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ドラゴンマスクより  作者: 福本 美憂


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19/25

僕 2026

変わることを恐れなければ、

そこが新たなスタートになる。

 僕は僕のサッカーがある。


 とうちゃんみたいにはなれない。その事実は、もう嫌というほど知っている。とうちゃんは、ゴールを奪う人だった。


 試合を壊せる人だった。

 空気を変えられる人だった。


 僕は違う。

 気づけば周りを見ている。味方の位置を確認して、リスクを考えて、失敗しない選択を探している。それはGKとしては悪くない。でも、だから、


 J3に落ちた。

 試合にも出られない。

 ベンチで終わる日もある。

 プロなのに、ピッチの外から試合を見ている。


 明日やろうはバカやろう。

 僕は甘ったれのバカやろうだ。


 でも、その甘ったれた自分をどこか他人事みたいに扱っていた気もする。


 若いから。

 まだ時間があるから。

 いつかチャンスは来るから。

 そうやって、少しずつ安心して甘やかしていた。


 瑠の言葉が刺さったのは、多分そこだ。


「そんなので、サッカーやってるつもりになるなよ」


 別に僕に言ったわけじゃない。

 でも、あの瞬間、確かに僕の中の何かに当たった。

 女子チームには、続ける場所そのものが危うい現実がある。


 人数が足りない。

 仕事がある。

 家庭がある。

 怪我したら終わるかもしれない。


 それでも、みんなサッカーを続けている。

 かあちゃんさえも、罵倒して勝てるところに引きずり上げようとしてる。自分がどう思われようが、瑠には関係ない。勝つための怒りなんだ。

 かあちゃんは、その中心で毎回ボロボロになっている。足を引きずって帰ってきて、湿布貼って、なのに次の日にはまた動画を見て、準備してる。


 僕はかあちゃんをかまってる場合じゃない。瑠に腹を立ててる場合じゃない。あんなふうに、「サッカーしたい」が全部に勝っている感じに浸りたい。


 レーザービームのような鋭いロングフィードで、攻撃に力を与えるような熱いプレイがしたい。吠えて、鼓舞して、神の声を送り続けるんだ。


 ロングフィードは、ずっと都築龍太を見て、真似てきたのに。僕は一体彼の何を見てきたんだろう。都築龍太の1番の強みは、吠えるコーチングじゃないか。あんなキックがしたいの前に、自分の弱さを認める前に、あんな選手になりたいと、なぜ、強く思えなかったんだろう。


 とうちゃんみたいな“エゴ”がなくたって、僕は僕のサッカーをやるしかない。てか、サッカーがしたい!


 まずは、スタメンを取って、

 そして、一年で昇格する。

 目標を、ちゃんと形にする。


 ぼんやり「頑張る」じゃなくて、「何をやるか」を決めよう。都築龍太のような、ちょっと恐くても味方のために声を出すことから始めよう。コーチ、驚くだろうな。


 ビルドアップができるようになったら、

 コーチングができるようになったら、

 考えたらワクワクしてきた。

 

 ピッチを支配しようとする覚悟を持とう。


 ロングキックの精度を磨き、監督のイメージを刷り込み、ピッチで指示を出すんだ。練習中からアピールして、紅白戦も圧倒的な支配をしてやる。


 ミスを怖がって黙ることはもうやめよう。


 キャラじゃないことをやらなきゃ、殻は破れない。


 マンガみたいに夜のピッチで叫んだ。

『そんなんで、サッカーやってるつもりになるなよぉ〜!!』


 それは、瑠がかあちゃんに言ったことだった。


「今までと同じなら、今までと同じだろー!」


 ドラゴンマスクが偉そうにかあちゃんに言った言葉だ。


 だから、今度は自分がやる番だ。

 ドラゴンマスクとして、かあちゃんに言葉を送りながら、結局、一番変えられてるのは自分かもしれない。


 最近、練習後に一人で残る時間が増えた。


 誰もいないグラウンドは静かだ。

 ピッチに向かってボールを蹴る音と僕の雄叫びだけが響く。


 その時間が、少し好きになってきた。

 とうちゃんみたいになれなくてもいい。

 かあちゃんみたいに無茶苦茶でもいい。


 僕は、僕の見つけたサッカーをやる。

 始めるのに遅いってことはないんだ。


 サッカーは好きだ。

 好きだから続ける努力をする。

その先にしか、多分、次の景色はない。


                   明日につづく

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