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ドラゴンマスクより  作者: 福本 美憂


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17/25

律 2025

さぁて、困った。。。

 サッカーって、こんなしちめんどくせーもんだったっけ。

 ウイイレやサカつくは、もっと簡単で楽しかったじゃん。


 俺は、サッカー教室の経営の他に、「個人契約の監督」をやっている。まぁ、小遣い稼ぎでもあるけど、


「サッカーやるなら目指すは監督っしょ」


 ゲーム好きの俺には、結構向いてると思ってる。

 フォーメーション考えて、選手配置して、相手見て修正する。サカつくの延長みたいなもんだ。……まぁ、現実はゲームみたいにいかないんだけど。


 日本サッカーの指導者はライセンス制だ。研修受けて、実績積んで、試験受けて、やっと上に行ける。S級を取ればJや代表に関われるけど、まぁ、俺にはそこまでの才はない。


 でも。


 みんなには内緒だけど、A級を取って高校サッカーの指導者にはなりたいと思ってる。それだって十分難関だ。


 だから、この監督業は俺の修行でもある。

 遊びじゃない。


 で、何に困ってるかというと、まず、俺が見てる県リーグの女子チームは人数が足りない。登録上は8人いる。


 だから試合は成立する。でも、成立するだけだ。

 交代枠なし。一人怪我したら終わり。


 仕事、家庭、育児。


 女子サッカーは、「続ける」こと自体が難しい。


 男子みたいにカテゴリーが山ほどあるわけじゃない。消えていったチームを俺は何個も見てきた。「また来年」そう言って、そのまま終わったチームを。


 だから、サッカーを続けてるだけで、結構すごい。

 そんな中で、キャプテンの瑠は別格だった。


 速い。

 強い。

 上手い。

 しかも、めちゃくちゃ気が強い。

 絶対に負けたくないって顔でサッカーをする。

 チームの中心であることは間違いない。

 本当なら、縦軸に瑠を三人並べたい。

 343のCB、トップ下、CF。

 これで勝てる。

 でも、ゲームじゃないんで、瑠は一人しかいない。


 4123の「1」に置けば試合を支配できる。でも、それじゃ得点力が落ちる。瑠は決定力もある。前でも使いたい。いや、まずは8人しかいないのだ。


 どう使うか。


 それをずっと考えていた。

 そんな時だった。


 サッカー教室の試合のバイトで借り出した瑠が、

「あの人どうかな」と指差した。

「初心者みたいだけど、背が高いよね」

 嫌な予感しかしなかった。初めての試合に夢中になっている鈴だった。


 正確には、鈴はサッカーネームだ。

 俺のサッカー教室では、お互いを短いサッカーネームで呼んでいた。名字より短くて、練習の際、グラウンドで呼びやすい。


 でも、その呼び方の方がしっくり来る。


 鈴は、最近サッカーを始めた。きっかけは、わからないが、親友の息子に「かあちゃんにサッカー教えてやって」と頼まれて、うちのサッカー教室に来るようになった。最初は、本当にサッカーに詳しいだけの人だった。


 走れない。

 蹴れない。

 息切れする。


 でも。

 知識だけはあるからしんどい。

 動画見て、ノート取って、体のケアして、食事まで変えて。最近は、初心者の熱量じゃない。


 目がいい。どこが危ないかを見つけるのが妙に上手かった。サッカーをよく知ってる。

 でも、技術は追いつかない。

 だから最初、瑠が「入れたい」と言った時、俺は半信半疑だった。


 今日の試合もLMFで置けば、縦のバランス役くらいはできるかもしれない。クロスは上げられない。トラップもおぼつかない。ロングキックは蹴れない。

 でも、鈴はバックステップのDFだけは上手かった。


一応、息子にも了解を得て、鈴は女子チームに入った。


 リーグ戦前にチームは必死に人数を集め10人になった。あと1人。これで勝てるほど、県リーグは甘くない。10人で戦える練習をしなければならない。

 自分が言ったくせに瑠は、鈴が練習に加わると、イライラしていた。


「いや、そこ絶対狙われるって」

「取られるでしょ」

「無理だって」

 練習中も、鈴が気になって仕方ない。


 下がる。

 寄る。

 フォローに行く。


 瑠の持ち味、いつもの自由さが消えていた。


「瑠! 戻りすぎ!」

「でも!」

「お前が回れ!」

 瑠は遠慮なく舌打ちして走る。


 その瞬間だった。

 瑠が消えたそのペースに入った鈴が、半身で相手のスピードを止めた。

 奪えない。

 でも、コースを切る。

 相手が迷う。

 瑠がすかさず反応して離れたボールを回収する。


 また鈴がコースを限定する。

 瑠が奪う。


 あ。


 俺、これ知ってる。


 ゲームで、めちゃくちゃ弱い選手引いた時に、役割だけ特化させてハメるやつだ。


 で、俺は考えた。

 走れないなら、動かさなきゃいい。

 鈴をアンカーに置く。

 真ん中固定。

 守備ブロックの芯にする。


 その代わり、瑠を自由にする。

 衛星みたいに、鈴の周りを走らせる。

 SBは絞らせる。

 L字でバランスを取る。


 思わず笑った。

 使える。

 このシステム、使える。


 瑠はまだ納得いってない顔で鈴を睨んでいた。


 でも、その顔がちょっと面白くて、俺はベンチからニヤニヤ眺めていた。

面白いなーサッカーって。


                 明日につづく

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