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生まれ変わっても、私はあなたの幸せを心から願う  作者: Kouei


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5/17

第5話 私の前世は黒い犬 4

【注意】

※残酷描写があります。

⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷⊷







 ――――あの時…どうすれば良かったのか今でも分からない。


 ただ、アーティーを残して死んでしまう事がつらかった。


 大好きなアーティー…


 あなたが幸せになる事を誰よりも願っている――――――…





「この犬は僕んだ! こい!」


「ワンッ! ワワワン!」



 アーティーと私は屋敷の裏手にある小さな丘の上で遊んでいた。

 そこにガルベスが使用人と一緒に突然現れたのだ。

 そして私の首に紐を(くく)りつけ、連れて行こうとしているガルベス。


 この時の私の身体はアーティーと同じくらい大きくなっており、体重も重くなっていた。こいつは私を馬代わりしようとしているのだ。


「やめろ、ガルベスッ ルナを放せ!」


 アーティーがガルベスから紐を取り上げようとするが、()けられて地面に突っ伏してしまった。


「ワーウンッ ワワンッ」

(アーティーッ 大丈夫!?)


「邪魔するな!」


「うっ!」


 ガツ! ガツ! ガツ!


 ガルベスが倒れているアーティーを蹴り出した。


 足を、お腹をっ 頭を!


 アーティーの眼のあたりから血が出ている。

 ガルベスの使用人はただ見ているだけ。


 私が怒ったら、アーティーが困る。

 けど、アーティーを傷つけるヤツは許せない!


「ウウゥッッ ガウゥッ!!」


「わああああ!! 痛い痛い痛いいいい!!!」


「きゃああああ! ガルベス様!!」


 私はガルベスの足に思い切り噛みついた。

 ガルベスと使用人が叫ぶ。 

 使用人はあわてて本邸へ走って行った。


「グウウウウウ!!」


「痛いいいいいっ わあああああん!! だれかああああああ!!」


「ル、ルナ…っ ダ、ダメだ…っ」


 よくもアーティーを傷つけたな!

 今度はお前が苦しめええええ!


 私はさらに強く噛みつく。

 その時、ドンッと何かが頭に思い切り当たった。


「キャインッ!」


 次に来たのは激痛。

 その痛みに耐えられず、口を離した。



「ル、ルナ――――――ッッ!!!」



 アーティーの絶叫。

 何が起こったのか分からない。


 気が付くと私の口はガルベスの足から離れて、身体は地面に倒れていた。

 変だ……動けない…


「使用人が慌ててきたかと思えばっ このぉ! 畜生の分際で!! 大事な息子に噛みつきやがって! 殺してやる!!」


 ドカッ! ドカッ!!


「キャイン! キャイン!」


 身体中に激痛が走る!!


「ルナ!! や、やめて下さい! 父上!! やめて! お願いっ ルナを殺さないで! やめてええええ!!!」


「……ク…ゥ…」


 アーティーのお父さんが目の前に立っていた。

 手にしていた棒には血がべっとりとついている…


 ああ…あれで殴られたのか……


 私の意識は既に朦朧(もうろう)としていた。


「早く医者を呼べ! さっさとしろ!!」


「は、はい!」


 その怒鳴り声に、走り出す使用人たち。

 おじさんは泣いているガルベスを抱き上げ、走り去って行った。


「ル、ルナ…っ ルナ…!」

 

 アーティーがふらつきながら、私の側に来てくれた。

 アーティーの身体にもあちこち血が出ている。


「アー…ゥ……クゥ…ン…」

(アーティー…大丈夫…? …たくさん蹴られて……大丈夫…?)


「くっ! んぅっ! だ、だめだ…っ」

 

 アーティーが私を抱き上げようとするけれど、私の身体はびくとも動かなかった。

 小さなアーティーが抱き上げるのはもう無理だよ…


「ル…ルナ…っ 死なないでっ ぼ、僕を…一人にしないで……っ」


 青い目からポロポロと涙が零れる。

 震える手で私の身体をやさしく撫でてくれている。


 でも…何か…だんだん…アーティーの姿が…見えなくなっていく…

 自分が死ぬ時って…もうダメだってわかるもんなんだね……


 アーティー…アーティーと出会ってから、毎日が本当に楽しかったよ。

 私は…たくさんたくさん…幸せな時間をもらったの…

 一緒にいた時間は長くなかったけれど…宝物のような日々だった…


 …なのに…アーティーに…何も返せていない…

 それどころか…アーティーに悲しい思いをさせてしまう……


 

 ずっと一緒にいると約束をしたのに……



「…ワ…ゥ…ッ…クゥ…ン…アーゥ…ン…」


 ごめんね……一人にして……大好きだよ…アーティー………


「ルナ…ルナ…ッ…」


 私は最期の力を振り絞って、匂いを辿りアーティーの手を舐めた。



「―――――…」



「…ルナ…? お、お…きて…ルナ…やだ…よっ…一人にしな…で…っ…ルナ…ルナ…ル…ッ…ルナあああああ!!!!」


 微かに…私を呼ぶ声が聞こえた気がした。


 それがルナとしての命が終わった瞬間だった……


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