第14話 偽りの家族との訣別(side:アーティー回想)
邪魔な婚約者は排除した。
父も義母も異母弟も、もういない。
これで今度こそルナと一緒にいられる。
ルナの屋敷へ向かう馬車の中、僕は一仕事を終えたかのように軽く息を突く。
「父は行方不明…義母と異母弟は追い出した…か。ルナに言った事は、半分正しくて半分は違うな。父上は今頃…どうなっていることやら…」
ルナに伝えた言葉を思い出しながら、僕の記憶は8年前に戻る—————…
「父上が行方不明!?」
ガルベスが驚きながら声を上げる。
「父上が国に納めるべき税金をごまかしていたんだ。裏帳簿を見つけ、僕が告発した。それで逃げたんでしょう」
「こ、告発!? じ、自分の父親をか!」
「当たり前でしょう? 罪を犯した人間は罰せられなければならない。だから領地を一部返還し、献金した。それで家名を守る事ができた。あとは父上を差し出すだけでしたが…その前に逃亡したようですね? 部屋はもぬけの殻でしたよ」
僕はそっけなく言い放つ。
「そ、そんな…嘘よ! 私たちを置いて逃げるなんて!」
ソファに座っている義母が、両手で頭を押さえている。
「よって長子である僕がコンラッド侯爵家当主を継ぐ事になりました」
「はあああ?! そんなの認められるわけないだろ! 当主は父上と母上の息子であるこの俺だ!」
ガルベスが僕の話に噛みついて来た。
「そうよっ 当主はガルベスよ!」
二人が必死に反論する。
「この国では家門の跡継ぎは、【成人の長子】と法律上決まっております。そして成人年齢15歳を迎えた僕は該当する。ご不満ならば、訴えればいい。ただ、裁判となると莫大な費用がかかりますけどね。元々平民であるあなたにその資金があるかは、はなはだ疑問ですが。さ、出て行っていただきましょう」
「な、何を言っているのよ! 私は伯爵夫人よっ ガルベスは夫の息子よ! ここに住む権利があるわっ」
「……ふっ はははははっ!」
「な、何がおかしいのよ!」
「この家の当主は僕です。だから当主の決定に従ってもらう。僕が出て行けといったら、あなたたたちは出ていくしかないんですよ」
「何ですって!」
「まぁ、いろいろと父のお世話をしてくれたようですので、多少の報酬はお出ししますよ」
「な、何よそれっ 人を娼婦扱いしないでよ!」
「同じようなもんでしょう? 早く出て行ってください。お二人の荷物はすでにまとめて玄関にご用意してありますから」
「な、なんだと!? 勝手な事を…っ!」
ガルベスが僕を非難するが、だからなんだ?
おまえの言葉には何の権限もないのだと、なぜ分からない。
「勝手も何も…ここは僕の屋敷であり、僕は当主です。権限は全て僕にあります」
「お、俺はお前の異母弟だぞ!」
「異母弟? あんたは僕を兄としてただの一度でも敬った事があったか? どうしても出て行かないというのなら、警邏隊を呼び引きずり出す事になるが、それでもいいのか?」
僕は二人に、にこりと微笑む。
「「………!!」」
バロッサとガルベスは身体を震わせながら立ち尽くしている。
自分からは動きたくないようだな。
「この二人をつまみ出せ」
男性の使用人たちが二人を強引に連れて行く。
「や、やめてよっ 私は侯爵夫人よっ」
「俺は侯爵令息だぞっ 触るな!」
抗う二人の言葉を聞く者はいない。
門の外に荷物と一緒に二人を追い出した。
「ほら、今までの報酬だ。さっさと失せろ!」
僕は空に向けて札を投げた。
「「ああ!」」
風に乗って気まぐれに飛んでいく紙を必死に追いかける二人。
そんな二人を眺めながら、門は閉められた。
ガシャン!
「今までの贅沢な生活から抜けきれるかな? ま、もう関係ないけど」
金なんてすぐなくなる。
あいつらがまともに働けるとは思えない。
荒んだ生活になる事は目に見える。
せいぜい苦しんで生きるがいい。
「さて…あとはもうひとり」
最後の準備に取り掛かった。




