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よんねん



◇        ◇


「叔父上からもお伝えしてくれるとあれば、義昌殿のご帰還を待つまでは合意しましょう」


小諸城にて木曽家 VS 織田・徳川連合の最中。

伊達家は独立を果たした木曽家に急接近。そして、それは木曽家側も同じである。義昌が不在という状況もあり、武田勝頼も万が一の備えとして、安田城にいることで……


「共に織田家を打倒しましょう」


上杉景勝、直江兼続、最上義光の3名による、伊達家との協議が行われていた。

伊達家も伊達家で織田家との戦いで大きな損失が出た。いつ、また織田家と戦争をすることになるか。今はひたすらに準備を続けるしかない。


そして、予想していただけに


「織田家の目は位置的に考え、木曽家の方に回りますよ?私共も黒川城から援軍を送りますけれど」


小諸城、飯山城、坂戸城の3つの城はできる限りの時間稼ぎ。

さらには春日山城周辺の小城も織田家が支配した形にあり、あの大軍を新発田城、安田城に向けられる状態となった。


「突破されれば、東北は織田家の支配。……天下は当然ながら、織田家のものかと」

「それを止めるのが私達。武田勝頼達もそう。最後の機会だ」


時間を稼いでいる間に……


山道の整備はしっかりとなされ、東北からの大軍勢の動員は可能となったが……その兵数を持ってしても、織田家の大軍勢には敵わない。よって、


「安田城、新発田城、平林城の近くにはいくつもの砦を設営した。可能な限り足止めと、兵の削りをいれて、城内で殲滅する」

「これを織田家の大軍が尽きるまで繰り返す」

「尽きるのでしょうか?」


畿内に抱える兵の数は、こちらにも読めない。本当に動員されれば、勝ちの目がない。ただ、唯一の勝機は織田家という中央を支配する勢力は、東と西から敵を持っているということ。

長曾我部、毛利、その後ろに控える島津家が、織田家と激しい戦いをしている最中だ。圧倒的な軍事力を持ってしても、攻めきれずにいるのは織田家も苦しい状況なのだ。

焦りがあるのは、ところどころで見え隠れしている。



パカラパカラ



伊達政宗と片倉小十郎は去り、木曽家との無期限の停戦を合意し、対織田家の対策を練り直すこととなる。そーいう名を打っているが、相対するのは伊達家が対峙するのは徳川家に違いない。

その間に挟まれる北条家、この勢力をいかに取り込むかも思案のしどころ。

停戦中の間に、徳川と北条がいがみ合っているのは好都合。


「漁夫の利です」

「タイミングを誤れば、北条と徳川が結託するかもしれないぞ」

「全てを奪えるとは思えませんよ。佐竹義重への引抜の調略は怠ってませんよね?」


北条と伊達も協力するべきといえど、そう上手くいかない時は力ずくも止む無し。その準備を着々と進めている。北条と徳川の動向を探り続ける伊達家に思わぬ報せが入り、北条家の内部が一気に傾くほどの悪い報せとなった。


「ほ、北条綱茂様が倒れました!!」


北条家を支えた名将、北条綱茂が倒れてしまうというものだ。軍事面で大きな貢献をしてきた彼が病に倒れたとあっては、徳川家との戦いが大きく不利になるというものだ。

そして、綱茂は織田家との停戦の後、氏政に進言していた。


【近い内に我々は決めねばなりません。小田原城と共に残るか、そこを捨てでも、北条の血を残すか】


これはいずれ北条家が滅ぶという予感だった。

北条氏政はその言葉を耳に入れるが、……伊達家のような即時の判断はできず、先延ばしにしていった。この小田原城がある限り、北条家は潰れないであろうが。その間にも関東には手出しできないであろう。織田家もそうだが、徳川家の波のように来る兵達に小田原城より東側の城が襲われ続け、関東を支配していた北条は身動きがとれずにいた。

これは小田原城の中では北条家は無類の強さを誇るが、その他の城では守り抜けないという弱さを出してしまったこと。そして、その北条の消極的な動きに、佐竹義重等、旧太田家の武将達が伊達家へと鞍替えす。関東を護れぬ者達についていけないということだった。


「……遅かったか」


北条氏政は小田原城にて、自分の弱さに嘆いていた。

北条家という名前とこの城に護られていただけの自分。徳川家の関東侵攻作戦に対して、援軍に駆けつけてくれるのは伊達家の者達。自分達はもう、関東の支配者ではなくなった。

数年前まではその北条の政治あっての関東の平和ではあったが、……圧倒的な軍事力の前では、そんな栄光も潰され、平和を懐かしむためにも乱世を武力で抑える必要がある。北条家にはもうその武力がない。そして、難攻不落のこの小田原城にも、いよいよ綻びが現れた。


「申し訳ございません、父上」


徳川家は三河から軍を呼んでいた。その数は明らかに北条家を滅亡させられるものであり、それすらも”ついで”というものでしかない。

小田原城は落城し、伊達家との決戦に臨もうとする徳川家の存在だった。


これ以上の戦は小田原城の民達を苦しめることになると悟った、北条家達は


「我々がこの地から離れる他はない」


小田原城を徳川家に明け渡す他なかった。これでしばらくは、戦のない時を過ごせるだろう。


「氏政様ーーー!!」

「北条の皆様ーーー!!」


北条氏政は太田城の隣、常陸ひたち城へと移る事となる。北条家は伊達家に臣従する形でその血脈を保つことになった。


「「また戻って来てくださーーーーい!!」」


1586年。

北条家、伊達家に臣従する形となり、関東の支配と徳川・織田と対抗していく形となった。


関東の覇権は、河越城と結城城を境に、徳川と伊達がぶつかり合うという状勢となったのだ。



◇         ◇


「ふはははは!これで北条家は滅亡も同然!!」


家康は小田原城に入場し、北条と入れ替わる形で関東の覇者を宣言した。

とはいえ、伊達家も太田城や宇都宮城を確保しており、徳川との決戦を覚悟していた。


「徳川家単独であれば、以前の失敗はないようにしなければいけませんね」

「関東の覇権が鍵になる。織田家と戦う上で」


木曽家が独立し、4年が経過。

現在の勢力図は関東の土地で徳川家と伊達家が北条家の領土に侵攻したほどで収まっていた。


「木曽家が、越後方面で耐え忍んでくれたおかげで反撃の機は整いました」


安田城、新発田城、平林城。

4年前から周辺に砦の建築、道の整備、城の大改修。

安田城に武田勝頼、新発田城に上杉景勝、平林城に直江兼続。3名が守りに徹し、その北の後方では安東愛季と津軽為信の援軍がすぐに駆けつける防衛。


織田の大軍は幾度も攻め寄せに来ようとしたが、総攻撃は行わなかった。


「被害が大き過ぎます」

「これは……我々だけでは、なんとも」


柴田勝家、前田利家なども。この地に攻め込むには兵数も武将も足りていないと語る。

これは以前の小諸城などの防衛戦が効いている証拠であり、東西で挟まれている織田家にとっては、兵数の大きな減少は今後の織田家の支配体制に関わると判断された。


木曽家と戦うには、相応の覚悟と資金、兵数、武将達が必要である。


多少の小競り合いはあれど、木曽家と織田家は……


安田城と柏崎城を境に領土を分けている状態であった。


木曽家がそのような防衛システムを作るように、織田家もまた柏崎城や春日山城などの改築工事を始めた。木曽家が使っていた、坂戸城、飯山城、小諸城も修復作業が行われる。

早くに攻めたい気持ちではあったが、景勝と兼続はぐっと堪えた。織田家が大損害を喰らうように、木曽家の戦力で総攻撃をしても、一瞬でやられる恐れがある。

お互いに機を見ての出陣というよりかは、どちらが早く準備が整うか。それに対応できて、反撃ができるかどうか。相手を挑発するような行為は絶対に避けつつ、絶対にしないこと。



カポーーーンッ



「ふ~~~~っ」



一方で木曽家の当主である、木曽義昌は温泉に浸かっていた。

あの死地に等しい防衛戦から生還してきただけで奇跡であり、この土地の温泉で極楽というのをしっかりと確かめた。


「いや~。……山形城の温泉はいいですなぁ、義光殿」

「そうであろう。義昌殿に満足して頂き、嬉しい限りです」


温泉を楽しんだ後、義光殿と共にとある席へと向かう。


「ほ~……これまた、腕を上げましたな。政宗殿」

「ふふふ、料理の可能性はまだまだあるということです」

「まったく、宿屋の調理場を借りるまでするか?」


伊達政宗、片倉小十郎の2名が豪華な料理でもてなしてくれた。それに付きそう形でか


「政宗様の料理を食べられるとしたら」

「あの時の味は感動しましたよ」


以前の会見で頂いた、真田信伊と千坂景親までこの場にやってきていた。


◇         ◇


一方で織田家。

織田家天下統一のため、東側の攻略を任された織田家の名将達が春日山城に集結していた。


織田信長は畿内にて、木下秀吉達と共に、毛利・長曾我部・島津の勢力と対峙し、不在とはいえ、……。


「木曽家の攻略はできんのか」


軍団長であり、織田家の嫡男である、織田信忠に焦りと苛立ちがあった。

信長からは周囲を囲まれている状況と、東北という地が決して豊かではなく、人材に溢れた土地ではない事を考え、木曽家からの侵攻を抑えるように伝えられていた。

そのため、春日山城とその近くの小城の改修を中心にしていた。

越後方面は山が多く、軍の行軍速度が平地と比べて決して早くないことだ。支配している北陸にいる軍を動かすことは容易くとも、畿内方面からの軍が到着するまでには時間と兵糧が大量にいる。


木曽家との小諸城との死闘が、それほど強く残っているんだろう。


北陸の軍勢を温存したまま、防衛しておけば……東側の織田家はゆっくりとできる。信長が畿内・岐阜の軍を動員できる時を待てという指示。

それは信忠が頼りないという、親から見ての評価だろう。それは信忠自身もしかり……


「木曽家は思いの外、結束が固い」

「我々織田家に領地を奪われた者達が多く、主要の面々に内通などは難しい」


武田勝頼、上杉景勝、直江兼続の3名の名将が春日山城に集められている兵士達を、その影響力のみで止めている状態。

上杉と武田が旧領を取り戻すために一致団結しているのは、非常に厄介であり、他の武将も木曽家を通じて我慢強く辛抱しているところ。一方で織田家の内情は決して良いものではない。天下統一に近いというのは当然ではあるが……



【功が少なき者には、……良いことはないだろう】



正史から遅れること、2年。

木曽家、伊達家、島津家、毛利家、長曾我部という、肥大した5つの勢力。その5つを上回る勢力を持つ織田家の綻びが内部から勃発した。


「秀吉だけじゃないか」


織田家の軍団長達の成果は良いとは言えない。軍団長、羽柴秀吉の毛利攻めだけは成果がでているものの、毛利家を護るべく島津家の援軍がやってきて、膠着状態。

長曾我部家も四国という立地に攻め込むには、海上を通る都合上、単純な物量攻めでは難しかった。織田家の攻略としては、毛利→長曾我部→島津という順で西日本を攻略する気だった。

一方で、東日本では徳川家が伊達家と互角の戦いを続け、織田信忠が率いる軍は木曽家と膠着状態。中央政権の権威を使っての交渉もしているが、それに折れない反対勢力。

あと一歩の天下であるがため、


「やはり、俺が毛利・長曾我部・島津を潰す」


織田信長が京より10万の大軍を率いて、西日本を席巻する数週間前。歴史が動く。だが、ここでの本当の主犯はその男ではない。


「光秀、お前も軍備を整えよ」

「……はっ」


最古参ではないが、京に入ると決めた日から信長と共にいた、明智光秀。

彼には信長への疑心があり、その心を見抜いた男はとても近くで耐え忍んでいた。四年という月日は彼にとっても長く、織田家としてはとても短いのに、野心を隠して信頼を勝ち切った。これが本当のやり方だよ、と、まだまだ浅いと奴の独立を嗤っていた。


「信長様。まだ交渉の余地はあります。長曾我部はこちらに引き込む案が」


徳川家に降伏し、一家臣となっていた者。だが、織田信長という存在と対話をし、かつての仲間達が己のままに野望に挑む様を見せられ、さらにそれに加担した時。

独立や下剋上のような戦国乱世を、自分もやるべきだという後悔をした。そして、この天下が決まった状勢で、ただの独立でどうにかなると思ったらお花畑だ。織田家は確かに今、拙攻している状況ではあるが、しっかりと財政基盤や軍事の物資を整えており、焦りさえなければ、毛利、長曾我部、木曽、伊達、島津を滅亡させることができる。


真田正幸さなだまさゆき。お主の考えも分かってはいるが、四国は島津攻略においては必要不可欠だ。もはや、口よりも軍による行為が必要な状況なのだ」

「……………」




バタンッ


「ああ、なってしまえば、信長様は鬼となれる」

「……光秀様。長曾我部家とは友好な関係を築いておられましたよね?確かに織田家が総力を結集すれば、西日本の強敵は島津だけ。その島津との決戦のため、信長様は力と兵を蓄えておられる」

「………………」


九州を制した戦上手の島津家が、そんな状況で大人しくしてるわけがない。経済的にも明るい織田家がわざわざ決戦を仕掛ける必要はない。明らかに焦りがある。島津は九州を制したが、畿内に軍勢を伸ばすには毛利や長曾我部との同盟や臣従をさせる必要がある。ヘタに犠牲を出さない方が楽だというのに。


「天下までのあと一歩が遠いのだ」


光秀の心だって揺れてはいた。そこを正幸が巧みな話術で揺すったのだ。


「”老い”ですか」

「!…………」

「春日山城に信忠様、柴田様。岐阜・清州方面に池田様、丹羽様。東海には徳川家……摂津・姫路、紀州には羽柴様。……京での権威をも持ち、織田家は安泰のはずですが、信長様には別の不安があるんでしょうかな?それこそ、自分がいる内にと」


嫡男にはその器がない。支える家臣達にも、絶対の信頼がない。光秀の心の声が叫んでいたようだった。だが、表情は変えていなかった。


「私は上田城に明日、戻ります」

「四国攻めは?遅れれば信長様が黙っていないぞ」

「出来る限り、長曾我部とは交渉したいではないですか。光秀殿。まさか、私が信長様に意見するとは思わなかったです。……あなたもまた」


”老いたのですね”


正幸の挑発だろうか。光秀に対しての本心だろうか。長曾我部家を戦乱に巻き込まず、織田家の傘下に収めることは可能だっただろうか。

光秀の心の中で、


「!っ……………」


織田家の中に対する、不満や不安が、正幸の言葉で表面化したのは事実だ。



織田信長が10万という兵数をかき集めるまでに





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