第12話 戸惑う鼓動
ど、どうしよう…っ
確かに、アーティーを裏切っていた婚約者は許せない。
けれど、アーティーはその事を知らず、婚約者の彼女の事を思い慕っていたら傷ついてしまう!
い、言うべきなのかな…っ どうすれば…っっ
「…僕の婚約者が他の男と一緒にいるところを見たとか?」
「えっ!」
「ふ、やっぱりね。まぁ、あんなところで密会すれば、誰かしらに見られる可能性が高いって分かってなかったようだね、彼女は」
「し、知ってたの?」
「彼女の行動は前から怪しいところがあった。だから調査させていたんだ。まぁ、そもそも政略ありきだ。将来、侯爵夫人として割り切ってくれればいいと思っていたけど…その能力はなさそうだな」
「………」
私はアーティーの事務的な言葉に思わず、黙ってしまった。
小さいアーティーしか記憶になかったからなんか…
「どうしたの?」
「その…なんか……大人になったな…って」
「何、それっ」
そう笑いながら、私の頭をくしゃくしゃっと撫でるアーティー。
トクン
やだ、まただ。
アーティーの大きな手に触れられると…ドキドキするのは…どうして?
ルナの時、散々撫でられてたじゃない。
何か…変な物食べたかな〜?
「…何してるの?」
両手で胸を押さえながら天井を見ている私に、アーティーが不思議そうに声をかける。
「な、何でもないっ えへへっ」
私は慌てて両手を後ろに隠し、笑ってごまかす。
「そ、それより…婚約者の事…どうするの? 私に手伝える事ないっ?」
「ああ…それは大丈夫っ きちんと清算するから」
「せ、清算……」
「この話はおしまいっ ルナの話を聞かせて。ルナディアとしてどんな暮らしをしていたの?」
「あ、私はね、二人兄妹で上に兄様がいるのっ お父様はノーラみたいにふくよか体型。普段はおっとりしているけれど仕事の時は厳しい顔をされているわ。でも娘の私にとっても甘いのっ なんでも言う事聞いてくれて…だからお母様はそんなお父様をいつも諫める役。『ルナディアを甘やかさないで!』が口癖。でも、お母様も兄様も私に甘いのよっ ふふふ」
「いい家族だね」
「うん、今度は私に両親が出来た…兄妹が出来たのっ そしてアーティーにも会えた! こんなに幸せな事ってないっ」
「僕もだよ。だからこそ、婚約者の事は早く片付けなきゃな」
「………んん?」
さっきから“清算”とか“片付ける”とか…物騒な言葉に聞こえるのは私だけ?
「大丈夫っ ルナは何も心配しなくていいから、ねっ」
「う、うんっ」
私はアーティーの意味深な微笑みに、釣られて笑っていた。
そして数日後、アーティーの婚約者がとある騒動を起こした。




