僕 2026
変わることを恐れなければ、
そこが新たなスタートになる。
僕は僕のサッカーがある。
とうちゃんみたいにはなれない。その事実は、もう嫌というほど知っている。とうちゃんは、ゴールを奪う人だった。
試合を壊せる人だった。
空気を変えられる人だった。
僕は違う。
気づけば周りを見ている。味方の位置を確認して、リスクを考えて、失敗しない選択を探している。それはGKとしては悪くない。でも、だから、
J3に落ちた。
試合にも出られない。
ベンチで終わる日もある。
プロなのに、ピッチの外から試合を見ている。
明日やろうはバカやろう。
僕は甘ったれのバカやろうだ。
でも、その甘ったれた自分をどこか他人事みたいに扱っていた気もする。
若いから。
まだ時間があるから。
いつかチャンスは来るから。
そうやって、少しずつ安心して甘やかしていた。
瑠の言葉が刺さったのは、多分そこだ。
「そんなので、サッカーやってるつもりになるなよ」
別に僕に言ったわけじゃない。
でも、あの瞬間、確かに僕の中の何かに当たった。
女子チームには、続ける場所そのものが危うい現実がある。
人数が足りない。
仕事がある。
家庭がある。
怪我したら終わるかもしれない。
それでも、みんなサッカーを続けている。
かあちゃんさえも、罵倒して勝てるところに引きずり上げようとしてる。自分がどう思われようが、瑠には関係ない。勝つための怒りなんだ。
かあちゃんは、その中心で毎回ボロボロになっている。足を引きずって帰ってきて、湿布貼って、なのに次の日にはまた動画を見て、準備してる。
僕はかあちゃんをかまってる場合じゃない。瑠に腹を立ててる場合じゃない。あんなふうに、「サッカーしたい」が全部に勝っている感じに浸りたい。
レーザービームのような鋭いロングフィードで、攻撃に力を与えるような熱いプレイがしたい。吠えて、鼓舞して、神の声を送り続けるんだ。
ロングフィードは、ずっと都築龍太を見て、真似てきたのに。僕は一体彼の何を見てきたんだろう。都築龍太の1番の強みは、吠えるコーチングじゃないか。あんなキックがしたいの前に、自分の弱さを認める前に、あんな選手になりたいと、なぜ、強く思えなかったんだろう。
とうちゃんみたいな“エゴ”がなくたって、僕は僕のサッカーをやるしかない。てか、サッカーがしたい!
まずは、スタメンを取って、
そして、一年で昇格する。
目標を、ちゃんと形にする。
ぼんやり「頑張る」じゃなくて、「何をやるか」を決めよう。都築龍太のような、ちょっと恐くても味方のために声を出すことから始めよう。コーチ、驚くだろうな。
ビルドアップができるようになったら、
コーチングができるようになったら、
考えたらワクワクしてきた。
ピッチを支配しようとする覚悟を持とう。
ロングキックの精度を磨き、監督のイメージを刷り込み、ピッチで指示を出すんだ。練習中からアピールして、紅白戦も圧倒的な支配をしてやる。
ミスを怖がって黙ることはもうやめよう。
キャラじゃないことをやらなきゃ、殻は破れない。
マンガみたいに夜のピッチで叫んだ。
『そんなんで、サッカーやってるつもりになるなよぉ〜!!』
それは、瑠がかあちゃんに言ったことだった。
「今までと同じなら、今までと同じだろー!」
ドラゴンマスクが偉そうにかあちゃんに言った言葉だ。
だから、今度は自分がやる番だ。
ドラゴンマスクとして、かあちゃんに言葉を送りながら、結局、一番変えられてるのは自分かもしれない。
最近、練習後に一人で残る時間が増えた。
誰もいないグラウンドは静かだ。
ピッチに向かってボールを蹴る音と僕の雄叫びだけが響く。
その時間が、少し好きになってきた。
とうちゃんみたいになれなくてもいい。
かあちゃんみたいに無茶苦茶でもいい。
僕は、僕の見つけたサッカーをやる。
始めるのに遅いってことはないんだ。
サッカーは好きだ。
好きだから続ける努力をする。
その先にしか、多分、次の景色はない。
明日につづく




