕上げて開幕試合に臨む。プロなら当たり前だと思っていた。
私はプロじゃない。
でも、その日に合わせて体を作って、チームのワンピースとして試合に出ることが、どんなに難しいかを知った。
それだけで、もう十分すごいことだった。
結局、律は私をアンカーとして、瑠とダブルボランチで組ませた。321で1に私を置くという。
最初聞いた時は、「正気か?」と思った。
瑠の方が露骨に「正気か?」顔をしていた。
「いや、絶対それ、フォロー地獄なんだけど」
「だから、お前が走るんだよ」
「最悪じゃん」
瑠は思い切りベンチを蹴った。
「おーい。お前が怪我したら試合になんねーぞ」
律は楽しそうだった。
なんなんだ、あいつ!
たぶん、初めて瑠と気が合った。
実際に組み始めると、案の定イライラする瑠から、睨まれながら、怒鳴られながら練習をすることになる。
律は「鈴!余計な動きはするな!」
瑠には「動け!もっとスペース見て走れ!」と正反対の指示を出すもんだから、なおさらだ。
ただ、瑠の表情と位置が分かるようにはなっていた。
(怒ってんなー)
(あ、この辺りで止めておくと、瑠はハサミにくる)
次、どこにいるか、なんとなく予測できる。
あのマーカー練習のおかげだ。
瑠のトラップ方向を見る。
体の向きで次を読む。
ワンタッチで出せる位置へ先回りする。
もちろん、全部が上手くいくわけじゃない。
でも、最初の頃みたいに「どこにいるのか分からない」闇雲にパスを出すことはなくなった。
瑠の言葉が、指示3割、罵倒7割になってきた気がする。
いよいよ、リーグ戦開幕だ。
結局、明日は7人で戦うことになった。でも、それを理由に負けたくない。
「明日からリーグ開幕です。」と、ドラゴンマスクにDMを送るかどうか迷った。知ってるんだろうな。でも、今まで世話になったから「観に来て欲しい」気持ちと「観てほしくはない」授業参観の生徒のような感じだ。試合前日には炭水化物を食べて、アルコールはとらずに、しっかり寝る。これもドラゴンマスクの助言だ。当日の朝は、しっかりと計画的に水を入れる。
結局、iPadを開いたまま寝落ちして、明け方にDMを送った。「やるだけやる」と。
相手チームのアップを見ながら、私は小さく「いやだな」と漏らした。
相手のタレントは、若くて、背が高くて、速そうだった。
「何?」瑠が聞く。
「マッチアップの子が、若くて速そう」
すると瑠は、ちらっと相手を見て言った。
「幅で勝ってるじゃん。壁になるでしょ」
むかつくなー。
でも、励まし方が瑠だ。
確かに、身軽な相手はスピードがある。
でも、スピードさえ殺せば勝負にはなる。
身体をボールとの間に入れるだけで、軽く跳んでしまうタイプだ。体幹は、多分、私の方が強い。
それに。
瑠と組んで練習してきた。
あの速さと重さに比べたら、まだ人類だ。
さあ、試合が始まる。
Go for it!
やるしかない。
明日につづく




