第4話 私の前世は黒い犬 3
「ほら、大丈夫だからおいでっ」
アーティーが川の浅瀬で私が来るのを待っている。
泳げない私を水に慣れさせようとしてくれてるけど…怖いよ〜っ!
溺れた記憶が蘇って、私は川の縁で立ち往生していた。
「クゥ〜ン…クゥ〜ン…」
(行けないよぅ…迎えにきてぇ~)
「しょうがないなぁ」
そう言いながら、アーティーは私を抱き上げた。
すると少し水の中に入り、私を下ろそうとする。
「キャンッ キャンッ」
(やだっ やだっ 下ろさないで!)
私は必死でアーティーに抱きつく。
「はははっ わかったよっ もうやめるからっ」
アーティーは私を抱き直すと、川から出てくれた。
「犬なのに泳げないし、猫には怖がるしっ なんか犬らしくないねっ」
「ワンワンッ ワウンワンッ」
(だって、水が怖いんだもんっ それにあの猫は一緒に遊ぼうとしたのに、私の鼻を引っ掻くからっ)
「ふふふ、いいよっ ルナはそのままで。僕の苦手な牛乳を飲んでくれているもんねっ」
「ワン! ワウン!」
(そうよっ 私、アーティーの苦手なもの食べてあげてるもんっ)
私はアーティーの顔をペロペロと舐める。
「あははっ! くすぐったいよっ ルナッ」
アーティーが、小さな手で私の頭を撫でてくれる。
これ好き~♡
「大好きだよ、ルナッ ずっと一緒だよ」
「ワン! アーウン!」
(うん、アーティー!)
「じゃあ、屋敷まで競争だ!」
私を地面に下ろすと、アーティーが急に走り出した。
「ワン! アーウン! ワウッ」
(あ、待ってよ! アーティー! ずるいっ よーし、隠れてやるっ)
急に走り出したアーティーに背を向け、私は傍にあった木の陰に隠れた。
「あれ? ルナ?」
振り向いたアーティーが私を探している。
近くまで来ている…ふふふ、もう少し…
「ルナ? どこにいるんだっ ル…「ワン!」
「わあ!」
木の陰から飛び出した私を見て、驚いたアーティーは尻餅をついた。
その隙に、私は屋敷へと向かった。
「ずるいぞっ ルナッ」
「ワワン!」
(へへ、これで私が一番!)
今度は私が先頭切って走り出し、その後をアーティーが追いかけてくる。
毎日アーティーと遊んで、アーティーと笑って、アーティーと過ごした日々。
とってもとっても幸せな毎日。
この時は…アーティーと別れる時が来るなんて、思いもしなかった……




