第10話 懐かしい人たち
「…き、君っ どうして…っ…」
「アーティーが帰ってから、すぐに馬車を出したの。アーティーより先に着けるように近道してきたのよっ 驚いたでしょう!?」
(ふふ、アーティーびっくりしてるっ アーティーの驚いた顔を見れて満足!)
「前にもこうやって驚かしたでしょ?」
「え?」
「私がこう…木の陰に隠れて、わっ!って。アーティー驚いて尻餅ついて。くすくすっ」
私は隠れるしぐさをして、驚かすように両手を上げた。
「……」
何も言わないアーティー。
けどきっとアーティーも思い出してくれているはず。
「…どのようなご用件でしょうか?」
そっぽを向きながら私に問うアーティー。
「もう一度、きちんと話がしたいの」
そんなアーティーに私は話しかける。
こっちは向いてくれない。
「……彼女を…応接室に…」
アーティーは私の方は見ずに、執事に声をかけた。
「かしこまりました」
白髪交じりの髪を生やした執事がアーティーの言葉に頭を下げる。
突然現れた私を見て一瞬驚いたけど、すぐに表情を調えた。
さすが執事…って、あれ…この人…っ
「レイ? レイでしょ?!」
「え? は? あ、あの…っ」
「やっぱりそうだっ 料理人のレイだ! 白髪が生えちゃったね!」
「ア、アラン様!? こ、この方は…っ」
「………」
アーティーが一瞬口角を上げ、私の顔をじっと見つめた。
あ、そうだ。
私、今は『人間』だった。
あわてて手で口を押さえる。
これじゃ、レイが驚くのも無理はない。
あ、けど私、アーティーにこの姿でずっとルナとして話していたな。
すごい今更だけど……
「レイ、彼女を頼む。僕は少し出てくるが、すぐに戻るから」
「は、はいっ かしこまりました」
「あと…」
「え? はい、承知致しました」
アーティーはレイになにやら耳打ちすると、また馬車に乗り出かけて行ってしまった。
「ご案内いたします」
レイは私を応接室に案内してくれた。
本邸内は離れと違ってなんて豪華…そういえば庭も手入れが行き届いていた…
離れとは雲泥の差だ。
アーティーはおとうさんや赤毛親子たちと一緒に繰らしているのね。
仲良くなったのかな?
―――――――あの人たちと?!
いやいやいや、それはないでしょう?
うーん…
レイにいろいろ聞きたいけど、怪しまれるよね?
私はぐっと堪えて、レイの後を歩いた。
応接室に通されると、しばらくして侍女がティートロリーを押しながら入って来た。
あ…れ…この人…っ
ノーラッ ノーラだ!
あ、口元に皺っ
でも、ふくよかな体系は変わっていない。
「あ、あの…っ どうかされましたか?」
私がノーラを穴が空くほど見つめていたから、彼女…戸惑っている。
「ご、ごめんなさい、何でもありません」
私がそう言うと、ノーラはお辞儀をして出て行った。
いけないいけないっ
レイのように突然話しかけてはダメダメッ
怪しまれて、よけいアーティーを警戒させてしまう。
今日はきちんとアーティーと話すって決めてきたんだから!
ガチャリ
「お待たせしました」
「アー…」
部屋に入って来たアーティーを見ると、その腕にはなんと……
「ね、猫―――――――っっ!!!」
グリーンの瞳にグレーの毛並みをした猫が、アーティーの腕の中にいた。
私は立ち上がり、慌てて庭へと続くガラス扉を開け、外へと逃げた。
なんで? なんで今、猫を連れてくるの!?
これじゃお話できないじゃない!
私は前世のトラウマからか、生まれ変わっても猫が苦手なままだった。
もちろん、泳ぎもダメ。
閉めたガラス扉の向こうで、アーティーが笑っている。
部屋の外て控えていたノーラに猫を渡すと、私の方へやって来て扉を開けた。
「今も猫が苦手なんだな。………ルナ」




