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おかえし

”本能寺の変”


歴史上、まだ謎に満ちている大事件である。

なぜ、明智光秀は織田信長を裏切ったのか?


通説では光秀が、織田家の中で将来の不安を感じ取っており、千載一遇の機会を得たことがこの事件を引き起こしたのではないかと言われる。



◇        ◇


”本能寺の変”が、成功してしまった理由。……というその機会が来てしまった理由。



1.織田信長が兵をわずか数百しか抱えておらず、京に滞在していたこと

2.明智光秀が毛利家討伐の応援のため(秀吉の応援)、兵を集める大義名分があったこと



この2つだけでも十分難しい話であったのだが、もっと難しかった条件まで、達成していたこと。


3.織田家の重臣達が地方で各敵と対峙しており、嫡男である織田信忠も京にいたことである。


……

その時は、徳川家康も軍を率いる状態でなかった事も含め。あの時、あの瞬間でしか、”本能寺の変”は起きなかったのである。

明智光秀の天下などという気持ちがあったかは、今も不明ではあるが。



「っ…………」



この世界の明智光秀は、自分のその先が見えていた。

前のこと。自分よりも新参かつ若く、実績も少ない真田正幸が織田信長に自分が気持ちを押し殺していた意見を述べたことにある。



ヒューーーーーッ



風と共に消えてくれれば良かったが、彼と、彼が率いる軍勢は京都に向かっていた。

信長自身が言っていたように、もう軍事力の話。因果応報にしては、忠義の欠片もないことだ。


『決して、外に情報を漏らすんじゃない』


光秀があろうことか、それを奴に伝えてしまったのは致命的だった。


『お任せください、光秀様。逆賊、信長を討ちましょう』


確かに奴が完璧な仕事をし、完璧な計画に違いないのだ。



パァァーーーンッ



「な、何事か!?」

「む、謀反にございます!!あの家紋は…………明智様のものかと!!」

「!?光秀っ…………是非もなし!」



銃撃こそあれど、それを外には洩らさなかった完璧な情報封鎖。確実に信長の首級を獲ったこと。そして、秀吉の手助けとして先行させた軍と、織田信長を討ち果たした軍。

今、死亡した織田信長に変わり、明智光秀がその全てを握った瞬間だった。


「これで毛利を倒し、長曾我部を降伏させられる」

「信忠はもちろん、秀吉、勝家にも、その報せは到着してないようです」


慎重に。


「そうか。そうか……ふふ……しかし、急がねばな。正幸。私は、この織田家を裏から操る!!」

「私もその覇道を支えましょう、光秀様」


慎重にやらねば、明智家は天下の大罪人として滅ぶ。織田信忠と羽柴秀吉、柴田勝家が、この静寂な謀反に気付かぬ内に…………


「…………………ふふ」


木曽義昌。これが俺のやり方だ!四年以上もかけたが、これが俺の生涯最後の謀略!!逆転への最後の策た!やれ、義昌!!



◇          ◇


その報せはまさに驚天動地であり、罠ではないかとも疑ったモノであるが。


「お、お前は信繁か!?」

「お久しぶりでございます。叔父上」


真田正幸が絶対の使者として、密書を届けさせたのは真田信繁(幸村)であった。血縁である真田信伊がまずは受取、……それはすぐに木曽義昌や武田勝頼といった、木曽家の武将達を一同に集結させる事態の事である。


「織田信長が死んだ?」


”本能寺の変”など、木曽家の者達は分かっていないし、対峙している織田信忠や柴田勝家などにも変化がない。しかし、真田正幸からの情報。……ちょっと疑いもするが、その書状からは彼の生の声が聞こえて来た。


「これは今しかない!」

「義昌」

「信忠と勝家が知らないこと。家康も知らないのなら。西日本担当の秀吉や丹羽長秀もまだ、そのことを知らないのなら……このまま織田家との決戦をし、……」


天下を獲る!!


「罠だろうと、突破する!!生涯を懸ける戦いが来たんだ!!」


……この場においても、織田家や徳川、伊達家と、通じている者がいる可能性がある。様子を見ていたら、機会を脱すると見て、全軍で春日山城や柏崎城の攻略に乗り出す。いや、一気に越中・越前・信濃方面に至るまでの攻略。


「伊達家との協力は!?」

「罠でなければ、伊達もすぐに気付くさ!織田家が内部で混乱していれば、徳川家を急襲する!」


義昌の覚悟と決定を後押しするように、上杉家の直江兼続がこの戦いで最も重要な事を伝えた。


「獲るべきは、織田信忠の首です。もし、織田家の嫡男である彼を逃せば、織田家の経済力からして再起が可能かもしれない」

「兼続殿の言う通りだ。信忠はこちらともやり合って、撤退に難がある男だ」

「京には絶対に戻らせない」


武田勝頼も、旧領奪還のために動く上杉家の家臣達も、その意見でまとまり、すぐに出陣が可能なところは出陣していった。

その電光石火は、まだ、”本能寺の変”を知らない信忠達からすれば、彼等の軍事行動に集中するに他はなかった。



「木曽家が動きました!!木曽義昌!武田勝頼!!上杉景勝など……早々たる武将が出陣!」

「そうか。これはまさしく、歴史に残る大合戦になるな。越中・越前・信濃からも兵を呼べ!!滝川一益、前田利家も呼び、ここで木曽家との雌雄を決するぞ、勝家」

「ははっ!!」



籠城戦を選択しなかったのは、信忠の気の強さと軍団長としての責務からだった。彼の思う通りに、一大決戦に違いなく。ここで敗れるのであれば、木曽家は確実な滅亡なのだから。



木曽家 VS 織田信忠軍   柏崎の大合戦


木曽義昌 兵1万5000

武田勝頼 兵1万2000

真田信伊 兵5000

上杉景勝 兵8000

千坂景親 兵4000


などなど + 2万の兵数。


合計、6万4000



織田信忠 兵2万

柴田勝家 兵1万8000

滝川一益 兵1万

前田利家 兵7000



などなど + 1万3000の兵数


合計、6万8000


「兵数は劣るが、率いる部隊はこちらの方が良い」


合戦場所は山岳地帯ではなく、真向勝負ができる平地を選んだ。お互いに総大将を獲る布陣である。

合戦最後の軍議を開く、義昌達。


「狙いは、織田信忠、ただ一人。奴等はまだ織田信長を討たれた事を知らない(もちろん、武将だけでこちらの兵達も知らない)」


周辺諸国からかき集めた兵なのは明らか。そして、京より兵を要求していることだろう。木曽家の後ろには、まだまだ兵力がある。東北地方の後詰用の兵であり、合戦の決着後に動く兵だ。(そこに兼続と最上義光が控えている)。


後陣に織田信忠。その前に柴田勝家が布陣。

左翼に滝川一益 右翼に前田利家。この両翼に、残りの部隊がついている布陣を敷いている。信忠は総大将として、後ろに控える形であるため、彼に辿り着くには猛将の柴田勝家を破る必要がある。そして、信忠が撤退を阻止するためには、両翼のどちらかを突破し、信忠の背後に部隊を回すことである。


何がなんでも織田家の後継者である信忠を討つために、義昌は互いに賭けているモノの違いから提案した。


「中央は俺に任せてくれ。勝家は必ず、俺を討つために前に出て来る。勝頼と景勝は両翼の滝川、前田を打ち破って欲しい」


総大将、木曽義昌自ら囮役になることだった。


「勝家は織田家きっての猛将で、ここは平地の戦場だ。山岳地じゃないぞ」

「だが、勝家を自由にさせない戦術ならば、義昌殿が前に出るのが良い」


一部の反対意見はあれど、木曽家に仕える名将達はそれに頷いていた。総力戦にして、情報戦になる。そして、信忠が信頼している武将、柴田勝家がその重大な情報を得た時に彼の傍にいない事が勝機となる。

木曽家がなんの準備もなく、野戦を仕掛ける辺りに、なにかしらの勝算めいたようなモノを探るはずだ。


「信伊」

「千坂」


武田勝頼、上杉景勝。元家臣に命令する。


「「義昌を守れ」」

「「御意!」」


中央  木曽義昌(15000) + 千坂景親(5000) + 真田信伊(4000)

左翼  武田勝頼(12000) + 部隊A(10000)

右翼  上杉景勝(8000) + 部隊B(10000)


◇        ◇


義昌達は全員、攻めの意識を持った鶴翼の陣。

一方で織田信忠側は、総大将である信忠は戦場からやや後ろに下がる形で布陣。勝家と共に前に出て来るような陣形を出さなかった。

勝家が突破口を見出した時、信忠の軍が突撃し、木曽義昌を討ち取る。柴田勝家には、敵を倒すことだけでなく、織田信忠を守る任務がある。


「山や城に籠っておった武将が。かかれ柴田の儂が砕いてやろう」


まだ、織田信忠陣営は、”本能寺の変”を知らない。

信忠は万が一、両翼のどちらかが破られた時は、勝家に殿(しんがり)を任せることと自分自身は兵を引き上げることを決めていた。

そして、両陣からの開戦のほら貝が吹き。


「「突撃ーーーーーー!!!」」


かかれ柴田と同じく、真田信伊の騎馬隊も突撃する。


「うわああぁぁっっ!!死ぬーーー!!千坂さん、援護してーー!!」


千坂は後ろで鉄砲隊の指揮に辺り、前に出るのは信伊の役目になってしまったのだ。

中央での激しい乱戦は総力戦に相応しいものだった。


「これは時間との戦いだ」

「上杉家の本領を取り戻すぞ!!」


右翼左翼も動き出す。攻め入ったのは、木曽家側の方。


「来るぞー!上杉軍だーーー!!」


特に旧領を取り戻そうとする、上杉景勝が持ち場の右翼の勢いは凄まじかった。敵兵を圧倒する弾幕と騎馬突撃、足軽達の奮戦……。兵数で有利であった、滝川隊を圧倒していた!

開戦から1時間。


「滝川隊が後退している」


中央はやや柴田勝家が押しているものの、両翼は木曽家の名将達に押されている。信忠自身は動かないが、自分の兵を両翼に送っており、彼の兵力は2万 → 1万と減っていた。

兵数で上回っていた合戦ではあるが、その差が少しずつではあるが、拮抗に近づいていく中。



「信忠様ーーー!!急報ですーー!」

「なんだ一体?しかも、後衛から」


春日山城からの早馬からの報告だった。そして、その者の顔は明らかに焦燥にかられており、信じられないが全てに出ていた。


「た、たった今入った情報で、……お、お、織田信長様が、本能寺にて明智光秀に謀反を、起こされ」


16日前に亡くなっておりました!!


「…………は?」


総大将である、織田信忠の頭が真っ白になるのは当然であった。2週間以上も前に自分の父親が光秀に謀反を起こされ、亡くなっていたという事実。


「ば、バカなことは止せ!!そんなわけあるか!!なぜ、そんな情報が今になって!!」

「そ、それが京からの報せだけでなく、木曽家にいた間者からも同じ情報が」

「!!!」


……じゃあ、木曽家は父上が亡くなった事を前から知っていて、この決戦を挑んで来たということか!?

この決戦に及ぶまで、こちらが情報を握れなかったのは、奴等の策略なのか!?



ボオオォォォッッ



その極めて大きく変わった音が鳴るホラ貝は、戦場全体に広がっていき、明らかに織田家からの緊急な情報であることが分かっていた。


「何事じゃ!?信忠様から、こんな指示を出されるなんて!」


義昌達と戦っていた勝家も、足を止めて、本陣を見るほどの事だ。そして、すぐに勝家の元に情報が流れていく。


「はああぁっ!!?の、の、信長様が、京で光秀に討たれたぁっ!?」


武将の動揺、焦燥は部隊に広がる。織田軍の士気もその指示系統も滅茶苦茶になった時を


「怯んだ敵を逃がすなーー!責め立てろーー!!」


木曽家の軍勢は容赦なく、蹴散らして進軍していく。特に両翼の勢いは凄まじく、滝川隊と前田隊を壊滅させ、織田信忠の軍へと突っ込んでいった。


「くっ!の、信忠様を守れ!!勝家隊は殿(しんがり)だーー!!」


勝家は立ち直るも、兵達はそうはいかなかった。信長が討たれたという情報は、織田家で戦う意義を大きく削いだ。信長が討たれたのなら、その後継者となるのは嫡男である、信忠。彼を守るのが勝家の最優先となるが、


「信長が討たれたんじゃ、殿(しんがり)なんて無駄死にじゃないかーー!」

「織田家は終わりだーー!!」


兵士達は我先にとこの戦場から蜘蛛の子を散らすように逃げて行ってしまう。その隙を


「あれが柴田勝家だ!!皆の者、撃てーーー!!」


義昌と千坂の弓矢と銃部隊が襲い掛かり、柴田勝家を討ちとる。そして、続くように、滝川一益、前田利家も部隊が総崩れし、討ち死と自害に追いやる。


「父上ーー!父上ーー!!」


信忠はすぐに京へと戻ろうとしていた。しかし、彼が戦場から離脱することを許さないように、少数精鋭を春日山城の方へ先回りさせていた、上杉景勝の采配。


「信忠は仕留めろーー!」


パアァァンッ


逃亡する織田信忠を銃撃し、討ち取ってみせる。

つまり、織田家は織田信長とその後継者である、織田信忠すら失い、その統制は一気に混沌と化した。そして、北陸・信濃方面にいた織田軍は一気に美濃、長浜方面に至るまで後退していくのであった。


木曽家が仕掛けた大合戦は木曽家の大勝利となり、その戦果は織田家の天下統一を完全に挫いたモノとなった。



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